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13-18 奴隷の首輪

 カグが、奴隷の首輪に手を触れる。

 一瞬それを嫌がるようにパチンっと静電気のような物が弾けたが、カグは気にした様子もなくジッと首輪を見ている。


「カグ、大丈夫か? なんか、今パチッつったぞ?」

「うん。なんか、外そうとする意思を持った人間が触れると電流を流すトラップみたい」

「……え…? おまっ、それ大丈夫なのか!?」

「大丈夫よ。普通の人なら心停止したかもしれないけど、私【雷撃無効】持ってるし」


 うぉ…流石風と雷のスペシャリストの≪白≫の継承者。カグ以外が不用意に触んなくてよかった……。

 そのまま5秒程首輪に触れながら、ブツブツと独り言を呟く。


「アーク様……あの女、大丈夫でしょうか?」

「大丈夫なんじゃん?」


 無茶はするけど、出来ない事は出来ないってキッパリ言う奴だし。

 カグが手を出したって事は、それなりに自信あっての事だろう。……まあ、元の世界じゃ、それで失敗して俺が尻拭いする事も多々あったけど…。

 今回も、もしかして尻拭い係になるのかと内心ちょっとドキドキしていたが、それは杞憂に終わった。


「あっ、分かった! こうだ!」


 カグが嬉しそうに言うと、触れていた首輪の鍵がカチンッと音を立てて外れて地面に落ちた。


「おおっ、本当にやりやがった!?」「お見事です」「凄いぞカグヤちゃん!」「ふ、ふん! ま、まあ少しは認めてやる」


 解放されたエルフの女性を、同じ奴隷仲間だった皆が涙を流しながら抱きしめる。

 その姿を見て、カグも満足そうに笑う。


「はーい、他の皆さんの首輪も外しますから並んで下さーい」


 カグの指示に従って亜人が並ぶと、順番に首輪に触れて外して行く。

 最初の1人目でコツを掴んだのか、触れれば1秒とかからず首輪が地面に落ちる。


「なあ、カグそれどうやってんの?」


 6人目の首輪を落としたカグに訊いてみた。


「私、【逆回し(リターン)】ってスキル持ってんのよ」

「リターン? 巻き戻し能力?」

「まあ、そんな感じの奴。スキルとか魔法の効果を解析、分解して逆回し(リターン)する事で無効にしちゃえるのよ」

「何それ…? 超強くない?」


 【マジックキャンセル】とか比べ物にならないくらいチートじゃない?


「でもないわよ? 解析と分解にちょっと時間かかるから、パッと出された物を「はい無効!」って出来ないのよ。だから、常駐型の物くらいに対してしか使えない。今みたいに、同じ物を連続で逆回しにするって言うなら、出来ない事もないけどさ」


 言いながら12人目の首輪を地面に落とす。

 うーん、言う程便利な能力じゃねえのか。説明聞く限りだと強そうなのに…。

 カグが首輪を外している間に、自分達を縛る物が無くなった事を喜び合う亜人達に、ガゼルとパンドラを紹介し、鳥籠に入れられていた妖精に白雪を紹介したりした。

 白雪は奴隷だった妖精とわんわん泣きながら抱き合ってお互いに喜んでるのでそっとしておき、ガゼルが竜人(ドラゴノイド)と聞いて再び平伏する亜人達もそっとしておき、所在なさげにしている残りの亜人達に話を聞いてみる。


「ところで、屋敷に居る間に変な噂とか聞いた事ないか?」

「変な噂…ですか? どのような事でしょう?」

「うーん…突然強くなった人間の話とか。ああ、この数日の間でな」


 この後の予定である≪黒≫の追跡の情報集めをする。キング級のお仕事やら、奴隷解放やらで寄り道し過ぎた……。コッチも急がないといけないしな。

 皆が横に首を振る中、白雪と抱き合っていた妖精がパタパタと飛んで来た。

 俺が右手を差し出すと、少し迷ってから遠慮がちに手の平の上に降りて、ペコリと礼儀正しく頭を下げる。


「初めまして≪赤≫の御方。妖精族のシエルと申します」

「ご丁寧にどうも」


 俺も少しだけ頭を下げて返す。

 白雪がシエルの後を追って戻って来て、定位置の俺の肩に腰を下ろす。同族が解放された事が余程嬉しいのか、今までにないくらい喜びの黄色い光を放っている。そして、駄々漏れている思念が鼻歌を歌っている。


「先程のお話ですが、少し心当たりがあります」

「え!? 本当に?」


 正直、屋敷の中で捕らわれてるような状態だったから期待してなかったんだけど……日頃の行いの良さかな?


「屋敷に出入りしていた商人の方が、北の山で魔物に襲われたそうなのですが、その時に奇妙な地形魔法を使う男の方に助けられたそうです。その男の方と言うのが、なんでも黒い流れ星(・・・・・)を拾って突然強くなったと漏らしていたとか」


 黒い流れ星…! そして、奇妙な地形魔法。こりゃ、大当たりだろ……。

 予想通りに≪黒≫が新しい継承者を見つけていた事に、若干気持ちが重くなる。だが、少しだけ安心した事もある。今の≪黒≫の持ち主が、魔物に襲われている人間を助ける程度には善人だと言う事だ。

 そして、人を助けたと言う事は、魔神に意識を食われて居ないって事でもある。……少なくても、その時までは…。

 急ぐか。≪無色≫連中の事もあるけど、新しい≪黒≫の継承者とも出来るなら戦わずに済ませたい。もし仮に暴走前に出会う事が出来れば、何か解決法も有るかもしれないしな。


「ありがとうシエル、とても役に立った」


 お礼を言うと、顔を赤くしながら黄色く光る。……妖精族の感情表現は本当に分かりやすいな…。


「≪赤≫の御方のお役に立てたのなら、これ以上の幸せはありません。それにしても、白雪さんが羨ましいです。≪赤≫の御方から名を頂き、その上そのように仲良くしているなんて……私達にとっては夢のような姿です」


 そうか? つっても、偶々あって意思疎通の為に名前を付けたってだけなんだが…。

 あ…白雪がエヘンっと無い胸を逸らせてふんぞり返ってる。

 まあ、でも、白雪が居てくれて助かった事は多々あるのは本当だけどな?

 力の入らない左手でチョンチョンと顔を(つつ)いてやると、嬉しそうに笑顔を返して来る。……うむ、とっても癒される。

 っと、呑気に癒されてる場合じゃねえよ。

 お辞儀をして仲間達の元へ飛んで行くシエルを見送ると、丁度カグの方も全員の首輪を取り終わった。

 よし、俺等も本来の目的に戻るか!


「おーし、ロボメイド、グラトニー、パワー系幼馴染、ナンパ師の4名集合!」

「はい」「結局ぐらとにーとはどういう意味なのですか?」「パワー系って…別に私パワー系じゃないけど」「ナンパ師じゃない、ただの“凄く”モテる男だ」

「父様っ、(わたくし)は呼んで下さらないんですの!?」

「お前は呼ぶまでもなく肩に居るだろうが…」


 涙目になった白雪を慰めつつ、皆に今しがたシエルに聞いた話を訊かせると…。


「それ、間違いなく≪黒≫よね?」

「まあ、どう考えてもそうだろうな」

「って事は…」「「「「行く」」」」「しかないわよねぇ…」


 その後、フィリスが急いでアルフェイルに転移で戻り、同じように転移魔法を使える者を6人ばかり連れて来た。

 元奴隷の亜人達の事は任せて、俺達はすぐに北の山とやらに向かう事なった。


「どうやって行く?」


 歩いて…は流石に時間がかかるので却下。

 転移は誰も行った事がないので無理。まあ、パンドラが腹ぶち抜かれてた時にフィリスとやった【短距離転移魔法(ハーフポータル)】の連続で進むって方法も有るには有るが、この人数だとフィリスがしんどいのでやっぱり却下。

 結局「じゃあ、飛んでけば良くね?」と言うガゼルの一言で決定した。

 まあ、俺、カグ、ガゼル、あとついでに白雪も自前で飛行能力持ってるしな? パンドラはフィリスに【飛行魔法(フライ)】かけて貰えば良いし。

 空中に上がってしまえば、カグの風力操作で押して貰えば速度も出し放題ですし。


 実際、北の山の小さな村に辿り着くのはとても早かった。

 ……………ただ、飛び心地は死ぬ程悪かった事を付け加えておく…。



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