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11月19日

何とか今週も更新できました。

 その後異世界チームが乗る機体の方に問題が起きたという悪い報告が入ってくることもなく……やるべき仕事も早めに終わったこの日、光は安楽椅子に身を沈めて青空を眺めていた。何かを考える事もなく、ただただ綺麗な青空を眺める。忙しい日々が続くことが多い光にとっては、最高の贅沢一つに挙げられる行為である。


 そのまま約20分ほどのんびりとしていた光であったが、近寄ってくる足音に気が付いて安楽椅子から体を起こして足音の主を確認する。今回は、異世界側の研究を担当している魔導士の女性だ。


「光様、お休みの所失礼します。以前光様から受けた注文である5つの防御魔法陣の完成が間近となっております。今は最終調整の真っ最中でして、あと数日もすれば完成となります。そのため、陣に調整を加えられるのは本日と明日のみとなりますので……陣に組み込んだ内容の最終確認をお願いすべく、参上させていただきました」


 こんな時代であっても、世界にばれないようにする範疇ではあったが日本を密かに支援してくれた5つの国に置いていく最後の恩返しである防御魔法陣、それが遂に完成するのかと光はホッとする。12月に入れば忙しくなることは間違いないので、できる限り11月中に何とかしたかった一件だったのだ。あと数日で完成するという事で、どう転んでも12月に入ることはない。その事実に光は安堵したのだ。


「そうか、ありがたい。では最終確認をさせてもらおう。リストを貰えるかな?」「はい、こちらとなっております」


 魔導士の女性から受け取ったリストに目を通していく光。特に大事な核の無力化、人間が出入りできないシャットアウト機能、太陽光などの有益なものは通過させる設定、そして500年は維持できる耐久性。そういった絶対外せない内容から、細かい部分もチェックしていく。


「ふむ、問題はなさそうだな。防壁を張ったはいいが、中にいる人たちが作物を生産できずに飢え死になんて事になってしまったら、恩返しどころか虐殺者になってしまう」「その点は特に気を使っております。土壌の安定を始めとして、食物の確保がしやすいように天候の安定も加えさせていただいております」


 出入りが出来なくなる以上、不作だったら他国との輸入・輸出でやり取りするという手段が取れない。だからこそ極端に飢えぬようにするための対策が重要になるのは言うまでもないことだ。そういった部分の設定も問題なく組み込まれていることを確認し、問題はないと光は判断した。


「こちらから言う事は特になかったな。後は陣が完成したら、届けてもらうために隠密行動と長距離移動が得意な者に動いてもらう事になるがそちらは大丈夫か?」


 光の確認に、魔導士の女性も静かに頷きを返す。


「はい、そちらの方も選出は終わっております。数回の事前練習も無事に終えておりますので、渡すことに失敗するという可能性は皆無であると考えていただいて結構です」


 こればかりは異世界組に頼るほかない……何かの乗り物を使えば足が付く。足が付けばその国に面倒をかける。だからこそ、テレポートという地球から見ればいろんな法則を無視して長距離を一瞬で特定の乗り物等を使わずに移動できる手段を持っている異世界側の人に頼むのだ。これならばそう簡単に足はつかない。


「今の地球は、魔法関連に対する知識はファンタジーだという言葉で片付けているレベルだからな……まあ、こちらもあなた方がこうして日本にやってきてくれなければ同じ意見だったろうが。だからこそ、足が一番つきにくいあなた方が頼りとなる。担当する者達にも、よろしく言っておいて欲しい」


 今の日本の持っている技術では、『一瞬で他国に知られずに目的地まで物資を運ぶことが出来る』力はない。ゆえに今回は異世界の魔法に頼り切りとなるが……その代わり、二年後に落ちてくる隕石を迎撃して被害を大きく減らすことで返礼とすれば良い。そう光は割り切っている。出来る人々に頼らずに出来ないことまで無理に自分達だけでやろうとするのは、ろくなことにならないという事は嫌と言うほど歴史で学んだ。


「こちらとしても、我らの未来を切り開く可能性を持った日本の皆様を密かに助けていた国々への返礼と言う形で今回の一件は考えておりますので、光様もあまり気に病まれぬようにお願いいたします。こちらとしてもやる意義がある事ですので」


 その一言と共に、魔導士の女性は部屋から退出していった。この防御魔法陣の一件が終われば、いよいよ戦争に向けた備えを整えるだけという状況に入っていく。支援はある、勝ち目も十分にある。それでも恐怖は消えることはない。どんな物事でもやってみなければわからないのだから、光がこのような恐怖心を持つことを心が弱いと断じることは出来ないだろう。


「思いつめた表情ですわね」


 と、そんな時光の耳に女性の声が入ってきた。先ほどの魔導士のものではない──いつの前にか、目の前には小さな二人の女性、と言うよりは身長からフィギュアの女の子と言った方が適切なサイズの子が二人。この二人は、日本に特殊な体をもって帰還した戦艦長門と戦艦大和の分霊ともいうべき存在だ。


「久しぶり、光総理!」


 ボーイッシュな大和の分霊が手を挙げながら挨拶してきたので、光も微笑みながら挨拶を返す。


「そういえば、こうした二人を見るのも久しぶりだな。戦艦長門、大和ともども色々な新機能が追加されているという報告はこちらでも受け取っているぞ」


 二隻とも前門の大きな砲塔はそのままだが、後部が変わっている。後部にあった砲塔を無くし、神威・弍式がテレポートして出撃できる転移専用の魔法陣が張られた。出撃するだけでなく、転移して一瞬で基地まで帰還も可能となっている。さらに戦艦側部にマギ・ミサイル発射砲塔が追加されている。これは12月の戦争だけではなく、異世界に渡った後に隕石を撃ち落とすことも見据えた装備となっている。


「どういう装備が付くのかは分霊であるわらわも確認せねばならぬことじゃったからの、久しく総理の前には姿を出せなんだ。しかし、先日ようやくすべての改修も終わったからの、今後はちょくちょく顔を出せるぞ。すごいぞ、かつての戦いではできなかったあんなことやこんなことも、今の戦艦長門と大和は可能となったのじゃ。我らに力を託して天に上った武蔵を始めとした者達の分まで戦えよう」


 長門の分霊がかわいらしい両手に握り拳を作りながら、誇らしく報告する。この様子に光も「そうか、それは期待できるな」と頷きながら返答する。


「長門、総理なら教えていいよな? どうせ後で報告が入るんだろうし。総理、今度の長門と大和はすごいぜ? 何せ空を飛び、星々の世界にまで繰り出せるようになったんだ! 神威達の出入りする駅の役目も果たせるようになったからな、俺たちが戦端を切り開いて、良い場所に着たら自衛隊の乗る神威を出撃させるなんて戦法もとれるぜ!」


 大和の分霊の言葉に、光は驚きを交える。そうか、長門と大和が空を飛ぶのか……そういえばそんなアニメが昔にあったななんてことを思い出す。名作の一つに挙げられる大がかりなアニメだったなと。そして、そのアニメを作った人達が、天から新しい長門と大和を見て、いい意味で驚いてくれるといいなとも思った。


「もちろん飛ぶのはとっておきにするのだろう? 最初から飛ぶより、戦闘中に見せたほうがインパクトがでかい」


 ややいたずらっ子のような表情を浮かべながら問いかける光の言葉に、長門と大和の分霊は頷く。


「ええ、もちろんです。いきなりとっておきの一つを見せるなんてはしたないですから。むろん、見せずに終わっても構いませんわ。見せるに値しない相手に見せるほどわらわの体は安い物ではありませんし」


 これまたいたずらっ子のような微笑みを浮かべながら返答する長門。その横でうんうんと頷いている大和。


「私達もいるのです。負けるかもしれないなんて考えはお捨てになって、その先の事を総理は考えていればよろしいのです。総理の仕事を少しでも減らせるように、今の世に蘇ることが出来た恩義に報いるために、時が来た時には大暴れして差し上げますから」


 そうだな、こんな頼もしい味方が私の近くにはたくさんいるのだ。長門の言う通り、ここであれこれ悪いことを考えていても仕方ないのだ。気合を入れなおして、恐怖を克服しよう。そんな風に考えを変えていく光の表情見て、長門と大和の分霊は満足げに微笑む。そんな交流をしながら、光は徐々に近づいてくる決戦予定日に向かって突き進む。

徐々に決戦が迫ってきています。そこまで進んだら、

隔週更新よりペースを上げないと皆様をやきもきさせてしまうかもしれませんね。


一年以上待たせたくせになに言っているんだ、と言われると辛いのですが(苦笑)。

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