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5-28 妖精の里帰り?

「ふぁ~あ…」

「マスター、眠いのですか?」

「そりゃぁ…全然寝てませんから……」


 昨夜は、空での翼人達の会話のあとさっさと迎賓館に帰って寝ようと思ったのだが、その途中で突然飛んで来た白雪にタックルをかまされ(白雪が吹っ飛んだ)、その後を追って来たフィリスが何故か涙を流して俺に平伏して、更に騒ぎを聞き付けたエルフや亜人が集まって来て、なんか知らぬ間に魔竜討伐の祝勝会みたいな事になっていた…。

 本当はもっと早くからそう言う事をやるつもりだったらしいが、討伐した俺が眠ったままだったので自重していたそうだ…。まあ、そう言われたら俺も「帰って寝ます」とは言えず、仕方なく付き合った。

 どこから持って来たのか酒樽を囲んでわいのわいの騒ぎ、どうしようもないくらい勝手に亜人達が出来上がって行くのを横目に、俺自身未成年な上に、ロイド君の体で飲酒する訳にも行かず、果実ジュース…と言う名の搾り汁を飲んで過ごした。

 程良い所でさっさと抜け出ようと考えていたのだが、取っ返引っ換え皆が挨拶と謝辞を言いに来るので中々それが叶わず、一段落ついたと思って立ち上がりかけたところでまた白雪が無駄にタックルをかましてきて(白雪が吹っ飛んだ)……どうやら、俺が構ってくれないと拗ねているらしい。だったら最初のタックルは何だよ…お前の方が勝手に居なくなってたんじゃん!?

 まあ、白雪の話はともかく、ベロンベロンになったフィリスに絡まれて「ずっと≪赤≫の御方にお会いしたかった!」だの「是非もう一度御手合わせを!」だの「子を作りましょう!」だの。俺はそっと“昏倒”を付与した炎を手の平に灯してフィリスを眠らせた。どうか起きた時には記憶が飛んでいますように…。


 そんな感じで気付けば陽が昇っていて、流石に体内時計が「寝ろ」と言っているので離席して部屋に戻り、エメラルドに心配されながらパンドラが眠っている横のベッドに入った……のだが、その30分後にパンドラに起こされた…!!


 そして今に至る……。


「もう少し寝ていたいんですけど…?」

「体内時計が狂いますのでダメです」


 言ってはなんだが、グラムシェルドからここに転移した時点で俺の体内時計は狂いっぱなしなんですが…?


「ちょっとだけでも良いんです…」

「ダメです」

「………」

「ダメです」

「………グぅ…スゥ…」

「マスター!」


 いきなり顔をワシっと両手でサンドされた。

 ……ビックリした…今ちょっと意識落ちてたな…。


「マスター、寝たら死ぬと思って下さい」

「雪山かここはっ!?」

 

 両手で俺の顔を持ったままジッとマリンブルーの瞳が俺を見る。


「マスターの健康の為です」

「……だったら好きに寝させてくれ…」


 まあ、健康のためとか言い出したら、そもそも俺には【回帰】のスキルがあるから、寝るだけで全回復だけどな。俺が眠いって言ってるのだって、体が疲れているから眠たいってんじゃなくて、単純に寝足りないってだけだし…。


「話は変わりますが―――」

「普通に話し始めてるけど、その前に俺の顔離そうぜ?」

「はい」


 パンドラが手を離して一歩下がると、部屋の隅で黙って俺達を見守っていたエメラルドがフヨフヨと高度を上げる。部屋の中に虫一匹入れない! くらいの警戒の仕方だ…。

 

「エメラルド、今さらだが…そこまで完全警戒状態で居る必要ないぞ?」

「はっ。お気になさらないで下さい」


 いや、気になるだろ。


「それでマスター」


 コイツは一切気にしていなかったか…。


「この里に居る亜人達ならば、妖精の集落について何か情報を持っているのではないでしょうか?」

「あー、そうだな」


 白雪が居る事がスッカリ当たり前になってたけど、俺等がアイツを連れ回してるのは、迷子になってたアイツを仲間の所に送り届ける為だ。白雪があんまり仲間の所に戻りたいって態度を見せないから、ついつい後回しにしちまってたな…。


「亜人同士は繋がり有るみたいだし、聞いてみるか? もしかしたら、フィリス辺りが転移で連れてってくれるかもしれないし」

「里に行けたと仮定して、白雪が里に戻った後は荷物の管理は如何しましょう?」

「あーっ、そっか! それがあったか…」


 旅の荷物は全部白雪のポケットの中に入れてある。

 俺とパンドラ、2人分合わせれば50kgくらいは有る。量的にも結構バカにならないし…何より白雪のポケットの中って食材の保存が利くんだよなあ。

 荷物は分担して持てば良いが、食材はなぁ……干し肉と乾燥パンと、ドライフルーツに頼るしかないか…。水気含んだ物は足早いから、怖くて持ち歩けねえ…。


「………まあ、そん時になってから考えよう…」

「はい」

「ご心配には及びません。主様や供周りのパンドラ殿に荷物持ちなどさせられませんので、その時は我等をお呼び下さい」


 エメラルドがペコリとお辞儀をする。


「気ぃ使わせて悪いな。でも、有り難くその時は当てにさせて貰うわ」

「はい、是非に」


 その時、ドアが控えめにノックされる。

 誰だ? 昨夜~今朝方の祝勝会に参加してなかった亜人達が挨拶に来た…とかだったら面倒臭いな…。


「マスター出ますか?」

「居留守使う訳にもいかんしなぁ…。開いてますよ」


 扉が開くや否や、光る球が飛んで来て俺の顔にタックルして来た…そして当たり負けて光る球が吹っ飛んだ…。

 お前何がしたいんだ白雪…?

 一応床に落ちる前にキャッチする。


「お、おはようございます…」


 白雪に続くように、青い顔をしたフィリスがノソリと入って来る。


「死ぬほど顔色悪いぞ…大丈夫か?」

「は、はい…。少々酒の神の機嫌を損ねてしまったようで…」


 顔色が悪く、頭を押さえるその姿は―――二日酔いだな!!

 それ、酒の神の機嫌云々じゃねえよ! 自業自得だよ!?


「帰って休んでろよ…」

「い、いえ…私が≪赤≫の御方をお連れしたのですから、私が御世話をしなければ失礼にあたります」


 今、御世話を必要としてるのはお前の方だと思うんだが…。


「……時に聞きたいんだが? フィリス、お前さぁ……その…子供欲しいとか思った事あるか?」

「なっ、ええっ!? こ、こど―――そ、そんな事考えた事もありません!!」

「そうか」

 

 はぁー良かった! 昨日のアレは酔った勢いで言っただけだったか…。まあ、流石に「子供作りたい」とか本気な訳ねーわな。


「んで、もう1つ聞きたいんだが、妖精の集落か里だかの場所知ってたりしないか? もしくは、連絡の手段があるとかでも良いんだが?」


 手の平の上でノビていた白雪が“妖精”の単語に反応してピョコンっと起き上がる。


「ええ、はい。妖精族とは共に森に住む種族として良好な関係ですので、連絡は勿論、妖精の里へも行き来していますよ?」

「あ、そんなに仲良いの? それにしちゃ、今回の騒ぎに妖精族が1人も居なかったよな?」

「白雪さんを連れているのであれば知っているかもしれませんが、妖精族はそもそも戦闘能力がありませんから…」


 戦えないのを連れて来てもしょうがないから今回は欠席な訳ね…。


「あ…でも―――」

「でも?」

「暫くはこの森と里に近付くのは危険だから、と連絡を取ろうとしたのですが……」

「繋がらなかったん?」

「いえ……伝える事は出来たのですが…どうにも様子がおかしかったように思えて」


 どうおかしかったのかは言葉に出来ないようだが、俺等よりよっぽど妖精族との繋がりが深いエルフのフィリスがそう言うのなら、何かがおかしかったのだろう。


「それに、戦いが終わった事を伝えようとしたのですが、どうにも反応が無くて……傷付いた森の再生の事で協力して欲しかったのですが…」


 何やら妖精の里でも問題が起きてる…とか?


「妖精の里には行けるんだろ?」

「ええ、はい。大陸を渡らなければならないので、実際に行くのなら転移魔法で、ですが」

「だったら直接行ってみないか? 俺等も白雪を仲間の元に届けに行きたいし。もし妖精達に何か問題が起こってるなら、俺達で解決してやれるかもしれんしな?」

「っ!? さ、流石です≪赤≫の御方!! それでこそ我等亜人の守護者様です!」


 別にそんな大層な気持ちで行く訳じゃねーけどな…。

 助けれるんなら助けるって、その程度の意識だよ。


「マスター。今の時点ですでにアウトですが、国外に出るのなら1度ギルドに報告しに戻った方が良いのでは?」

「あ~…そう言えば国を離れる時には報告しろって言われてたような…言われてないような…」

「言われていました」

「……はい。ッつー訳で悪い…。1度グラムシェルドに寄ってくれ!」

「は、はぁ…」



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