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2-? 蹂躙者達

 巨大な円卓の上に置かれた1本の蝋燭。それがこの部屋の明かりの全てだ。

 小さな灯火は当然部屋全体に行き届かず、円卓の上を辛うじて照らす程度の光量しかない。しかし、そんな薄暗さを気にした様子もなく円卓を囲む数人の男女。

 円卓を指でトントンっと叩きながら、隻眼の優男が口を開く。


「で、皇帝殿はやられてしまったと?」


 肩肘をついて、面倒くさそうに熊のような大男が言う。


「妥当な終わりだな。奴は魔法の始祖の血筋らしいが、力に溺れた。油断と慢心が奴の絶対的な弱点だと何度も教えてやったと言うのに…」

「あの人の話はもう良いよ! 使えない道具が1つ消えた、それだけでしょ? そんな事より、コッチの成果はどうなのさ!?」


 大男の隣に座っていた子供が、癇癪を起こしたように円卓を叩く。


「ひっひっひ、慌てちゃいかんよ。話には順序っちゅーもんがあるんじゃよ」


 子供の対面側の椅子に座っていた老人が楽しそうに返した。


「≪赤≫の封印されていた地下には、もうすでに居なかった……。どっかの誰かが≪継承者≫になって持って行ったみたい……」


 耳の長い亜人……エルフの少女がボソボソと消えそうな声で喋る。


「あらぁん? 誰かってことわぁ、まだ正体が分かってないってことかしらぁん?」


 と反応したのは、薄暗がりの中で、手鏡で自分の顔に見惚れていたピンク色の髪の女。


「頭首が……暫くは放って置いて良いって言った……」

「そうは言うけどぅ、どこの誰かも分からないんじゃ困るじゃなあぃ?」

「ふむ…一理ある。して、お主はどうしたいんじゃ? ん?」

「そっちより、問題なのは勇者の方でしょ!? アンタ達バカなの!? 頭首が今1番気にしてるのはそっちでしょ!?」

「まさしくその通り…」


 子供の意見に賛同するように大男がうんうん、と頷く。


「確かに。で、ルディエに召喚された勇者様はどうだった?」

「…ハズレだった……」

「あ~あ、ほら見た事か!! だから僕はあんな偉そうな自称皇帝なんかに協力するのは反対だって言ったんだ!!」

「………勇者がハズレだったのは………別に皇帝のせいじゃない……と思う……」

「うるっさいな! どっちだって良いんだよ!? 問題は、僕達が協力したのに得る物が何も無かったって事だよ!!」

「一理あるのぅ」

「そうねぇん。裏の手回し、戦力の提供、果ては戦闘に他国に居るクイーン級以上の冒険者が出張って来ないように邪魔したりぃ。全部ぅ、無駄になっちゃったぁって事よねぇ」

「全部というわけでもあるまい? 頭首の望み通りに≪赤≫は次の継承者を見つけ動き出したのだ」

「その≪赤≫だって、どこの誰か分かってないじゃないか!?」


 子供がいい加減苛立ちが頂点に達したのか椅子の上に立ち上がる。

 それを見て、隻眼の男は小さく息を吐き、1度気を落ち着けてから改めて口を開く。


「頭首に従うのが我々の生きる意味ではあるが、皆の意見ももっともだ。先日、中央大陸東部に出向いていた部隊が≪黒≫に狩られた件もある。≪赤≫がコチラの予想以上の力を持っている可能性がある以上、その正体を早急に見極めておく必要があるだろう」


 男の言葉に、円卓を囲んでいた全員が頷く。


「では、具体的にどう探るかだが…。エスぺリア、お前の手駒を使えるか?」

「あらん? 私のご指名かしらん? いくらでも良いわよぅ、今は丁度補充したばかりだだからぁ、アステリア王国を滅ぼせるくらいの手持ちはあるわん」

「それは頼もしい。では、盛大に祝って来てくれ。新しい≪赤≫の誕生を!」


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