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10-6 依頼①

 パンドラとフィリスと別れて、ギルドの手配してくれた転移魔法の使い手に連れられて目的の場所に飛ぶ。

 最初に向かったのは、ヘヴェルスと言う山をくり抜いて作られた巨大な空洞の町だった。

 洞窟の町…と言えば狭く聞こえるが、実際は天井まで10m近くある大きな空間だ。

 町中に照明用の魔導器が設置され、洞窟の中であるにも関わらず外と遜色ない明るさだった。これだけの魔導器を点けっぱなしにしていると、魔石の消費量もバカにならないだろうなぁ…。


「ここでのお仕事は?」


 と、横に居る今日は俺専属の転移士のお兄さんに尋ねる。

 他の冒険者と違って、俺に対しても必要以上に畏まる事もなく、怯えるような事もないので付き合いやすい。表情の変化が乏しく、感情が淡白なところがちょっとパンドラと似ていると言うのも一因かもしれない。


「町のあちこちに穴が空いているのが分かりますか?」


 言われて町中を見回して見ると、確かに人がギリギリ落ちそうなくらいの底の見えない穴がそこら中に空いている。

 穴の奥から微かな風が吹いて、フードの中に隠れている白雪が恐がっているのが分かった。「心配ねえよ」と思念を返して、穴を確認したので頷く。


「地下に住む魔物達が、この町を襲っている跡だそうです。この町の冒険者達が何とか討伐しようとしているそうですが、地下に逃げられて未だ結果は出ておらず、これ以上の襲撃は町の被害的にも、洞窟の強度的にも看過出来ない…と言う事で早期解決の為にクイーン級へ依頼されたそうです」


 なるほどね…。

 まあ、叩き潰し方は1つ2つ思いつくけど、何にしてもやるなら騒がしくなる。ギルドと町長だか領主だかにその旨伝えてからだな。


「とりあえず、ギルドに行って話し聞いてみましょう」

「ええ」


 …………


 ………


 ……


 ギルドでの話は簡単に終わった。

 俺がクイーン級である事に驚かれる一連の流れを終わらせてから、ギルドの支部長に「今から討伐します」と伝えると「どうぞどうぞ」と1分もかからずに了承された。ついでに町を管理している領主への報告も頼んだので準備万端。

 この町の冒険者達に協力して貰い、広場から人払いをして戦闘のスペースにする。

 広場を囲むようにして、冒険者達が戦闘モードのまま待機し、その外側に円を作るように住民達が広場の真ん中にポツンと立つ俺を注目している。

 一般人がクイーン級の戦いを見る機会なんてまずないから、偉い注目度である…。


「あの小さいのがクイーン級?」「もっと精悍な者が来るとばかり…」「大丈夫なのか?」「子供じゃないか!」「あれが……<全てを焼き尽くす者(インフィニティブレイズ)>?」「もしかして、偽物じゃないのか…?」


 っつうか、周りから聞こえてくる声が……いや、まあ、この見た目でこの国1番の強者とか言われても、そりゃ信じられんだろうけども…。


「父様、落ち込まないで下さいませ」

「別に落ち込んでねーから…」


 危ないので頭を出していた白雪をフードに押し込めて、作戦を始める。

 まあ、作戦と呼べる程の物でもないけど…。

 地面に手をつく。

 【魔素感知】と【熱感知】を全開にして地中に潜む魔物の姿を追う。本来地面は感知能力でも探り辛い場所なのだが、今回に限っては敵が穴の先に居るのが分かっているのでそこまで難しくない。

 捕まえた。8、9、10…14…いや15かな?

 魔素の濃度で見る限り10匹はビショップ、残り5匹がナイト級かな? 黒か白かの判断まではつかないけど、俺にとっては大差ないので別に良い。

 地中で丸焼きにする事も考えたが、それだと魔石が地下に残って、そのうち復活しちゃうんだよなぁ。

 って訳で、ちょっとだけ方向転換。


「【告死の魔眼(デスゲイズ)】」


 魔神となった証として手元に残った、たった1つのスキル。まあ、別に自分の意思で残したんじゃなくて、他のスキルと違って眼球に直接スキルを付与しちゃったから残ったってだけなんだが…。

 地中に居た8匹の反応が消える。


「チッ…」


 ダメだ、地面の中だと狙いが定まらねえ。本来は視覚で捉えてないと発動出来ないスキルだからな。

 っと、仲間がやられたのに気付いて他の7匹が動き出したか。

 逃がさないように逃げ道を炎で塞ぐ。広場の真下に来るように誘導して…っと。

 ドンっと俺の目の前の地面が弾けて、モグラのような黒いモヤを纏った魔物が飛び出して来た。


「はい1匹」


 手を伸ばして首を掴み、間を置かずに【魔炎】で魔物の体を発火させて、【レッドエレメント】の熱放出で焼き尽くす。

 続く様に、広場に土煙を上げてモグラが飛び出す。


「2匹」


 【空間転移】で地上に出て来たモグラの頭上に飛び、踵落としで頭を蹴り潰す。


「3、4」


 両手の平で炎熱を圧縮して、2匹同時に投げて燃やす。

 爆発の熱が周囲に広がる前に、ヴァーミリオンを少しだけ抜いて熱を吸収させて鞘に戻す。

 足元に魔物の影が見えたので、バックステップで離脱。途端に、今まで足が乗っていた地面を粉砕してドリルが突き上げられた。


「何故、ドリル…?」


 立て続けにドリルが地面から生えて来た。

 ノソっと這い出て来たのは、モグラよりも一回り大きい蝉の幼虫みたいな魔物。その両手は奇妙な形になっていて、手を合わせるとドリルの形になる仕様らしい。

 このドリル腕がナイト級か。

 広場に現れたのは3匹。これで全部だな。

 どうでも良いけど、コッチの世界にドリルなんて文化あんのか…?


「まあ、良いけど―――さっ!!」


 近くの1匹を殴って首を飛ばし、残った2匹は【魔炎】で発火させて、即座に消滅させる。

 3つの魔石が硬く乾いた音を立てて地面に転がる。

 一応念のため、感知能力を使って地面を調べる。魔物の影は……よし、無いな。


「はい、終了」


 パンパンっと手を払って1つ目のお仕事終わり。

 俺の戦闘終了宣言を聞いて、白雪が気を利かせて広場に散らばった魔石をパタパタと飛びながら回収して行く。


「サンキュー白雪」

「えへへ」


 回収の終わった白雪が肩に腰を下ろしたので、労うつもりで指先で軽く頭を撫でてやる。

 一頻り撫でて白雪が満足したところで広場を囲む冒険者と住民に意識を向ける。

 皆無言のまま固まっていた。

 ……え? 何?


「………何この反応…?」


 白雪が雰囲気を怖がってフードの中に引き籠った。

 このままって訳にもいかないよなぁ…。


「えーっと…終わりましたけどー?」


 とりあえず声をかけてみる。

 すると―――…。


「すげええええっ!?」「なんだアレ!? どんな強さだよ!?」「早過ぎて攻撃が見えなかったわよ!?」「強過ぎるだろ!!? 詠唱もせずに自在に炎操ってたぞ!?」「さっきの小さいの…もしかして妖精…?」「あれが<全てを焼き尽くす者(インフィニティブレイズ)>……我が国でたった1人のクイーン級冒険者…!」


 やっべぇ…皆がキラッキラッした目で見て来るんですけど…?

 亜人達相手にこう言うの慣れたつもりで居たけど、やっぱり苦手です。

 もうちょっと注目集めないように戦った方がいいんかなぁ…。いや、それはそれで面倒臭いし、手を抜き過ぎると町や人が危ないしな…?

 さっさとギルドに報告出して次行こう…。

 戦闘自体は問題ないけど、注目されんのは精神的にシンドイなぁ。

 クイーン級の依頼一発目でこんな疲れてて大丈夫かよ俺…。


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