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拝啓、他人様の体を借りていますが異世界で元気にやってます  作者: 川崎AG
四通目 永遠と終焉と始まりの街
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4-0 永遠の終わり

 ラーナエイト。

 アステリア王国東部に位置する、人々に永遠を約束する不老の都。


――― その都市が赤に包まれていた。

 

 炎。

 何物をも焼き尽くす死の業火が、街を覆う檻のように噴き上がっている。


 住人達には何が起こったのか分からなかった。

 少し前から街の上層で何か騒ぎが起こっていたのは知っていたが、それが何なのかを知っている人間は下層部には居ない。

 この街の上層に住む不老者達と、上層に踏み居る事さえ許されない下層の住人達では、文字通り住む世界が違うのだ。上の騒ぎが下にまで伝わる事はない。

 いや、そもそも、この街にそんな騒ぎが起こった事なんて無い。200年以上の歴史で1度たりとも、だ。

 だが、その安寧の歴史がたった一夜にして終わろうとしていた。


 下層部の住人達は、状況も分からず、かと言って炎によって閉じ込められて街の外へと逃げる事も出来ず、ただ街の広場に集まって子羊の群れのように身を寄せ合っていた。

 そんな住民達の前に“それ”は姿を現す。

 なんの前触れもなく空間が紙のように剥がれ落ち、


――― 悪夢が形となって現れる


 2m近い長身。

 フルプレートの鎧のように、赤い光沢を纏う異形の肌。

 その手は、立ち塞がる物全てを引き裂く、獣のような爪を持ち。腰のあたりからは折り重なる刃のような、禍々しい尻尾。

 肩甲骨の部分には、スラスターのようなパーツが生え、そこから噴き出す炎がまるで翼のように広がる。

 そして、その頭部は炎のように硬質な赤い髪が蠢き、その双眸は…闇だった。真っ暗な穴のように闇が瞳の中に広がり、その奥には血のような深紅の光が爛々と輝いている。


 出会った者に、無条件で恐怖を叩き付けるその姿はまるで、物語の中に語られる悪魔。

 深紅の瞳がギョロッと闇の中で動き、身を寄せ合う住人達を見る。


「あ…」「ひぅ……!?」「た、助けて!!」「殺さないで…」「やだ、やだ! 死にたくない!!」


 言葉よりも雄弁に殺意を伝える瞳。


「お、おお、お前は一体なんだっ!?」


 冒険者の男が辛うじて武器を構えて叫んだ。

 それに対し、炎の悪魔はポツリと呟く。


「厄災」


 下層住人達は、運命の終わりを覚悟した―――…。



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