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22時22分。

作者: ふふ

 あなたがいなくても生きていける。それはきっと違った。私はあなたが目の前にいる世界が好きだった。背景は何色でも良かった。だってあなたがいたから。夢と現実に境目があるとしたら、それはあなたがいるかいないか。私の横であなたが寝息をたてていたら、それはもう夢の中だった。

 だけどあなたはきっと違った。あなたは髪の色を黒に戻していた。私は一昨日髪を切った。失恋したからする行動だった。あなたも一緒だったのだろうか。それとも髪の色が変わったみたいに過去のことは塗り潰したんだろうか。私の頭の上にはまだそのまま残っている。だからあなたとは違った。

 22時22分。あなたは知ってるだろうか。デジタル時計がゾロ目になる時間はそんなにたくさんないってことを。1時11分、2時22分、3時33分、4時44分、5時55分、11時11分、そして22時22分。1日1440分のうちのたった7分。86400秒のうちの420秒。不思議な気がした。86400秒で私の体はあなたと一緒に地球1周分動いているのだ。私が望むにしろ望まないにしろ、それは雨粒が雲から地面に落ちてくるように動いている。

 結局世の中で自分の意思だけで出来ることなんて少ないんだと思った。夢の中でどんなあなたと会うのかすらも私とは関係なく進んでいく。昔の偉い人はそれを無意識と言った。そしてそれは何かのメタファーだと言った。だとしたら昨日の夢に出てきたあなたとその隣の女は一体何だったのだろう。

 あなたと別れてから、私はある意味健康的になった。夜遅くまで電話をすることもないし、セックスすることもなくなった。朝は起きれるし、家事も仕事も予定通りに進んだ。なんだか皮肉だった。まるであなたという存在が私の生活を妨害していたかのように感じた。その度に強く思った。それでも別れたくなかった。ずっと一緒にいたかった。

 耳を澄ますと暗闇の中から冷蔵庫の音が聞こえる。蛇口から落ちる水滴の音が聞こえる。隣の部屋から音楽が聞こえる。布団の奥からあなたを感じる。

「バカみたいだな。」

 行き場もなく、意味もなく空気中に吐き出された振動は波一つなかった水溜りの規則を乱雑に壊した。明日も早いし寝ないといけない。私は乾き切った枕の上で眠りについた。

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