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7-6 森を抜けて

 さて、パンドラの大体の状態が把握出来た。

 暫くは大丈夫……だと思う。ただ、状態が状態なだけにあまりノンビリしてて良いわけじゃないのも頭に留めておく。

 これからの事だが、一先ずソグラス近くにある例の研究所に行ってみるのは決定。何も無い可能性のが多分高いが、今のところアソコ以外に当てがねえからなぁ。

 ダメならダメで、少しでも機械工学に精通した異世界人を探す。……とは言っても、パンドラの体を弄れるくらいの人間となると、宝くじの一等より出会える確立が低い気がする。…だとすると、やっぱり研究所の方で何かしらの収穫が欲しいな。

 まあ、行く前にウダウダ考えてもしょうがない。ともかく行ってみるしかねえ。


 とは言え…だ。

 あんな状態のパンドラを連れ回すの色々マズイだろ…。

 パンドラの身に何が起こるか分からんし、それに―――ソグラスはあのピンク髪とエンカウントした場所だ。

 あの時は、ルディエを始め、アステリア王国の西側の町が一斉に魔物をけしかけられた。…まあ、それは俺をあぶり出す為だったんだが……その件は置いておく。問題なのは、アステリア王国の西側は、連中の警戒網に引っ掛かる可能性が高いって事だ。

 いきなり喧嘩吹っ掛けて来る事はない……と思う、けど…アッチには水野や俺の事を目の敵にしてたカグ…それに俺の偽物が居る。

 いざ戦闘になった時に、意識の無いパンドラを抱えてたら俺もヤバいし、パンドラもヤバい。

 だから、一旦パンドラはここに預けて、俺達だけで行く―――



 ………と言う会話をフィリス達にしたのが30分前の話。

 現在俺達が居るのは、ソグラスとカスラナの間にある大森林の中腹。丁度白雪が俺達に助けを求めに来た辺りだ。

 あー、初めて見た時は虫か何かだと思って、若干ビビったなぁ…。


「父様…!」

「はいはい、ゴメンなさい…」


 まあ、それはともかく…。

 なんでこんな場所に? とは俺も思うが、転移魔法を使えるフィリスが来た事のあるアステリア王国の中での1番西側がこの大森林だった…と言うそれだけの話だ。

 いっその事、俺が1度【魔人化(デモナイズ)】してソグラスまで転移しようかとも思ったのだが、どこに人の目があるか分かったもんじゃないしな? この国の中で魔人の姿見られると洒落にならん。

 まあ、そう言う訳で、仕方なく大森林を歩いて居るのだが……。


「森が広いな……」


 1度歩いてるから知ってたけど、歩いてみると改めて無駄に広い。なんたって、俺等前に遭難しかけたからね? 白雪と出会ったから難を逃れたけどさ。


「父様、頑張って下さいませ!」


 一生懸命応援してくれるのは嬉しいが、肩で座ってるお前は全く疲れないよな…。


「フィリス、お前【短距離転移魔法(ハーフポータル)】使えたよな? それで一気に森の外まで飛ぼうぜ?」


 【長距離転移魔法(ハイポータル)】と違って、行った事のない場所でも10kmだか20kmの範囲内なら自由に飛べる。


「遮蔽物が多すぎて危ないですよ?」

「……え? そうなの?」


 魔法の転移ってそんなに大変な感じなの? 俺【空間転移】する時はあんまり周り確認しなくても飛べるんだけど………あ、でも一応感知能力で無意識に飛ぶ先を“視て”はいるのかな?

 感知能力有ると無いとじゃ、こう言う部分でも差があるのか…。


「仕方ない。俺が頑張るか…」

「父様?」「≪赤≫の御方?」


 このまま歩いて抜けると何日かかるか分かったもんじゃない。

 コッチは腹に穴の開いたパンドラを待たせてるんだ、鈍くさやってる場合じゃねえ!


「だったら、地面じゃなくて森の上…空中に転移したらどうよ?」

「はぁ、確かにそれなら問題はありませんが、転移した途端に落ちますよ?」

「俺が【浮遊】使って抱えるから良いよ」

「か、か、抱える…と言うのは、その……だ、抱きしめる、と言う事ですか…?」

「まあ、形的にはそうなるな?」


 フィリスが俯いて、耳まで赤くなる。

 何その反応…? 照れた? いや、まさかだろ…。この小さい体に……って、ロイド君の体を借りてるくせにこういうのもアレだが…。


「あ、≪赤≫の御方が…そ、そ、それで宜しいのであれば…私は、その…(ゴニョゴニョ)」

「え? 何だって?」


 聞き返した俺の頬っぺたを白雪がぺチンっと叩く。


「何で叩いたし…?」

「父様はもうちょっと女心を学ぶべきですわ!」

「はぁ…?」


 良く分からん。


「問題ないならさっさと行こうぜ?」

「は、は、はいっ!!」


 距離感を測るように、フィリスがジリジリと近寄って来る。

 ……いや、何やってんのか知らんけど早く来てくれ…。

 中々俺の腕の届く所に来てくれないフィリス…。焦れてコッチから近付くと「ヒャッ」と悲鳴のような声を出された。

 ……男として、女性にそう言う声出されると若干凹むよ…。

 まあ良いや。

 フィリスの腕を引いて腰を抱くように手を回し―――


「ぁっ―――…!!」


 なんか、微妙に艶っぽい声を出された気がするけど……女心を学べって言われたばかりだし、これは聞かなかった事にするのが礼儀だろう……多分。

 その忠告をした当の本人を振り落とされないようにフードの中に突っ込み…よし、準備完了。


「じゃ、フィリス。俺が空中に体浮かすから、連続で転移して森抜ける所まで飛んでくれ」

「は、はい! お任せ下さい!」


 腰に回っている俺の手をやたらとチラチラと気にしながら、いつもより若干テンション高めに言う。

 そんなに警戒せんでも変な所触る様な真似せんわい…と思っていたら…。


『父様……なんでそんなにポンコツなんです…?』


 呆れたような白雪の思念が飛んで来た。


「【短距離転移魔法(ハーフポータル)】」


 なんで呆れられたん? と言う疑問を抱きながら、転移によって体がその場から消失する。

 視界がチカッと光って、気付いたら空中に投げだされていた。


「フィリス、捕まってろよ?」


 俺の方で体抑えてるから落ちる事はないが、俺の手だけで空中に浮いている状態になっているから、変に体を痛めるかもしれんし…何より不安定で危ないしね?


『父様! 私の心配はしないのですか!?』


 オメエは何も言わなくたって俺のフードから出て来ないだろうが。


「は、はい!」


 俺の背中に手が回され、恥ずかしいのかオズオズと頼りなくパーカーをギュッと掴む。


「も、も、もう1度転移します!」

「はいよ」


 広大な森を足下に見ながら、2度3度と転移を繰り返す。

 前にパンドラとこの森に入った時は抜けるのに何日かかったっけか…? そんな事をボンヤリと考えている間に5度目の転移が終わり、眼下の森が途切れて平地になっていた。


「っと、終わったな? 下降りるぞ」


 ユックリと高度を落として着地。

 やっぱり地面に足付いてると安心するなぁ。近頃は空中戦する機会も増えたけど、やっぱり人間は地に足をつけてるべきでしょう。

 ……にしても。

 振り返ると、鬱陶しくなるほど広大で巨大な森。


「前はこの大森林抜けるのに、そこそこのレベルの冒険をしたもんだが……」


 こんなアッサリ通過出来てしまって良いんだろうか? と自分でも良く分からない疑問が浮かんで来た。

 いや…勿論良いんだけどさ…?

 それだけ、自分も周りも変化してるって事なのかね…。



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