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R-38  作者: 妖怪ポテチ
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過去から来た未来

 食事を早々に終えて、アールがバッグから何かを取り出し、サンパチはそれが何なのか缶詰を食べながら訪ねた。


「探知機みたいなものかな。今日私たちが出くわした人狩りがいたでしょう? 地上にも動いている連中がたまにいるんだけど電波が出ているらしくてこれで分かるのよ。地下では使えないから今日はかなり焦ったけどね」

「そういえばどうして人狩りなんだ? 俺が壊したのは施設の侵入者を捕らえるようなガードロボットだったぞ」

「ロボットに捕まって連れていかれた人間は二度と戻ってこない。なんで捕まえようとするのかは分からない、でも抵抗すれば容赦なくこっちを殺そうとする個体もいるの。だから人間はあいつらを『人狩り』と呼んでいるわ」


 少なくともサンパチの知る限りいきなり人を捕まえようとするロボットなど覚えている範囲では聞いたことがない。今回のように施設内の警備を目的としているなら侵入者として判断して捕らえようとするのは理解できる。


「今度は私が質問する番。アンタはなんであそこにいたの? いつの時代の人間? それぐらいは覚えてないの?」

「そうだな……。今は何年の何月何日だ?」

「この探知機が壊れていないなら今は3638年4月19日のはずよ」


 探知機の画面をサンパチに向ける。確かに画面の上部には『3638年4月19日』と表示されていた。


「だったら俺は500年以上前の人間だと思う。記憶の中では3100年辺りまでの記憶はある。でも自分に関する記憶だけすっぽり抜けているんだ。出会った時にも言ったけど何も思い出せない。ナビに聞いても答えられないとしか言わないし、なんであそこにいたのかも分からないんだよ」


 両手を頭の後ろで組み、後ろに仰け反る様に天井を見た。

 勉学や一般知識は覚えているようだが、やはり自分の事は思い出せない。家族の名前、友人、知人の名前すら思い出せない。

 自分が会社で働いていた、ということも覚えているが、やはり会社で何をしていたのか、誰と仕事をしていたのかは思い出せない。

 自分とそれに関係していた事柄に関してだけどうしても分からない。


「私もエグザイルに出会ったのは初めてだから記憶の一部がないっていうのが普通なのかどうか分からないわ。でも、コミュニティーの中には自分がエグザイルだったって言う人もいたって話は聞いたことがある。会えば何か分かるかもね」

「本当か!? そいつは何処にいる!?」

「私も噂程度に聞いた程度から本当かどうかなんて分からないわよ。ちょっと待って、確かにバッグの中に地図があったはず……」


 ぐしゃぐしゃに丸められた地図をテーブルの上に広げていく。

 サンパチも見覚えがある島国の形だった。地図そのものがかなり劣化して色褪せていたり、文字がかすれていたりするが間違いない。こんな形の島国は他にない。


「私たちが今いるのがこの辺り、トーキョーって呼ばれていたあたりだと思う。それで私が聞いた話だと大体この辺り、サイタマってところの何処かね」


 大まかな場所を指で丸を書くようにして指し示す。

 自分の中であまり遠出した記憶はないが、大体の場所なら分かる。


「色々聞きたいことはお互いあるでしょうけどもう眠いわ。それに明日はもう少し探索して部品をや使えそうなものを探してみましょう。遠出するならコミュニティーで買いだめする必要もあるでしょうし」

「アールが付いてくる必要はないんじゃないか?」

「アンタは私が拾ったの! だから私の物よ。それにこの時代の生き方も知らないんじゃ殺されるか、のたれ死ぬだけだし」


(所有権の辺りはちょっと言いたいこともあるけど、確かにこの世界の事は全然わからないし、乗っかっておいた方が得策か)

『アール様の言うことに従っておいた方が賢明でしょう。私も生まれたばかりであっさり死にたくありません』

「人間みたいなこと言うなよ。でもまぁ、今はアールを頼るしかないし、出来る限りのことは協力する。途中で置き去りにしたり売ったりしないでくれよ?」

「それは、サンパチ次第じゃない?」


 はははと笑いながら立ち上がり、傍に置いてあった布袋をよいしょと肩に担いだ。

 今のうちに集めておいた部品や食料を車に乗せておくそうだ。

 手伝おうかと聞いてみたが、アンタも疲れてるでしょうし休んでてと言われてしまう。

 確かに多少の疲労感はあるが、ナノマシンも疲労するのか……。


 ソファーに寝転がり天井を見つめていたらうとうとしてしまい、そのまま眠ってしまった。

 車から戻ってきたアールはその姿を見て、可笑しいような呆れたような表情で笑った。


「本当に緊張感がないやつね。無防備過ぎ」


 タオルケットをサンパチに掛けてやり、自分も残ったスペースで横になった。

 誰かと一緒に寝るなんていつぶりだろうか。不思議な気持ちを抱いたままアールも眠った。

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