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転向
目を開けると、真っ暗闇が広がっていた。その暗闇には右往左往に目が散布していて、その目は僕一点を見ている。しばらく前を歩くと、ひどくしゃがれたおじいさんにあった。ボロボロの木製の椅子に座り、足を組んでいる。目がギョロリとしていて、髪も薄い。歯茎も溶けているようだった。
おじいさんは薄く乾燥した唇を動かした。
今日はどこにいくんだい
いつも通りだ。この場所に来て、もう50年くらい経つがこのおじいさんはいつまで経っても老人だ。
僕は少し考えてから口を動かす。
北里スーパーへ。
僕は10分の寿命をすり減らして答えた。瞬間に心臓となる赤ペンが熱くなるのを感じる。ただ別に何とも思ってはいなかった。たかが10分。普段話すことはないし、寿命だってあと100年はある。
そんな思案をしていると、目が暗転し、地面がわからなくなる。頭の中に時計のイメージが強制的に流れ込む。
気づくと僕はスーパー北里にいた。