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R-38  作者: 妖怪ポテチ
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ナノマシンとキャンピングカー

 近くには多くの車が放置されていた。ほとんどはバラバラに分解されてしまっているが、その中でも使えそうな部品が残っている車をチョイスして工房に収納していく。何の役に立つか分からないけどナビが上手い具合に活用してくれるだろう。


「サンパチはエンジニアだったのか?」


「うーん。どうだろう。なんとなく分かるって感じなんだよね。ナビ、俺ってエンジニアだったの?」


『機密事項のため、お答えできません』


「大事な部分はこうなんだもんなぁ」


 自分の事は相変わらず分からないままだが、作業は順調に進んだ。

工房は便利なもので車の中から必要な部品だけを再度取り出すことも可能らしい。


「ねぇサンパチ。その修理ってどれぐらいで終わるの?」


「うーん、とりあえず半日は欲しいかな。直せそうだけど記憶の中にもこのタイプはないから初めて触るっぽい感じだし」


「車もエンジニアもポンコツねぇ……」


車の上で寝そべりながら晴れ渡った空を見つめながらアールが呟いた。


「アールも機械の技術を学べば分かるよ。修理なんて魔法みたいに瞬間的に直せるもんじゃないから」


『瞬間的に直せますが?』


唐突に喋り出したナビの言葉に作業していた手が止まった。


「おい、嘘だろ……」


『嘘ではありません。試しに修理が完了した状態をイメージして手を伸ばしてください』


 言われた通りイメージすると、手が伸びていく。その光景を車の上から見ていたアールも驚いて車から飛び降りた。

伸びた手の先がドロドロになり車全体を覆い被さるように包み込んでいった。

自分の身体がナノマシンで出来ていることは腕のケガが治ったときに理解していたが改めて自分が人間からどんどん離れているなと感じてしまう。


「うわっ、気持ち悪っ!」


「頑張っているのに酷い言われようだ……」


 人間の手が伸びたかと思うと手のひらの部分がドロドロと液体状になり車を包み込んだ光景を見て、アールの顔が悍ましい物を見たと言わんばかりに引きつっている。痛い視線を浴びながらもナビに従われた通りに手を伸ばし続ける。


『先程取り込んだ機材を使用して修復を開始します』


「おぉ、頼むわ」


『車体の装甲が非常に薄いです。追加装甲を取り付けますか?』


「そりゃ敵に襲われるかもと考えたら付けたほうがいいんだろうけど普通に考えたら重くなり過ぎて動かなくなるんじゃないか?」


『そうなりますね。エンジン回りや駆動部分の強化も必要だと判断します。取り込んだ資材の大半を消費しますが実行しますか?』


取り込んだ資材の大半か、と考えたがスクラップは周りに山ほどある。とりあえずは生存率を高めることが優先だろうと考えた。


「分かった。それでいいからやってくれ」


『かしこまりました。資材消費開始します。…………完了しました』


ものの数秒だろうか。確かに瞬間的に修理が終わってしまった。


ドロドロになった手が少しづつ戻り、普通の手に戻る。

それと同時に現れたキャンピングカーはどう見てもキャンピングカーとは思えない風体になっていた。


「これじゃただのゴツイ鉄の車ね。さっきの方が可愛かったわ」


「アールもそう思うか。昔、映画っていう空想の作品映像でこんな車みたことある。世紀末的な作品だったような気がするな……」


変わりきった車の重々しい運転席のドアを開ける。最初に開けたよりも遥かに重かった。

これなら多少の攻撃であれば確かにびくともしなさそうであった。


ゆっくりとエンジンキーを回すと、ドドドドと鈍い音と共にエンジンがかかり始めた。 


「この車はガソリンで動いているのか?」


『ガソリンで動かすことも可能ですが取り込んだ機材の中にはガソリンが含まれていませんでしたのでバッテリー駆動も可能にしています。これなら車内の電化製品も動かすことが可能と判断しました』


「サンパチよりナビの方が役に立ってるんじゃないの?」


「それは言わないでくれよ。マジで落ち込みそうだ……」


 颯爽と助手席に乗り込んだアールはどこか楽しそうだった。


「私動いてる車に乗るのは初めてなのよね。コミュニティーの中や周りでは動いてるのはよく見かけるんだけど。ところでアンタ、運転できるの?」


「確か運転免許は取っていた……と思う?」


『マスターは運転免許を持っていた履歴があります。殆ど運転はしていないようでしたが』


「事故って死ぬなんて私嫌だからね」


「はは、安全運転で行きまーす……」


 ゆっくりとアクセルペダルを踏み込んで車を動かしていく。どちらにせよ道路にはガラクタが散らばっているのでスピードは出せなかった。

 アールの案内に従って車を走らせていく。


「こんな楽な乗り物があるならもっと早く手に入れれば良かったわ。毎日必死に歩き回って、重たい荷物を運んでいたのがバカバカしくなるわね」


「さっきコミュニティーでは見るって言っていたけど、この世界では動く車は珍しいのか?」


「大きいコミュニティーとかマーセナリーの連中なんかは持ってたりするけど、一般人はまず持てないでしょうね。持てないというかエンジニアがいないから直せないっていうのが正しいけど」


 運転を続けながらアールの話を聞いていた。この世界の力関係はかなり不安定らしい。

 スカベンジャーなんて確かにうっすら残る記憶ではゲームの中でしか聞いたことがない。


「平和主義とか実力主義とかいろんな思想や主義で集まって暮らしている人たちをコミュニティーっていって、コミュニティーの警備やスカベンジャーの探索の護衛がマーセナリー……で合ってる?」


「大体そんな感じ、それと、エンジニアとジャンカーなんて連中もいる。私が拾ったパーツなんかを買い取るのがジャンカーで、エンジニアはコミュニティーの機械を保守や修理をするためにジャンカーから部品を買う。たまにエンジニアから直接依頼されることもあるけど、それなりに信用されてないとまず依頼されることはないだろーな」


「はぇー、聞けば聞くほど複雑な世の中なんだな」


「そうよ。それが普通、ふざけた世界よ……」


 アールは何処か遠く、まるで世界を憎んでいるような表情だった。

 今はこれ以上深く聞かないほうがいいだろうと思い、サンパチもそれ以上聞こうとしなかった。

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