森に行ったら…
過去回想話です。
さっそく、依頼を受けさせられた。
薬草、香木の採取、依頼人は変わった格好のばあさんだ、やたらじゃらじゃらじゃらとしてたな…。
まあ、最初はこんなもんか…今俺は、街から少し離れた森で薬草や、香木を探している。
この森はなんでも、恐ろしい魔獣が出るということで街の住民はあまり近づかないそうだ……やはり、よそ者には世間の風は厳しいな…
薬草は、自然に生えているものの方が、栽培しているものより効きがいいそうだ…依頼人のばあさんが言っていた。
ばあさんから教わった薬草を探していておかしいことが分かった、この森は広い…道に迷いました…。
OH…HELP ME
道に迷いだしたのはそうあの時からか……。
4年前
「ふう、今日はこのくらいでいいか!」
森の獲物、イノシシを一、カモらしき鳥を二、これだけあれば一週間はもつだろう。
そう思っていると。
”GAAAAAAAAAA”
とても大きな獣のうなり声が聞こえてきた、その方角で何かが駆けてくる音がする。
とりあえず、獲物を隠さなければと思い、イノシシを担いで音のする方から逃げることにしたが、遅かった…。
馬に乗ったメイド服を着た女が、この森の長と言われているドレイク、胴体はトカゲのようでありながら鱗がびっしりあり、顔は鳥の羽毛がなく鱗に覆われている、そんな感じの魔獣に襲われている…。
どうせ、勝手にチョッカイをかけたんだろうと思い見捨てることにした。
んだが、こっちに向かってくる。
あっ、馬が泡を吹いて転ぶ。
間一髪、投げ出された女をキャッチすることに成功するが、ドレイクは俺の獲物に目をつけて奪おうとしている、ぶっ殺す!。
女性を地面に横たえて、奴に向き直り剣を向ける。
俺が持っているのは、一本いくらの弟子が試しに打った安物だが、知ったことか。
あいつは、俺たちの数少ない蛋白源を奪おうとしているんだ、死んでも文句はないだろう…。
まず弓矢で後ろから近付いて肛門めがけて矢を放つ、上機嫌で尻尾を挙げているからだ。
後ろ足の間にある、肛門らしきものがあったので狙って、命中。
ドレイクは、トッポをおろして水平にふってきた、正直目の前は奴のしっぽで覆われているが。冷静に間合いを図っていたので届かない。
尻尾を振った勢いそのままに、奴はこちらに振り向くが今度はこちらから近付いて、下から足の付け根に剣を突き入れる、そのまま剣を引き抜いて反対側から迫っているもう片方の足を避けて剣を奴の目に突き刺す。
腐っても竜種。
普段森に自分以上の体格の魔獣がいない上に、比較的森が豊かで食料に困らないから戦闘慣れしていない完全な食物連鎖の頂点のくせに…しぶとい。
もう少し、王様面して、ぐうたらしてりゃあいいものを。
奴は、ひるみながらも巨体を横に向けて回転、転がりながら向かってくる正直困ったな、すきがない。
一目散に、斜め後ろに向かい、転がってくる進路からずれようとがんばり…成功。
奴はそのまま大きめの岩にぶつかり停止、ダメージを受けたのかよろめきながら起き上がってくる、バカなのか?。
とりあえず、眼を回しているようなのでこのスキに半開きになっている奴の口を頭の天辺めがけて剣を突き入れる。
剣が耐久力の限界が来たのか根元から折れてしまう、今度からどうしよう…安物だとはいえ鉄でできてるものは全般高い…。
そんなことを思っていると、ドレイクは足から力が抜け、腹が地面についた状態で息絶えていた。
勝利するも、竜種や肉食のモンスターはの肉は臭みが強くて、料理するのも手間なんだが…この際構わないか、骨や竜鱗、牙なんかは高値で売れるそうだし、行商人に聞いてみよう、弟や妹は学び舎に通いたいらしいから入用なんだ…あれ涙?…新品の剣の分ぐらい残るかな?
そうこう思っていると、メイドらしき人が目を覚ましたようだ。
スレンダーで、少し幼い顔立ちだが美人さんと言ってもいいだろう。
「う、ん?あなたは?…あ・あのドレイクを…あなたが倒したのですか?」
無理やり体を起こそうとしているようだ。
「ん、無理をするな、馬から放り出されたときの勢いで体に負担があったんだろう、ゆっくりしていろ」
俺が進めてもなんとか起き上がろうとしている、それだけ何か重要なことでもあるのだろうか?。
俺が彼女の起き上がるのに手助けをすると、彼女はドレイクの亡骸を見て、こちらに振り向くと。
パシン‼
彼女の平手打ちが俺の頬に炸裂する、何なんだ!?
「嘘を…嘘を言わないでください!?あなたではないはずです!私のご主人様のはずです!どこにいますか!?」
彼女は錯乱し、俺から離れようとして、また地面にへたり込んでしまう。
彼女は必死に周りに目を向けるも、周りに俺以外の人はいない。
「俺は君がここに馬で走りこんだ時から知らない、なにがあったんだ?」
「あなたには関係ありません‼ご主人様はどこですか!」
聞くに堪えないけどけど、もう一度聞いてみる。
「二度目だが、俺が見たのは君だけだ、ご主人様とやらは知らない、なんでいつも森の奥でぐうたらしているドレイクが君に襲い掛かっていたんだ?、奴は滅多に奥から出てこないはずなんだが?」
彼女は顔を真っ赤にして、眉毛を吊り上げる。
「あなたのような下郎には関係ない!、どこかに消えてしまえ!」
何を言っても無駄のようだ、ならさっさと今日の獲物を回収して立ち去るか…。
俺は隠していた鳥と、食われかけのイノシシ(これも魔獣に入る、トーチボアというらしい一応Dクラスの魔獣だ、なんでも興奮すると、毛が赤くなって燃えたように見え、夜には明かりがともっているよう見えたことからそう名付けられたらいし)を担ぐ前に、ドレイクの使える部位の切り取りに向かかうことにする。
ドレイクに近づこうとすると、メイドらしい彼女が大声を出して。
「その獲物は、わが主のものだ勝手に触ることは許されない‼」
彼女がそんなことを言ってきた。
「このドレイクは俺が獲ったものだ、君がいくら言おうとこれは俺の獲物だ!」
強い口調で俺が反論すると、彼女はへたり込んだまま泣き出した。
「ぅっっ、ご主人様はどこにいるんですか、っ私は確かに一緒にいたはずなのにっ」
「ふう、もう一度聞くけど、どこで何をして、なぜこの状況になったんだ?教えてくれ、俺が見たのは馬に乗ってここまで来た君しかいないんだ」
仕方ない、残りの武器は弓に矢が一本折れて、三本しか残っていない、何かあった時に対応できるか?
「私は、ここから少し離れたところに所領をもつ、カーベッツア伯爵様のところで働かせていただいているメイドで、マリノと申します、ここには旦那様と若様、精鋭の騎士数十人と、同行として私を含めたメイド数名ときました」
俺も一応自己紹介しておく。
その後話を聞くと、まあ要約すると、息子を戦争に行かせたくないバカ親が安易な名誉に飛びついて、ドレイクを狩って息子に箔をつけようとしたらしい。
バカなんだろうか?。
ドレイクは先に述べた通り強い個体でBクラス小さな小国の軍隊とやりあえるクラスだ。
ここのドレイクは、ぐうたらであまり動かない個体だったからよくてもDクラス、小隊規模で取り囲めばなんとかなる個体だ、と高をくくったんだろうな。
所詮、国で働く騎士や軍人じゃないんだ、一貴族に養われて、たまに出る魔獣被害に対応するだけの騎士にはドレイクはきつかったんだろう。
そして、ドレイクとの戦闘に入り騎士たちが先陣を切ろうとしたときに、何かがあったんだろう。
そこから先の記憶があいまいらしい。
「先ほどは、本当に申し訳ありませんでした!、何があったかわからず、怖くて…ぅっ」
まだ涙ぐんでいる彼女が頭を下げてきた。
「別にいいさ、だけどこの森は俺も狩に使っているところだ、何かあったら困る、領主様に報告もしなければいけないしな」
「あっ、それだけはおやめください!、伯爵様はここのご領主さまには何も言わずに入られていたのです、そんなことが公になったら…」
顔を真っ青にして、そんなことを言ってくるが。
「どちらにしろ、このままじゃいけない、伯爵様がこの森で今どうしているのかわからないんだ、手分けして探すには、領主様のお力が必要になる」
この森は広大だ、それにここの領主様は心が広く温和だし、ご子息も聡明でお優しい方だしな。
俺はなんとか彼女を説得させると、足早にこの森を出ようとしたその時、馬が一頭こちらに向かってきていた。
「この馬は若様の乗っていた馬です!、この馬の来た方向にきっと皆さまがいるはずです!」
俺の方に向いてそんなことを言ってきた、やっぱりこうなったか……。
馬の来た方向に向かっていくとそこには、地獄が広がっていた。
騎士だったものがそこかしこのちらばっていて、肉片が木にぶら下がり、何か上から踏みつぶされたようになったものまである。
「あっあっあっ…!」
声にならないのだろう、顔は青を通り越して白だ。
そんな彼女から目を離し、地面に転がる死体の中で一番豪華な鎧に目をつける。
これが伯爵様か?
俺は死体らしきものに近づく、肩にかみつかれ、かみちぎられた様で、その部分だけがない。
取り合えず、アンデットにならないよう死体を一か所に集めようとすると、マリノは白い顔のまま動き出し、何かを探している。
「あの…若様だけが見当たらないのです…探してください!」
探せと言われても、肝心の若様とやらの顔を俺は知らないんだけど。
いくら探しても、若様とやらは見つからない…どこかに逃げて生きているのか?、だったら早く出てきてくれ、そこいらが死体まみれで辟易しながらそんなことを思う。
あらかたの死体を一か所に集め、騎士たちが付けていた防具や、剣を回収、身元の分かる物と一緒に保管しておく、後で遺族に引き渡さなければいけない。
そんなことをしていると、すでに日は沈み、夜になりつつあった。
肝心の若様が出てこないなが、死体に火を放つ、死体は念がこもる死に方をすると体内の魔力が暴走し、リビングデッド、アンデットなどと呼ばれるものになってしまうことがある、その際魂も魔力が強制的に肉体にとどまらせるため苦痛のせいか、動く死体どもはうめき声を発しながあたりの生物に手あたり次第襲い掛かってくるらしい。
そうならないように、素早く死体を処理するに越したことはない…別に怖いんじゃないんだからな!
誰に言い訳しているんだろう?。
死体を火葬し終えるとマリノが近づいてくる。
「やっぱり、若様は見当たりませんでした、ジーン様こんなことをお願いできることとは思いません、ですが、私ができることなら何でもします、一緒に若様を探していただけませんか…」
下郎から地位が上がったな…ここまで来たんだ、付き合ってやるけどな。
「わかった、だけど今は夜だ、むやみやたらに森を歩き回るわけにはいかない。朝になったら行動しよう」
朝を待つ間に、伯爵家に何があったのかを聞いてみた。
「若様はあまり体が強い方ではあしませんでした、そんな折に、隣の領地の男爵家の若君が軍に入り、出世したということが耳に入り、若様の婚約者さまがその若君に懸想なされたということらしく、相手は男爵家、自分より身分の低い貴族に婚約者がとられるなんてことが、周りの貴族の耳に入るなんてことがあってはいけない」
要するに、貴族の体面を気にして、ドラゴンスレイヤーという肩書を若様とやらに与えて、婚約者を振り向かせ、貴族の体面を守ろうとしての失敗ということらしい…。
「若様もやる気になられていて、あまり大きくもなく、被害らしい被害を出さないおとなしいドレイクということで、皆が簡単に討伐できるお思っていたのですが」
「…ドレイクといえども竜種、ドラゴンだ、簡単に討伐できるなんてことはない」
「あなたは、おひとりで討伐されたんじゃないんですか?」
「気構えの違いだ、俺は最初から奴に対して気を許していない。それに、俺は討伐じゃない狩猟のつもりで向かった、騎士のお綺麗な戦いとは違う」
「わ、私たちが油断していたというのですか!?」
彼女の気に障ったのか、立ち上がりにらんでくる。
「少なくとも、騎士の皆様は油断などなかったはずです!」
「俺が言っているのはそんなことじゃない、騎士の戦いは真っ向勝負が基本だ、俺のように罠や、後ろから狙い撃つなんてことは、騎士道からかけ離れている、俺は罠も使えば、なんでもする」
実際に俺はドレイクと戦うとき、後ろから狙ったし、足も狙った。
「騎士の戦いに油断があったんじゃない、騎士の技が通じる相手じゃなかった、それだけだ」
彼女は憮然とした顔で睨んでくる。
「でも、あなたは見たところ冒険者にも見えないじゃないですか!」
彼女はまだ、食って掛かってくる。
俺の装備があまりにも、貧弱なことが彼女の気に障ったのだろう。
「まあ俺は、冒険者じゃないけど、この森で俺はすでにドレイクを二頭狩っている、奴よりでかいやつだ」
彼女は絶句しているが続ける。
「奴らは、体の割に頭が悪い、それにこの森には奴ら以上の魔獣がいなくてのな、そんな奴のスキを突く何て簡単なことだよ」
嘘だ、俺は一度ドレイクとやって、すんでのところから逃げ出している。俺はその時のことを教訓にして、奴らを一か月ストーキング、奴らの動きをほとんど覚えている。まあ、今日のあのごろごろには驚かされたがな。
俺の強がりに彼女が気づいた様子はないが、どこか釈然としない顔をしている。
「あなたは狩人なのですか?」
「いいや、ただの農民だ」
「ならっ!」
「ただ、この森の近くに住んでいて、狩人のじいさんから狩の技を教えてもらったことがある…。そのせいで俺は家の肉類全般係にされてな、ずっと森での狩に出されえているんだ…。ほんとは土いじりのが好きなんだけどな」
最後に小さな声で、そんなことを言うと彼女からすこし憐みの目線が送られてくる。
「…あなたも苦労しているんですね…」
俺たちは、いろんなことをそれから話した、彼女が伯爵の妾の子だったことや、若様が腹違いの弟だったことや、俺が十人家族の六番目の子供だということや、本当は土いじりが好きなんだけど六番目で、兄二人姉二人弟二人で十分回せるということで、狩人のところに追いやられたことなんかの普段ため込んでいる愚痴を話し合った。
そんなこと話していると、彼女がうつらうつらとしだしたので。
「今日はいろいろあって疲れが出たんだろう、君は休め」
「あ…そんなわけには…」
無理やり目を開けようとしているが、すぐに瞼が落ちてきている。
「いいから」
俺は、彼女の頭をもって自分のバックの上に置く。
「朝になったら起こすから寝ていろ」
彼女の瞼が完全におち、寝ていることを確認すると俺は。
「…おい、これでいいだろう。出て来いよ」
最初から何かの視線を感じていた。獣の静かな視線じゃない、ねばっこい人間の視線。
「…いつから気づいていましたか?」
殺意の視線、結構な美形だ。
「いつから?…ここに俺たちが向かう前、ドレイクの近くにいる時からかな」
こいつ…。ドレイクの近くにいる時からずっと俺たちを覗いてやがったからな。
「俺に気でもあるのか?それとも体だけの関係だけを望んでいるのか?」
俺はこいつの気をそらすために、そんなことを言ってみた。
殺意の視線から、なにか気持ちの悪いものを見る視線に代わる。
「君は、その気があるのかい?」
「まさか、さっきからこの子に気持ちの悪い視線を向けてる奴にだ、もしからこの子に嫉妬でもしているのかと思っただけさ」
俺が肩をすくめてみると、視線の主はバカにしたように俺を見てくる。
「そんなはずがないでしょう、これだから農民は、その女に用があります。こちらに渡してくれますね」
こいつが件の若様か、くそっ美形だ。
俺は唾を吐きだす。
「俺はこの子と約束してな…、朝になったら起こすとな。話なら朝になってからしたらどうだ?」
若様の顔が崩れる。
「農民風情が、この僕に命令するのか!?、己の身分を知れ!」
激昂した若様が貴族のテンプレを言ってきた。
「おい!起きろマリノ!このバカ女!」
「腹違いとはいえ姉だろう、バカ女はないだろう?」
「ふん、そんな下女など姉などではない、父上がたわむれに手を出した使用人との子だ。所詮いつでも使いつぶせる使用人の一人でしかない!」
マリノの言動ではこいつを大事に思っている節が強かったが…随分温度差があるな。
「まあ、いくら言っても起きないよ。この子には、睡眠作用の強い草をかがせておいたからな」
なんだこいつ?にやにやと…気持ちわる…。
「ふん、遊ぶんだったら早くしろ、その後、そのまま引き渡してくれればいい」
そういうことか…こいつゲスいな。俺は吐き気がするが…我慢する。
「勘違いするな、気持ちの悪い視線を向けるバカがいるんだ、この子の情操教育に悪いと思ってな」
「なんだと!?」
「後ろめたいことがなければさっさと出てくればよかったんだ…、それができない奴に気持ちが悪いと思って何が悪い?、それにさっきからこの子に向ける視線が危ない奴の視線なんだよ。貴族なら少しは腹芸を見せろ」
「くっ!この農民がぁ!」
「それしか言えないのか?農民でももっとボキャブラリーがあるぞ?」
腰のサーベルを引き抜いてこちらに歩いてくる。
「お前ごときが、僕を愚弄するのか!?農民風情が!?図に乗るなぁ‼」
サーベルを振りかぶってこちらに向かってくる、俺はサーベルの間合いに入ると一瞬で前に踏み込む、奴の腕が俺の方に当たると同時に引き絞っていた腕を前に出す。腹に当たる。
サーベルを手からこぼれ落とすと、すかさず蹴り飛ばす。
「うっ」
気絶はさせない、こいつには聞きたいことがある。
胸倉をつかんで、引き起こす。
「彼女は一人で馬に乗って、ドレイクに襲われていた。その時思ったんだ、所詮一メイドだ、そんな彼女がなぜ馬に乗って逃げていた?走りながらならわかる。けど彼女は馬に乗っていた、なぜだ?」
「はあ、くう」
まだえづいてやがる。
「答えろ」
少し語調を強めて聞く。
「知らん、そいつがドレイクの方に向かって勝手に走っていったんだ!どうせ混乱して逃げ出したんだろうよ!」
ふう、やっぱりかこの子は悪い子じゃない。
それだけわかればこいつに用はない。
「わかった、行っていいぞ」
若様は解放されると一目散に森の奥にかけていく。
バカなのか?、まあどうでもいいけどな。
「あいつ!、すぐ戻って殺してやる、あのバカ女もだ、俺はがこれを、持って、いけばあの女もすぐ、こっちに、帰ってくるはずだ。」
腕の中には、隠してあったドレイクの目があった。
ドレイクの目、竜種の目には強い力が宿る。
魔力量を増やし、魔術の適合力を増やす。
それと同時に体に強力な精を与え強い子孫を作らせるという、言い伝えがあった。
けれど当時のジーンや、狩人は竜種の目には手を出さなかった、なぜなら竜種の目は肉体が滅んでも目に宿る魔力が同族に自分の居場所を伝えるからだ。
だから、暗黙の了解から竜種の目には決して手を出さず、その場で放置か、さっさと燃やしてしてしまうかのどちらかに分かれる。
ドスン、
なにか重たいものがゆっくり、降りてくる気配がして、若様が振り返ると。
‘ファイヤードレイク‘
ドレイクの最上級種、本当ならトリントの島の頂上にて鎮座する。
ドレイクの王。
その威容は竜種の王の一種と言って差しさわりがない。
若様が声を出せずにいるとファイヤードレイクは口を開けて。
パクリ、くちゅ、くちゅ。
そのそしゃく音はがしばらく続くと、ゆっくりとファイヤードレイクは飛び去って行く。
若君が去ったあと、しばらくすると巨大な何かが頭上を飛んでいき、去っていく気配がした。
無知とは怖い。
思った通りだこの子は、馬に乗るのがうまくないにもかかわらず、ドレイクの方に向かっていったそれは、
ドレイクに恐怖していたはずの馬を操作して、ドレイクの視線を自分に引き付けようとしたんだ。
さっきの話で、あの腹違いのバカはこの姉に愛されていたんだろう。
あのバカは本当に最後まで馬鹿だったんだろうな…。
朝方、近くを探索すると、血だまりがありその中に腕が一本落ちていた。
その腕には、指輪がついていた、その指輪は伯爵家の跡取りが付けるもので、若様がドレイク討伐前に託されたものらしい。
泣き崩れる彼女を連れて森をでると、そこには領主様の軍隊が戦列を敷いていた。
「ジーン!どういうことだ!夜に巨大な竜種が森の中に飛んでいくのが目撃された!何が起きているんだ!?」
俺はで見たことを、領主様にすべて伝えた。
「ジーン兄様!」
領主様の娘と息子が俺のところにかけてくる。
「ジーン兄様が森に入って出てこないとお聞きして、いてもたってもいられず、我が家の皆が心配で駆けつけました!」
そんなことを二人が言ってくる、どこぞの伯爵の若様に聞かせてやりたいな。
「まあ、大丈夫だよ、少しトカゲを殺してきただけだよ」
俺は安心させるように言うけど、どこか心配したように。
「兄様はたまに、変なことに首を突っ込んでいくから心配なんですよ」
「そうだ、お前は昔から俺たちに心配ばかりかけてる前科があるんだ、反省しろ」
もう一人でかい図体のフルプレートメイルが近づいてくる。
領主様、マードリック侯爵家の長男、エド・キファト・マードリック、俺の幼馴染で次期当主だ。
「悪いなエド、だけど今回は巻き込まれただけだ、大目に見てくれ」
「…まあいい、ケガはないか?」
「獲ってきた獲物がとられていた、剣が折れた、大損だ」
「ふん、ケガがないならいいさ、お前もいい年だ、結婚して腰を落ち着かせろ」
「相手がいないさ、それにもう少しいろいろしたいしな。まだ結婚はできないよ」
それから一年後、ドレイク討伐が俺の仕業だとは秘密になっていたはずなのに、ある一人の聖職者が俺のところに訪れる。
そこから俺の迷走が始まる、捨てられるまでの勇者の物語が。
と、過去に現実逃避しても現実は変わらない。
狩人のじいさんから教わって、森での歩き方は知っていたつもりなんだかな…勘が鈍ったか。
だが俺はあきらめられない、こんな時は冷静に…。
よし!すべてを脱ぎ去って、落ち着こう!、俺は装備や衣服を脱ぎ去って生まれたままの姿になる。
こんな森の奥だ、誰も来やしない!
そう、俺は森の一部になったんだ。
俺は森、森は俺、ああ素晴らしい!、このまま走っていきたい。
「なにしとんじゃ?」
目の前に、とんがり帽子のオンナノコガイマシタ。
冷静に腰に手を当て。
「道を教えてください」
ドン引きされた。
結局全裸です