地上へ そしてエンジニアへ
『破壊しましたが使える部品があると判断します。回収をお願いします。帰り道に落ちているものも拾ってください』
「はいはい」
動く左手で壊れたロボットのパーツを回収していく。そして戻り道にも落ちていた何かの機械の部品を回収しては取り込む作業を繰り返していた。
そうこうしているうちに日の光が差し込む出口に辿りつくことができた。
「あー、やっと出れた! 二度と来たくない場所になりそう……」
アールはグーッと背筋を伸ばした。そして、とりあえずサンパチをどうするべきか考えていた。
(放置も出来ないし、記憶もないし阿保そうだから捕まったら奴隷行きよねきっと……)
ぼけーっと辺りを見渡しているサンパチを見てそう考えていた。
「なんかすごい廃墟なんだな。なんかうっすらとこんなんじゃなかったような気がするんだけど」
「大昔は機械の街だったらしいわ。本当かどうかも今じゃ誰も分からなくなっちゃったけどね。とりあえずアンタ行くとこないんでしょ? 私のところで泊まればいいわ。拾っちゃったのは私だし……」
「人を捨てられた犬みたいな言い方しないでくれよ」
確かに記憶もないし、この先どうすればいいかもわからない。今はアールに付いていくしか選択肢はなかった。
瓦礫や廃車の上を飛び越えたりして廃墟の街を二人で歩き続ける。
気が付くと右手のリペアが終わったのか動くようになっていた。少しぎこちない感じもするが、そのうち馴染むとナビが言ったのでそうなのだろうと思った。
「なぁ、自動車とか使わないのか?」
「自動車? そんなもんが直せるならスカベンジャーなんかやらないって」
「すかべんじゃあ?」
「私が地下にいた理由で、スカベンジャーは使えそうな部品とか売れそうな貴金属を集めて生活している人間を言うんだよ」
「なるほどなぁ。お? この車なんてだいぶ状態いいんじゃないか?」
瓦礫に埋もれていたが上手い具合に押しつぶされていない状態だったようで本体は比較的綺麗だった。
周りにあった瓦礫を工房の中へ回収していくと、その形がハッキリとした。
「車……にしては頑丈そうな感じだな。トラックでもないしワゴン車よりでかい」
『これはキャンピングカーですね。内装にキッチンやトイレ、冷蔵庫なども完備しています』
「へぇ、物騒な世界みたいだし良いんじゃないか?」
瓦礫に埋もれていたこともあり誰も手をつけなかったのだろう。
運がいいことに鍵が閉まっていなかった。この車の持ち主は大急ぎでここから離れたのだろうか。何にせよ都合がいい。
運転席のドアを開けてみると中は埃っぽいがやはり比較的綺麗だった。
「さて、問題はエンジンがかかるか……」
エンジンキーを回してみると、ブロロロ、ブロロロと動きそうな音はしているがエンジンがかからない。
「やっぱり壊れてるんじゃない? 数百年放置されているんだから動かなくて当然よ」
「んー。反応があるから動きそうな気はするんだけど」
一度車から降りてエンジンカバーを開けてみる。所々パーツが劣化しているようだ。
(修理の知識はあるからやってみるか)
サンパチは作業に取り掛かることにした。これが動けばかなり楽になると思ったからだ。
「ちょっと修理してみようと思う」