アインの憂鬱
今回は少し短いです
~アイン・ファナ・キザイアン~
彼と初めて会ったのは3年前…勇者を探している時にたまたま耳にした噂の真偽を確かめようとした時のことでした。
一人の農民の青年がドレイクと相対し、これに勝利したという噂です。
青年はほぼ無傷で小物とはいえ、竜種に勝ってしまう。
そんな物語の様な噂でした。
私は神殿からの命で勇者を探し、その方と魔王を討つ旅に出なければいけない。
他の命を受けた聖職者たちのほとんどはすでに勇者を見つけ、旅に出てしまい焦っていたのでしょう。
他の勇者は、異世界から呼ばれたものや、学舎の優秀なものだったりしたのです。
そんな中にほとんど眉唾な噂を信じて、噂のあった森に行ってみることにしました。
なかなか綺麗な森です。
間伐が行き届いているのでしょうね。
湖まできちんと、道があります。
そこで見たものは、湖でzenraで泳ぐ青年?でした。
青年は私に気付くそぶりも見せず、悠々とおよいでいます
そのまま青年が湖のほとりまで泳ぎ着くと体を一度跳ねさせて、一気に出て来たのです。
そんな青年の姿をじっと隠れて見ていた私に青年が気付きます。
ちっ、もう少しだったのに。
青年は私に警戒しているのか、もう一度湖に潜っていこうとします。
「待ってください!、私は怪しいものじゃありません!」
じとっとした目で睨んできます。
「そういって、怪しくないやつはいない。俺の師匠の様にな」
どういう師匠だ。
「どういうお師匠様ですか!」
声に出てしまいます。
「師匠は、全身コートに下は全裸、目深に帽子をかぶった仙人だ」
それは仙人じゃない変態だ。
私は今度は言いたいことを飲み込みます。
この時声に出していれば、将来あんなふうにならなかったかもしれない。
何か天の声の様なものが聞こえましたが、気にせず進みましょう。
「えっと、私は勇者候補を探してこの地に参りました。聖職者をしているアインと申します」
「俺にとれる財産はない」
めちゃくちゃ警戒されてます。
昔、何かあったのでしょうか?。
「い・いえ、私は聖職者です。金銭は求めません」
「無償の正義ほど信じるな、俺の師匠の教えだ……」
変態に負けました!。
「大丈夫です。何でしたら一緒に騎士の詰め所へ行きましょう」
「前科確認?」
どういう切り返しですかっ!。
「違います!、私の身分確認です!、ってどこまで警戒してるんですか!。警戒するにも程があるでしょう!」
流石に憤慨します。
「俺の師匠は、言い寄ってくる女は全員財産目当てか、内臓目当てかのどちらかだと言っていた」
「お師匠様の過去に何があったんですか…?、いえ、正直私は金銭に困っていません、一応貴族の末席連なるものですので、あなたから金銭をいただかなくても大丈夫なのです」
「けっ!お貴族様かよ!」
態度が悪いですね…。
「ふう」
心を落ち着かせるために、一度深呼吸しましょう。
「あなたが、ドレイクを単体で討伐された方ですよね?」
「いいえ、何の事だかわかりかねるね!」
目が泳いでますねぇ、ここで畳みかけましょう。
「もうネタは上がっています。いくらあなたが偽証しようとも、真実はいつもひとつです!」
はったりです。
…これで何とか押し通しましょう、もう少し…
ザパッ。
ん?湖から出て…逃げる!?。
ですが、彼はゆっくりとした動作で、服を着だしました。
しわを伸ばすように、ちゃんと最後まで、裾もきれいにズボンにしまいます。
「俺がしました…。ながくなりますか?」
一発で落ちました!。
「もう少し粘りましょうよ!」
「師匠曰く、早くに認めた方が出てくるのに差が出るって…」
涙ぐんで何か言ってます!。
お師匠様、あなたは何して入っていたんですか?、まあ、大体見当が付きますけどね。
「まあいいでしょう。一緒に来てくれますね?」
とぼとぼと、私の方に歩いてきて。
「…最後に友人と家族に、挨拶だけしていきたいんだ、それだけ許してくれたら……黙ってついていく…」
ああっ、この見た目でこの従順さ。
何でしょう、私の中で獣のような声が聞こえたような気がします。
今思い返せば、あの時からちゃんとしつけておけばこんなことにならなかったのでしょうか?
正直わかりません。
今回のことは、先日起こったミスで彼に反省してもらうつもりでした演技だったのですが……。
かませも使って、みんなも巻き込んでの大掛かりなものです。
このかませがいつもいいものに身を包んで、一度も戦場に出たこともない坊ちゃんだということは知ってます。
そんな奴、はなから使えないのは解っています。
前々から、実家がこのかませと早く身を固めろと言っていましたから、このかませにお出ましてもらって、気を引き締めようとしたんですが。
あいつ、この時、狙ってましたねぇ……。
早く追わねば、足が速いうえに何か、別にもっていますね、アイツ。
「さあみんな、もう少しで魔王城だ!世界に平和を!……ん?なんでみんなこっちをそんな目で見ているんだ?。早く行こう!」
ええ早く行かねばなりませんからねぇ、私の最高の勇者様のところにねぇ。
「この戦いが終わったら、アイン…早く婚姻を済ませよう!」
カマセガナニカイッテルナ、ドウショブンシヨウ?。
次回も新勇者?のお話です。