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魔王さまも食べてみたい  作者: 四葩
3/10

It's time to eat. 【3】


 目を開けると、そこはどこか異世界だった。


 咥えたままの焼そばパンを飲み込んで、持ってきていたお茶で流し込む。

 ……次は何を食べようか。


 ツナマヨおにぎりを食べながら辺りを見渡す。俺以外の生徒は等しく床に倒れており、暫く目を覚ましそうには無い。

 取り合えず桐生さんだけでも仰向けにさせておこう。


 肩に手を置いてひっくり返し、仰向けに寝かせる。


「……ん、 んんっ…」


 …どうしてこの状況下で色っぽい声が出てくるのか。桐生さん、もっとしっかりしてください。思わず食べてしまいたくなるから。


 背中と地面の隙間に手を通し、上半身抱き抱えるように腕をまわ す。左腕は下半身に伸ばして体重を支える。

 所謂お姫様抱っこの体勢だ。


 目を覚ましたら怒られるかもしれないので、早いところ運んでしまおう。

 俺が元いた場所──食べ物が散乱している──へとやってきて、桐生さんを静かに床に寝かせる。直接床に寝かせるのははばかられたので、地面には俺の制服の上着を敷いている。


 ……やることも無くなったし、状況が変化するまでは昼食の続きを摂っていようかな。


 食べ物を口に運びながら考えを巡らせる。この部屋には窓が存在しない。明かり取りすらも。加えて床や壁が異様に冷たいことから、恐らくここは地下なのだろう。


 正面に聳える巨大な扉だけが、外へと繋がる道だ。


 手入れが行き届いているのか、床には埃一つ落ちていない。


 部屋の床の中心には不思議な幾何学模様が描かれており、その他には目立った物は何も無い。この部屋自体が魔方陣の為に作られたのだろうか?


 良く良く見れば、教室で最後に目にした魔方陣と同じものであることが窺える。


(現状で推測、及び把握ができるのはこれくらいかな?)


 未だ情報が不足したままだというのは理解しているが、これ以上はどうしようもない。異世界だと思ったのは、勘だ。


 そんなことを考えつつ、最後の照り焼きサンドを飲み込む。うん、美味い。


「ご馳走さまでした」


 食前、食後の礼儀はきちんとしなくちゃね。



 それから十数分してから、七瀬が起きた。取り合えず手を振っておく。無視された。……確かに接点無いけどさぁ…。


 七瀬の次に天納、藤堂、神楽坂、名前分かんないの順に次々とクラスメイトたちが目を覚まし、桐生さんは大体真ん中らへんで目を覚ました。


「……ん… ……んんっ…」


 相変わらず寝起きの声が色っぽい桐生さん。


「おはよ」


 一瞬で目が覚めるようにと、顔を覗き込まながら挨拶をしてみる。


「…………えっ! ……東雲くんが、なんで私の部屋に…!?」


 おはよう、ここ桐生さんの部屋じゃないよ? 桐生さんの部屋がどんな風かなんて知らないけど。


「桐生さん、ほら、目を覚ましなよ」


 顔に掛かった前髪を払いつつ呼び掛けてみる。まだ寝惚けているだろうから、このくらいならセーフだろう。


「……えっ!? ひゃ、ひゃぁぁぁぁっ~…!?」


 桐生さんは顔を真っ赤にして、そのまま物凄い勢いで俺から逃げていった。


 ……セーフだと、思いたい。



 桐生さんが俺の所まで戻って来るまで数分、寝ていた生徒が全員起きるまで更に数分の時を要した。


「……東雲くん、ここ、どこかな…? ……私たちって、どうなっちゃうのかな…!?」


 それは殆どの生徒が抱いている思いだろう。


「ん~… そろそろ説明があるんじゃないかな? ほら」


 俺がそう言って扉を指差すのと、巨大な扉が開いていくのは同時だった。……同時なの多いな。


 扉から入ってきたのは一人の女性で、金髪碧眼の見たことも無いような超絶美少女。


「……あの、東雲くん…?」

「ん? どうしたの?」


 桐生さんが俺のワイシャツの裾を引っ張ってきた。


「……あ、いえ… なんでもありませんでした…」

「そう?」


 まぁ、桐生さん本人がなんでも無いって言うんだから、大丈夫なのだろう。


「初めまして、勇者の皆様。私は、この国の第一皇女を務めます、アレーティア・リュオー・アステールと申します。これから先の未来、皇国ともども、末長く宜しくお願いいたします」


 彼女は、そう言って俺たちに頭を下げた。


 アレーティアの豪奢なまでの金髪が、火の光りに反射して妖しく煌めいた。


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