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R-38  作者: 妖怪ポテチ
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プロローグ

 青く澄んだ空と所々に流れていく雲がとてもきれいだった。

 真下から登る黒煙が視界に混じっているけど……。


 太陽の日差しも暑いくらいだ。

 真下で起きているドンパチで熱風も足されているけど……。


 風が吹くと温まった身体が少し和らぐ様に冷やされていく。

 風に乗って焦げ臭い臭いと油の臭いが鼻にまとわりつくけど……。


「高いところから見渡すと世界って広いんだなーって改めて思うよな」


 作務衣姿の男が屋上でボーっと空を見上げていた。

 下の階からはダダダダという銃声と、ドンッという何かが爆発するような音が響いている。


 下の階から階段を駆け上がる音がして扉の方を見た。そして男の後ろにあった下の階へと通じる階段の扉が勢いよく開いた。

 正確に言えば、蹴り飛ばされてこじ開けられたという方がただしい。なぜなら煙の向こうから最初に見えたのが黒い靴と肌色の足、ひらりと揺れたスカートと黒いパンツだったから。

 ドアからモクモクと漏れる煙の中から女がゲホゲホと咳き込みながら出てくる。


「アンタバカなの!? なんで扉締めてんのよ! しかも開かないし!!」


 煤けた顔をゴシゴシと服で拭いながら女が文句を言っている。


「何そんなところで呆けてんのよ! さっさと逃げるわよ!」


 女はそういうとバッグからボールのような物を取り出して、階段の下へと勢いよく放り投げた。

 数秒後に下の階から爆発音と壁が崩れるような音がした。爆発物を投げたのだろう。


 男が振り向いて女を見た。女の姿はパンクファッションを変な方向に改造させたような服装。

 本人は漁ったお店がこんな服ばかりだったと言い張っているが本人の趣味も絶対に交じっていると思う。


「なぁ。なんでスカートなんだ? 昨日のズボンはどうした? パンツ丸見えだったぞ」


「スケベ! 汚れたから着替えたのよ! これしかなかったの!」


 女が近づいてきて男の脛を軽く蹴った。


「パンツはいいからさっさと隣のビルに移ってよ! あいつらが来ちゃうじゃない!」


「分かってるよ。そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないか……」


 早く飛べ! と、女にぎゃあぎゃあといなされ、しぶしぶ隣のビルに向かった。幅は人がピョンと飛べば移れるぐらいの幅で高さも一緒なので楽だった。

 男が振り返ると女もこちらに向かって飛び移ろうと飛んだところだった。

 ふわりと浮かぶスカートが捲れ、一瞬だがやはりパンツが見えた。


「アンタ今、ガン見したでしょ? 後でお金払ってよね?」


「見せられるような恰好をしているほうが悪い。払わない」


「でも見たでしょ?」


「うん。黒だった。レースのやつ」


「死ね!」


 階段を駆け下りながら背中を蹴られそのまま転げ落ちそうになるのをバランスをとって止まった。

 二人で一番下まで駆け下りていく。隣のビルからはガシャンガシャンと複数の機械音が聞こえてくるが気にも留めない。とりあえず今は逃げるのが最優先だったからだ。


 一階に降りて質素な鉄のドアを開けると、まるで装甲車のようなゴテゴテしい車が止めてあった。正確には修理したキャンピングカーを改造して装甲を取り付けた即席の【装甲車両】であった。


「このポンコツちゃんと動くんでしょうね?」


「動くように直せって言ってきたのはそっちだろう?」


「まぁいいわ。さっさと行きましょ!」


「人使いが荒いな……」


 男が運転席に、女が助手席に乗り込みリュックを後部座席に放り込む。

 エンジンのキーを捻るとブロロロと鈍い鼓動のような音がしてエンジンが動き始める。


「やるじゃない。拾ってやったんだからこれぐらいはしてもらわないとね」


「もっと可愛い女の子に拾ってもらいたかったよ……」


「あぁ?」


「なんでもないです……」


 事故というか偶然という形で出会ってしまってから、尻に敷かれっぱなしな気がする。それでも根は良い人間だと感じているからこそ行動を共にしている。


「さて、どうやって出たものか……」


「突き破ればいいでしょ? バカなの?」


 そんな簡単なことも分からないの? と言いたげに女が男を見ている。


「せっかく修理したのにもう……。ちゃんとシートベルトしてよ」


 アクセルを思い切り踏み込んでサイドブレーキを解除する。

 急激なトップスピードからグンッと身体が動き、正面のシャッターにぶつかるとメキメキと音を立ててシャッターが壊れていく。


 そして、道にいる【やつら】が見えた。人型であったりボール型、ドローン型のようなロボットだ。中にはゲームに出てくるような重戦車やクモみたいな多脚装甲の奴らもいるらしい。


 そんな奴らをバキバキと跳ね飛ばしながら、アジトだったビルから脱出した。


 後ろから攻撃はされたが、車に取り付けた装甲のおかげで無傷だった。

 大きな主要道路に出ると、女は端末を取り出して徐に地図を表示させた。


「よし。この辺りは奴らもいないようね」


「結構あのアジトいい雰囲気でいいなぁって思ったのに……」


「無くなったものは仕方ないわ。それに必要最低限の食料なんかも積んでおいて正解だったわね」


 車の後ろには缶詰や飲料水、毛布や布団などのまるでキャンプに行くような装備が詰まっている。

もともとはキャンピングカーなので当たり前ではあるが。


 【やつら】もいなくなり、普通のスピードで走行しながら、かつては舗装されていたあろうでこぼこ道と、錆び付いて風化しつつある車を避けながら進んでいく。


「とりあえずどこに行く? 新しいアジトも探さないといけないし、俺の手がかりを探し行きたいしどこかのコミュニティーも見てみたいな。『アール』は?」


「うーん。確かに服も埃っぽくなっちゃったし、イケブクロ方面に行きましょうか。あの辺なら服も多いし、コミュニティーある。『人間狩り』が来てもがマーセナリーが何とかするでしょうし。それじゃあ『サンパチ』、運転お願いね」


「りょーかい」


 ハンドルを回し進路を変更する。


 アールと呼ばれた女性と、サンパチと呼ばれた男性。

 お互い本名もあるのだろうが事情があってこの名前でお互いを呼んでいる。


 そして二人はアジトが襲撃されて壊れるという形で半ば強制的に旅立った。

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