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14-6 真希さん家

 若干空気の悪い食事を終え……、妙に視線をバチバチさせるパンドラとフィリス、そして心此処に非ずなカグ、あといつも通りに肩で俺に甘えてくる白雪を連れてギルドに行った。

 まずギルドに行ったのは、真希さんとJ.R.の所在確認の為だ。

 近頃の魔物の凶暴化で俺等キング級はバタバタ駆り出されてるし、クイーン級の…それも戦闘力上位2人が仕事してない訳ない。

 入れ違いになったら時間の無駄だしね。


 で、ギルドで確認したところ、真希さんは現在自国に居るとの事。一方特撮オタクは………行方不明になっていた…。

 え? なんで? あの人何してんの? と思ったら、どうやら俺と一緒に出かけた後から連絡が取れなくなったらしい。

 って事は、もしかしなくてもアレですか? あの人、まだ精霊界でバカンスしてる最中ですか?

 ………精霊を呼んだ時の用件が1つ増えたわ…。

 むっさ怒ってやりたいけど、特撮オタクを精霊界に連れて行ったの俺だし、しかも置いて来たのも俺なんだよなぁ…怒るに怒れん…。

 まあ、そっちはとりあえず横に置いておき、今は真希さんの所に向かう。


 フィリスに頼んで転移でパッと移動し、真希さんの護る国プリアネルに到着。

 いつ来てもこの国は南国風味でバカンス気分になれるよなぁ……まあ、そんな悠長な事言ってられる状況なら…だけど。

 明日世界が終わるかもしれない状況じゃ、爪の先程の楽しさも湧いてこない。


「真希さんの家どこだっけか?」

「あちらです」


 フィリスに先導されて、真希さん家に向かう。

 すれ違う人達の顔は明るい。

 魔物の脅威が有るっつっても、ここは真希さんが家を構えている町だ。クイーン級冒険者の御膝元ともなれば、魔物の脅威なんて有っても無いような物だろう。

 だけど……もし明日、俺がジェネシスに負けて≪赤≫を取られるような事になれば、この人達も―――…。

 頭を振って、浮かんで来た不吉なイメージを払う。

 ヤメヤメ…。ただでさえ野郎にビビってんのに…この上負けた後を考えて及び腰になるなんて洒落にならん。

 俺が1人で悶々としている間に到着。

 そして、家の周りの掃除していた真希さん家のメイドさんを発見。えーっと…アノさんだっけか?


「どうも、コンチワっす」

「あら、アーク様! いらっしゃいませ」


 ペコリと小さくお辞儀され、会釈で返す。

 同じメイド装束を着ている者としてか、妙にパンドラが張り合って礼儀正しくお辞儀を返すのが面白い。


「真希様に御用ですか?」

「ええ、いらっしゃいます?」

「はい、先程魔物の討伐からお帰りになったばかりですので。……近頃は帰って来たと思ったらすぐにまた討伐に呼び出されてしまいますから、お話をするならお急ぎになった方が宜しいかと」


 やっぱり真希さん所にも魔物の凶暴化の波が来てんのか。

 まあ、俺等キング級が日々頑張って魔物始末してるつっても、能力高い魔物を優先的に倒してるから、当然“それなり”の強さの討伐は手が回っていない。俺等で抱えきれない分はどこに行くかと言えば、当然1つ下のクイーン級達のところに行く訳で……そりゃ、まあ、忙しいわな…。

 俺だって、本来なら呑気に町をぶらついてる場合じゃねえし…。「そんな時間があるなら魔物討伐して来い」ってギルマスから怒られても文句言えねえ。


「それなら、手短に済ませますんで」


 話の内容的に、手短に済ませられるかどうかは自信がないが…。


「はい! では真希様にお伺いして来ますので、少々お待ちになって下さい」


 2分程玄関先で待たされ、部屋に通される。

 いつもの応接間的な部屋ではなく、今日は真希さんの私室だった。

 凝った調度品等はないが、綺麗に纏まっている女性的な部屋。まあ、でも、部屋が綺麗なのは、真希さんて結構掃除とかしなさそうな人だし、きっとメイドさん達の頑張りだろう。

 その掃除をしなさそうな真希さんの今日の浴衣は紅葉柄。南国風で気候の暖かいこの国じゃ似合わないなぁ…とか思ったが、もしかしたら魔物の討伐に紅葉の似合う国に行っていたのかもしれないな、と考え直す。


「お邪魔します」

「いらっしゃいショタ君。勿論皆もね?」

「「「お邪魔してます」」」「ですの」


 いつもは結んでいる御団子頭が、今日はストレートだ……。なんだろう…? 髪型違うだけでこの人にドキッとしてしまう俺……マジチョロ過ぎる…。

 2人のメイドさんが良い匂いのする食事を運んで来て真希さん座るテーブルに並べて行く。


「話、食事をしながらで良いかな? 今朝方叩き起こされて、ずっと魔物の討伐でバタバタしてたから、まともに食事してなくて」

「全然どーぞ。むしろ、食べ終わるまで待ちましょうか?」


 男同士なら飯食いながらでも気にしないが、女性に食べながら話させると言うのは、マナー的にもエチケット的もアウトじゃなかろうか?


「ショタ君達が気にしないならこのまま話そうか? 仕事に一段落付けて来たって言っても、何時(いつ)また呼び出されるか分からないし」


 相当忙しいらしい。

 俺も亜人達の引越し云々やりながら討伐仕事をしていたから相当忙しかったが、叩き起こされて仕事させられるような事は1度も無い。


「まあ、真希さんが良いなら良いっスよ」

「じゃあ、そんな感じで。イーゼ、皆にお茶を」

「畏まりました」


 真希さんにパンを切って渡していた猫耳っぽい髪型のメイドさんが俺達に向き直る。


「紅茶と緑茶が御座いますが、どちらになさいますか?」

「俺は緑茶で」

「私も緑茶で」

「紅茶をお願いします」

「茶よりも食べ物が欲しい。できればしょっぱい奴」

「お花が有ったら頂きたいですの」


 若干困った顔をしたメイドさんに「最後の2人は紅茶で」と適当に流して貰う。

 メイドさんがティーセットを取りに退室するのを見送ると、真希さんがパンの入ったバスケットをフィリスに渡す。


「フィリスちゃん、お腹空いてるなら食べる?」

「いただこう」


 バスケットごと貰い、モシャモシャし始める。

 遠慮ねえ……マジで遠慮ねえよ。普通バスケットの中のパン1つだけ貰うだろう。もう、なんだろう…流石はウチの暴食(グラトニー)さんとしか言えねえよ。

 が、真希さんは気にした様子もなく、むしろフィリスの食べっぷりが気持ち良いのか、少し笑いながら自分も食を進めている。


「真希さん、忙しそうですね?」

「まあね。でもショタ君もでしょ? どこに行っても噂聞くよ? 新しいキング級の2人は、どんな凶悪な魔物も一瞬で倒してしまう歴代最強の冒険者だって」


 その歴代最強の冒険者2人がかりでも、手も足も出ない敵が現れたとか……若干言いだし辛い…。「その化け物を一緒に倒して下さい」とか更に言いだし辛い。


「特に、<全てを焼き尽くす者(インフィニティブレイズ)>は見た事もない黒い炎を使うって。世界最強談義になったら、最初に名前が上がるのはショタ君だよ?」

「ガゼルが聞いたら怒りそう……」


 アイツも俺も“最強”なんて肩書にさほど興味はないけれど、お互いに「野郎より下は気に喰わん」的な心情があるからねぇ。


「それで、今日は何の御用? もしかして、私と結婚―――」

「違います」「違いますッ!」「有り得ません」「(パンを頬張りながら睨む)」「父様結婚するんですの?」


 毎度のくだりを終わらせて…。


「って言うのは冗談として、もしかしなくてもグレイス共和国と東天王国の話?」

「あ…やっぱその話聞いてます?」

「そりゃあね? コッチもクイーン級ですから。それでなくても、大国2つの戦争なんて大ニュース誰でも注目しますし。東天王国が近々大規模な軍事行動の準備をしてる…なんて噂も有るしさ」

「それ、噂じゃねえっスよ」

「え?」


 キャベツっぽい野菜をパリパリと食べながら、真希さんが首を傾げる。


「昨日、グレイス共和国の東端の港町がやられました」

「え? 本当に? ガゼルが黙ってないだろう?」

「いや、それが…その…色々あって、俺も引っ張り出されて…まあ、結果だけ言えば東天王国が全面的に悪いって事で手打ちになったっぽいです」

「……スピード解決にも程がある。私達の世界じゃ、こんな展開有り得ない」


 ですよね。

 俺等の世界の戦争って、本当にどっちがの国がギリギリ死ぬ寸前までやるし。って言うか、長々相手を削るような物こそ戦争ってもんだろう。パッとやってガッと殴れば終わるなんて、そんなん戦争ちゃうやん? ただの喧嘩やん?

 まあ、コッチの世界でも今回は特別の特別だけど。東天王国が≪無色≫に操られて居たから、奴が離れた事で戦争に乗り気だった連中が正気に戻ったって事だろう。


「戦争の話じゃないとすると、何の話? まさかショタ君が魔物の討伐手伝って……なんて事はないよねぇ?」

「いや、魔物では無いですけど、似たような話です。実は―――」



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