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おにいちゃん 2  作者: サシェ
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LINE



 早朝、朝食を食べてすぐに駅へ向かった。


 夕べはあまり眠れなかった。気分が重いがこれから家出人探しをしなくてはいけないのだ。

 仕事モードに頭を切り替える。

 新幹線に乗り込み座席に着いてから、もう、何度目かの携帯電話を見ると、LINEが入っていた。


「あっ」


 飛びつくようにLINEを開くと、翠から『昨日はごめんなさい』という内容のLINEが入っていた。


 鷹也は寝不足の気分が吹っ飛び、急に生き生きとした顔つきになると、思わずでれーっとしてしまった。

 翠の奴、可愛いな、と改めて思う。

 末尾には、大好きだからねと文章もあり、そばにいられたらいいのにと強く思った。

 LINEの返事をしてから『自分こそ黙って家を出てごめん』と謝った。


 きっと、翠は寂しかったのだ。自分と同じ気持ちでいてくれていると信じて、鷹也はうれしい気持ちと抱きしめてあげられないもどかしい気持ちに駆られた。



 新幹線はあっという間に目的地について、まずはホテルに行き、荷物だけ預けてホテルを出た。


「さて」


 鷹也は空を見上げた。


 快晴である。


 季節は十月。だいぶ涼しくなった。雨が降る気配もない。鷹也はスマホを出すと、これから待ち合わせをする喫茶店の場所を入力した。


 対象者と友人女性が、これから対象者と喫茶店で会って話をするのだ。


 友人女性の協力を得て、これから会うのが、対象者本人であることの確認。

 そして、住んでいる場所、仕事先、交友関係などを調査するつもりだった。

 探偵事務所から対象者の交友関係に連絡を取った際に、友人女性が県外で対象者を見たと言う目撃から発展し、強力な情報を得ることができた。


 友人女性は、対象者と連絡を取っており、今の状態を快く思っていないようで、誰かに相談したいと思っていたという。

 友人の方から捜査を手伝ってくれると言い、喫茶店で会うことを決めた。

 友人は対象者に真実を伝えたがったが、万が一、消えてしまうといけないため、極秘ですることになっている。



 指定の喫茶店にたどり着き、中に入った。全体が見渡せる場所を陣取り、早めの昼食を頼む。ナポリタンをあっという間に平らげると、ホットコーヒーを注文した。スマホを取り出し見るふりをする。約束の時間まで少しあったが、入口が開いて見覚えのある女性が入って来た。

 対象者の友人女性だ。

 自分の顔は知られていないが、友人は店内をぐるりと見渡しただけで席についた。それからすぐに女性が入って来た。鷹也は、それが対象者本人であることを確認した。


 二人が和気あいあいと話しだす。鷹也はある程度、コーヒーを味わうと、スマホをしまって立ち上がった。二人の横を素通りして、外へ出る。友人女性はこちらを見なかった。

 外へ出て、三軒隣の喫茶店に入った。アイスコーヒーを頼み、今度は対象者たちが出てきた時にすぐ分かるように窓際に座った。スマホをいじったりしながら時間をつぶす。ようやく一時間ほど過ぎて二人が出てきた。別々の方角へ別れる。


 鷹也は清算をすませて対象者を尾行した。まっすぐ家に帰るのか、ためらいもなく歩いている。十分ほど歩くとマンションが見えてきた。中へ入るのを確認する。住まいを確認し、会社に連絡を入れた。

 その後も見張りを続け、夜、チェックインするためにホテルへ戻った。

 慣れているとはいえ、骨の折れる仕事だ。誰にも目立たないように外で見張ることも多い。今回は車を使用していないので、さらに身にこたえた。



 部屋に戻り、熱いシャワーを浴びた。


 翠の声が聞きたい。


 報告書をまとめる前にスマホを手に取った。LINEが入ってる。急いで開いて見る。

『部活に入りました』と書いてある。


「は?」


 わけが分からず文章を見ると、柔道部に入った、とある。


「柔道…?」


 すぐにでも連絡したかったが、あまり干渉しすぎるのもよくないと思いなおし、頑張れよ、とだけ返事をした。それから返事が来ない。


 鷹也はため息をついて、横になった。


 一人で眠る夜はむなしい。


 翠が何を考えているのか、さっぱり分からない。それに、明日も早い。


 鷹也はそのまますぐに眠りについた。




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