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魔王さまも食べてみたい  作者: 四葩
1/10

It's time to eat. 【1】


 朝日が穏やかに教室に射し込む。静かな教室には動く人影は一人も見当たらない。そう、俺を含めて。


(あぁ、眠い。いっそこのまま家に帰って寝てしまおうか?)


 そんな考えがなんともなしに頭に浮かぶ。例え心ではくだらないことを考えていたとしても、俺の身体は依然として机に突っ伏したままである。


 昨日の夜、……いや、今日の朝方までずっと起きていたこともあり、とても眠い…。寝坊しないようにと思い仮眠も取らずに学校へ来た訳だが、どうやら早く来すぎたらしい。


 まぁ、ゲームしてた俺が悪いんだけど。


「……ふゎぁ……、 誰か来るまで寝てよっかな……」


 おやすみなさい…。




 ◇




 ……ん~? 何か教室が騒がしい…?



 トントン


 肩を叩かれて目を覚ます。身体を起こして周りを見渡してみると、もう殆どの生徒が登校してきていた。


「…………おはよ。もう、先生くるよ」

「ん? あぁ、おはよう桐生さん。起こしてくれて有り難う」


 隣の席の桐生桜さん。良く言えばおとなしく、悪く言えば無口、そんな感じの静かな娘。でも優しい。

 彼女が起こしてくれたみたいだ。


「……またゲームしてたの…?」

「うん。本も読んでたけどね。…………ふわぁ…。」

「……そっか。何かおすすめの本があったら、教えてね…」


 ……。

 今ので、完全に目が覚めた。


「……イヤ、だった…?」

「…いや、別に嫌な訳じゃないよ。……うん、分かった。今度何かおすすめの本があれば紹介するよ」

「……良かった。ありがとう」


 桐生さんとは、ただ席が隣ってだけの間柄だったはずなんだけどなぁ…。まぁ、いっか。別に俺にとっての境界線を踏み越えて来た訳でもないんだから。

 それにしても、来月にはもう関わりがなくなると思ってたんだけどなぁー。俺、クラスの人間でも七割の人間は名前を覚えて無いし、三割の人間に至っては顔も覚えて無いから。桐生さんとも、席が隣にいる間だけの関係だと思ってたし。



 あと数分でチャイムが鳴るって時間になって、一人の生徒が登校してきた。名前は確か、七瀬悠真。

 なんで俺が名前を覚えているかというと……


「おい、皆!七瀬が学校来たぞ!」

「マジかよ」

「来なくても良いんだけど…」

「帰れよ~」


 男子生徒三名と女子生徒一名が七瀬へと声を掛ける。内容はまぁ、散々なものだが。


「キモオタが、学校来んなよ」


 声を掛けた四名の生徒(名前覚えて無い。)以外にも、数名の男子生徒は彼に暴言を吐き、女子生徒は彼を睨み付ける。


 ……なんで俺が七瀬の名前を覚えているかというと、彼がクラスでこういう扱いを受けているからだ。


 はっきり言って、胸糞が悪い。居心地の良いクラスだとも思えない。

 しかし、だからといって俺が彼を助けるかというと、それは違う。俺が彼を助けることは有り得ない。


「…………。」


 桐山さんも隣で迷惑そうに黙ったままだ。


 俺もゲームやマンガ、アニメは良く見る。オタクかと聞かれればライトな層ではあるものの俺もオタクに含まれるだろう。

 では何故、彼と俺との扱いにこれほどまでに違いがあるかというと、それには一人の女子が関係している。


 ちょうど今、七瀬に声を掛けに行った生徒がそうだ。


「おはよう、七瀬くん! もう始業時間ギリギリだよ?」


 ニコニコとしながら七瀬に話し掛けた彼女の名前は……えぇと確か……


「……藤堂さんだよ」

「へ? …あぁ、ありがとう桐山さん」


 そう、藤堂由香利さん。

 学校にいる女神と呼ばれる生徒の内の一人であり、俺たちのいる一学年では二人しかいない絶世の美少女である。

 彼女が時間を見付けては七瀬に構うものだから、七瀬は他の生徒達から目の敵にされている。


「あ…あぁ、おはよう、藤堂さん」


 まぁ、当の七瀬は、彼女の行動に迷惑……というよりかは困惑させられているようだが。


 七瀬が藤堂さんに返事をしただけで、教室内の空気が凍る。……お前ら、そこまで七瀬が気に入らないか。


 藤堂さんを無視をしようものならあとで制裁され、かといって返事をすれば睨まれ毒を吐かれる。七瀬が不憫でならない。


「七瀬くん、もう少し早く学校に来ないと遅刻しちゃうよ?」


 藤堂さん本人はクラス内の雰囲気に全く気付いていない。寧ろ狙ってやっているのではないかとさえ思えてくる。


「あ、あはは…」


 そりゃあ、七瀬も苦笑いで茶を濁すしかないだろう。


 そんな互いに噛み合っていない微妙な空気の中へと、更に空気の読めない奴が入ってく。


「由香利、そんな奴に構う必要なんかないよ」

「そうだぜ、そいつ、授業もろくに受けないで寝てんだから」

「七瀬くん、ごめんなさいね」


 乱入したのはイケメン二人と美少女が一人。ちなみに美少女の方は学年に二人いる女神のもう一人だ。


「由香利の貴重な時間を、七瀬みたいなくだらない人間に使ってやる義理なんか何処にもない」


 ……はぁ。

 さっきからふざけた発言を連発してるこの男が天納龍輝。確か、藤堂の幼馴染みだった気がする。

 個人的にはその言動の数々のせいで不快な上に吐き気がしてくるのだが、どういった訳か男女共に人気が高い。…実力?


「やめなさいよ、龍輝。由香利の行動は由香利自身が決めることだし、なによりも、その言い方は七瀬くんに失礼だわ」


 美少女の方の名前は神楽坂紫音。こちらも男女共に人気が高い。 …が、まぁ、こちらは納得がいく。

 容姿もさることながら、何よりも人が良くできている。天納が引き起こす面倒ごとを一身に引き受け、困っている人がいれば躊躇わずに手を差し伸べる。これで人気がでない訳がない。


「そうか? 俺はこんな奴放っておけば良いと思うがな」


 最後の一人、名前分かんない。天納とはまた違ったタイプのイケメンとだけ言っておこう。


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