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1月7日、8日

 2日後、日本官邸内にて会議が行われていた。先日光が各国に発表した案、それの発表する時期などを話し合うためだ。


「しかし、一夫多妻、多夫一婦……総理、念を押しますがこれは強制ではないのですね?」


 大臣から上がってきた声に、光は頷く。


「むろんだ、これを強要すればどんな騒ぎや反発が起きるか分かった物では無い。あくまで意気投合できたら、の話となる。そこは誤解されないように発表する時も念を押す。しかし、あちらはあちらでこの点の解決を急ぎたいのも無理はない。人口が少なすぎれば国を保てないからな。正直、ぎりぎりまで追い詰められているからこそ、異世界に居た我々に接触してきたわけだからな。こちらもそれなりの行動を見せねばなるまい。先に力を借りた以上は尚更な」


 地球に居た頃の日本ではどうしようもなかった問題が、1年かからずに解決してしまったのはこの世界に存在する3国の協力のおかげであることは言うまでもない。それだけの支援を受けた以上、こちらも相応のお返しをせねば問題が起きる。貰うだけ貰って、後は知らんぷりなんて事をすれば溝が生まれ、不和を呼び、争いにつながる。


「まあ、大丈夫でしょう。一夫多妻などを強要するわけではありませんし、すでに各国の人々の一部と親しくしている国民の存在も確認されております。この法案でそれを後押しし、経済支援を行えば問題はないかと。各国とも、無理な要求でなければ呑むと言っているんですよね?」


 また別の大臣の言葉に再び頷く光。


「ああ、そこは言質を取っている。ま、そう固く考えずともこの問題を解決できるなら積極的に動いてくれるだろう。ある程度の資金を失っても、人口が減る一方だという問題を解決できれば他の3国共に得る物の方が大きい。だから、よっぽど愚かな要求を並べない限りは問題ない」


 光の言葉に頷きあう大臣達。そして話はあっという間に進められ、纏まる。ここまで早く進んだのは支援金の問題がない事もあるが、もしここでもたもたして他の3国を待たせれば、日本皇国は協力しないのではないか? 等の妙な疑いの視線を向けられるかもしれないと考えられたからでもある。


「よし、では明日午前10時にこれらを国民に発表する。異論はないな?」


 全大臣が頷く。こうして翌日、日本全土に期間限定での一夫多妻、多夫一婦を認めるという発表が行われる準備は整った。




『──という事でありまして、これより10年の間、一夫多妻、多夫一婦を認めるという法律の成立を国民の皆様に発表させていただきました。むろん、これは国民の皆様に強要する物ではありません。そこはお間違えなき様に願いします。あくまで一緒にいたい、子供を育てて行きたいという意思を持って共に生きていく人への支援が目的であります』


 翌日午前10時、予定通りに光が総理官邸から直接テレビやラジオの媒体を通じて国民に発表。もちろん官邸のHPも更新して見れるようにしてある。


『内容で察して頂けた方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまでこれはマルファーレンス帝国、フォースハイム連合国、フリージスティ王国出身の方々との間柄に限ります。日本人同士の間柄では、今後も一夫一妻であることをお間違えなさらぬようお気を付けください』


 あくまで今回の新法である一夫多妻と多夫一婦は、新しく同胞となった3国の人々との間に限る事を念押ししておく光。これは3国の人口を増やすためなのだから、日本人同士でやっても意味がない。


『この法は、一定の人口増加と血の安定が確認された時点で廃案となります。状況によっては廃案になる事が早くなったり遅くなったりすることもご理解ください。特殊な新法ではありますが、新しい同胞の未来を護るための法案ですので一般的な法律とは全く違う物となっております』


 最初こそざわついたが、各国の置かれている情勢なんてものはたった数日でもある程度国民に伝わるものだ。それも、3国が隠していないからなのだが……特に血の濃度が上がりすぎて子孫が残せない問題は隠す理由がない。むしろ同情を引いて、どんどん日本人の皆さんが私達と子孫を作って欲しいとすら考えている。むろん際限なくだらしない行動を取られるのは困るが。


『以上、特殊な新法の成立ですので、現総理大臣であるわたくしが発表させていただきました。この新法はこの発表をもって開始となります。それでは──すみません、ちょっと質問がいくつかやってきているようですね……はい、応えられるものは答えておくことにいたします』


 官邸HPにはメールが殺到していた。まあ、こんな新法が成立して施行されたのだから無理もない話ではある。なので、機械的にざっと仕分けして、この場で答えられそうなものは答えるという形に光は急遽変更した。


『まずは、こちらですね。おっと、すでに結婚を見据えてフリージスティ王国の方とのお付き合いをなさっていると。それで、この法案で日本人とも結婚しないといけないのかという質問ですね。ハイ、お応えしましょう。その必要はありません。


 もう一度申し上げますが、この法案は一夫多妻、多夫一婦を強要する事は決してありません。また、日本人と絶対に結婚しなければいけないという決まりもありません。ですから心置きなく結婚を見据えられている方とゴールインして頂き、幸せな家庭を築いて頂ければこちらとしても喜ばしい事です』


 ──もちろん、こういう人達も少数ではあるが存在している。すでににゃんにゃん済みだという方々もさらに極少数だが存在する。が、別に悪い事をやっているどころかいろんな意味で助かるから積極的にやっていいよという雰囲気となっているが。


『次はこちらですか。マルファーレンス王国とフォースハイム連合国の異性と仲良くなったのですが、別に国が違う人達と一緒になっても構いませんか? という事ですね。ハイ、これも問題はありません。ただし、ちゃんと異性同士とも話し合って頂き、共に歩きましょうと言う風に纏まってからにしてくださいね? 不和のまま結婚してあとから問題が続々噴出なんて事になってしまったら貴方が大変な事になってしまいますので。こちらも動かなくちゃならないですから、そうならないようにしてくださいね』


 この光の発言に、国民は「まあそうだよな」とか「異性同士の仲が悪いまま一夫多妻とか多夫一婦やるのは揉めるだけだろ」と同意する意見がメイン。各自のインターネット上のやり取りでもものすごい速度で書き込みが行われており、仕事が手につかなくなってる人の多さがうかがえている。


『またまだ質問は飛んできているのですが、申し訳ありません。私はまた他の国に飛ばなければならない予定が入っていますので、ここで直接私が答える時間は終わらせていただきたいと思います。多かった質問は官邸専用のHPにてQ&A方式で上げていきますので、そちらを見ていただけると助かります』


 もう少し続けたかったが、この後も予定は満載である。先ほどの質問返答は猶予時間を使っただけに過ぎない。ただ、先の二件は多くの質問が飛んできそうだったので時間を削ってでも対応したのだ。


「ヒカル様、申し訳ありません。そろそろよろしいでしょうか?」


 待機していたフルーレに光は頷く。この後はマルファーレンス王国に飛び、神々の試練をどう対抗するのかの話し合いが行われる。とりあえず今は大まかな流れを話し合う予定で、細かく詰めていくのはまだ少し先となる。


「待たせて済まなかった、フルーレ将軍。では移動を頼む」


 そうフルーレに伝える光の右腕には荷物があった。より厳密に言えば、日本酒入りの大瓶が2本。頑丈な紐でがっちりと固定されている。手土産という体で宣伝を兼ねた一品である。


「ええ、お任せください。それでは参りますよ」


 フルーレの手に魔法が起動し、二人はあっという間に官邸から姿を消した。そして数秒後、二人はマルファーレンス王国のガリウスの邸宅内へと移動。今日はこの後ガリウスが用意していた服……という名の鎧を光は着込み、マルファーレンス側と会議をする予定だ。なお、着替えるのは『郷に入らば郷に従え』の言葉通り、マルファーレンスの考えに則るためである。


「こちらは私の国の酒です、今夜の晩餐会にて飲みましょう」「おお、ヒカル殿、これはありがたい」


 酒が渡されたことで、ガリウスは満面の笑みである。夜が待ち遠しくて仕方がないという事を隠すそぶりすら見せずに喜んだ。そんな父親の姿を見て額を抑えるフルーレ。そんな一幕があったが、フルーレの案内の元、光はマルファーレンスの会議場に再び立つこととなった。

じっとりとした暑さが襲い掛かってくる。椎名ほわほわはその熱さにやられてサヨナラ!


何て事にならないよう、きちんと睡眠と休息はとっていこうと思います。皆様もお気を付けを。

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