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3-32 蹂躙者達 ~ 世界の道標 ~

 小さな蝋燭の頼りない光に照らされた薄暗い部屋の中、大きな円卓が唯一つ。

 その円卓を囲む6人の者達。

 上座に座った隻眼の男が、重苦しい口調で話を切り出す。


「エスぺリア、今回の件はお前の失敗だ。理解しているな?」

「はーいぃ…ゴメンなさぁーい」


 咎められているのに大して悪びれもせず、自分の右手の治療痕を眺めて不機嫌そうに返事をするピンク色の髪の女。


「グリフ、お前の腕は?」


 次に声が向けられたのは、左腕が綺麗に無くなっている老人。しかし、当の本人はその事なんて気にした様子もなく楽しそうに笑っている。


「ヒッヒッヒ、流石噂の≪黒≫の継承者じゃよ。完全に知覚から姿を消していたのに、腕を持って行かれてしもうた。アレはお前さんの言う通り、ワシ等では勝てんな」

「それで、腕は治せそうか?」

「ふむ。すぐには無理じゃな、“代わり”が見つかるまでは精々大人しくしておるよ」

「それが良いだろう。その状態で下手に動かれて、お前に消えられでもしたら頭首に何を言われるか……」


 隻眼の男が大きな溜息を吐くと、老人の対面の席に席に座っていた少年が、声量を間違えたのかと疑いたくなるなるほどの大声で喋り始める。


「それもこれも、全部エスぺリアの馬鹿のせいじゃないか!! だから、こんな奴に行かせるなんてボクは反対したんだ!!」

「あらぁん? リューゼ君ったらぁ、ひっどぉーい」

「本当の事だろ!? あと君付けも止めろって言ってるじゃないかっ!!」


 一方的に少年がワーワー女に言葉を叩き付けだしたが、ピンク髪の女はそんな事気にした様子も無く治療痕を突いたりして話を聞き流している。


「しかし、リューゼの言も最も。これで、≪赤≫の継承者は我等の事を完全に敵と見なしただろう」


 小さい声だが、部屋全体に響く低く良く通る男の声。

 声の主…少年の隣で、保護者のように座っていた大男が更に続ける。


「≪黒≫に続き、≪赤≫も我等の敵に回ったのは、今後の行動に支障が出るのではないか?」


 それに言葉を返したのは、円卓ではなく壁に寄りかかっていたエルフの少女。


「………でも、エスぺリア……が、≪赤≫の継承者は………雑魚だったって…言ってた……」

「そうだな。しかし、相手が宿しているのは原色の魔神だ。安く見ていれば、足元を掬われるのは俺達だぞ」

「………ごめんなさい…」

「いや、エメル。別に今のはお前を怒った訳じゃない」

「どーすんのさ! 魔神2人が手を組んだら、面倒な事になるんじゃないの!? このまま他の魔神まで敵になったらさ!!」

「それは問題ない。頭首により≪白≫はコチラの手に落ちた。残るは、行方の分からない≪青≫1つだけだ」


 初めて聞かされる事実に、他の5人がどよめく。


「流石我等が頭首殿。すでに≪白≫を手にしていたとは…」

「でも、誰が継承者になったのぉん? 頭首じゃぁないわよねぇ?」

「例の客人だ。それにともなって、暫く頭首も体を変えるとの事だ」

「…………あの女……嫌い……」

「エメルと同感だよ! あんなどこの誰かもしれない女、ボクは信用しないからね!!」

「頭首の判断を疑うつもりはないがのぉ…。外部の者に魔神の力を渡すのは、やはり不安があるじゃろう」


 すると、皆の言葉を聞いて、隻眼の男が噛み殺した笑いを浮かべる。


「ふっふふ、お前達、何を馬鹿な事を言っているんだ? お前達だって、頭首の計画の終着点がどこに向かうのかは知っているだろう?」


 言われて、その場に居た全員が静かに笑いを浮かべて頷く。


「そうだ。頭首にとって、魔神の力はあくまで手段。誰が持ち主(・・・・・)でも関係ない(・・・・・・)


「ああ」「その通り!」「……頭首様こそ……」「真なるぅ」


「世界の道標なのだからな」



三通目 宵闇の支配者 おわり

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