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11月3日(他国の視点

9月にまた忙しくなることがほぼ確定……

ならば、今のうちに一つでも多くの更新を進めるまでよ!

 某国のトップ執務室にて


「──との事で、4倍出力ならば1週間ほど。7倍まで上げれば3日。それ以上の出力にすれば数時間で限界を迎えますと技術班からの報告が上がってきました」


 部下からの報告に、そうかとつぶやく某国のトップ。この某国は、以前西村が駆るKAMUIによって連合艦隊を潰された国の一つである。


「少ない時間でよくやったと言っておいてやれ。残り少ない装備を使いつぶすことになってしまうが、盾は護れてこそ盾と言える。今回は無理と無茶をしてそこまでの防御力を得たのだ、その反動で耐久性が落ちるのは仕方あるまい……だが、これで日本側が誇る謎兵器の攻撃を受けても即死することはないだろう。後は各国にやり方を伝えてやれ。これで日本の開幕先制攻撃で艦隊がことごとく沈み、連合側がいきなりの総崩れになる様な事はなかろう」


 当初はあの艦隊が一時間足らずですべて沈んだのは、あの艦隊を編成するのに関わっていない国際連合の常任理事国のどこかが横やりを入れたものだと思われていた。しかし調査を続けるうちに、どの国も何ら軍事行動を起こしていなかったことが判明する。さらに調査を続けて消去法で潰していった結果……艦隊を潰す行動をとる理由と行動する事が可能だった国は日本だけだったのだ。


「当時の艦隊が沈んだ件は、日本側が新兵器の実験と複数の国からなっていた連合艦隊が消えることによる各国の不和を招く為にやった事だと判明しましたからな……閣下が疑問を感じて調査を命じていなければいまだに国家間で仲たがいを続けしまい、日本の狙い通りの展開を迎えていたかもしれません」


 部下の言葉に、閣下と呼ばれたこの国のトップはゆっくりと頷く。一応言っておくと、日本側は各国の不和を狙ったわけではなかったのだが……結果的に不和を一時的に招くことが出来た事で、時間を稼げた。このことは日本側にとって意図しなかった幸運であったと言えるのかもしれない。


「窮鼠猫を噛む、という言葉もある。今の日本はまさに追い詰められたネズミではあるが、だからこそ何をしてくるかわからない面がある。ほかの国の連中は日本など年末に各国がまとまって叩き潰せば一瞬で終わるなどと豪語しているが、我らはそんな言葉に乗るつもりはない。あの国を甘く見るな、油断をすればネズミの歯でこちらの喉笛を引きちぎられるかもしれんからな。ほかの奴らにもそのあたりは徹底しろ、油断をすればどうなるかわからんと」


 トップの言葉に部下の一人が敬礼し、今の言葉を軍全体に言葉を伝えるために部屋から出て行った。


「しかし閣下。こちらが油断せず包囲を固めて確実に一歩一歩押し込めば日本側の勝ち目など万に1つもないでしょう? 戦いは数です。そして世界VS日本という構図になります。物資が乏しい日本側は、開戦直後に最大火力を撃ってこちらの数を減らすことが出来ねば数の差でどうしようもありません。しかしこちらは先ほどの報告に上がった出力増大版の防御装置でその最大火力を防げば、あとは一方的にこちらが嬲るだけになるのでは?」


 トップはその部下の言葉に「まあ、その見方は間違ってはいない」と前置きをしてからさらに口を開く。


「お前の考えと私の考えはそう大きく外れてはいない。確かに戦争とは数だ。どんなに最初の勢いがあったとしても、最終的には数の少ない方が負ける。これが大規模戦争の基本だな。歴史を見ても、数の少ない方が数の多い方に勝ったことは基本的にない。むろん、昔のスパルタのように少人数でありながら大群を相手に粘った例はある。だが、基本的には数が多い方が戦争では勝っている」


 ここで一度飲み物に手を伸ばし、喉を湿らせるトップ。一息はいた後に再び口を開く。


「しかし、だ。基本的に負けているという事はだ、少数が大軍を相手に予想以上の大打撃を与えたり勝っている例もまた存在することを示している。もし年末の戦いでこちらが勝ったとしても、全体の七割を超える被害なんぞ万が一でも出してみろ。日本人の心は折れぬぞ?


 あの国の人間はとにかく苦境に耐える事が得意だ。あの国の人間に対して、希望を砂の一粒でも残せばまた千年耐えた後に戦う事になりかねん。だからこそ今回の戦いはこちらが圧勝せねばならん、そうしてもう絶対に日本は世界に勝てぬのだとその心に理解させて念入りに心を折っておかねばならん。そうしなければあの国の人間は従順になどならん。違うか?」


 そう言いながら、トップは部下たちの顔をゆっくりと眺める。部下たちもトップの話を聞いて、なるほどと納得する表情を浮かべたり、そうでなければならないと再確認するような表情を浮かべる。


「閣下のお言葉、良く解りました。浅慮をした我が身を恥じる思いであります! 日本と戦うときは、戦いが終わるまで一切の油断をせずに戦い抜くことを誓います!」


 先の発言をした部下が敬礼を取りながらそう宣言すると、トップも笑みを浮かべる。


「そうだ、それでいい。何度も言うが、あの艦隊を一時間足らずで殲滅する何らかの力を持った連中だ。油断すればどんな手を打ってくるか読めん。数の差はこちらが圧倒的に有利だが、それでもどうなるかは分からん。忘れるなよ、今回の勝利とは『日本人どもの心を折って永久の奴隷にする事』だという事をな」


 トップの言葉に、部下たちが全員敬礼を取る。そしてこれで報告を兼ねた会議も終了し、トップを残して部下たちはみな部屋を出てさっそく行動に移っていく。そうして残ったトップは、心の中であれこれとこの先の事を考える。


(打てる手は打った、フィールド装置を短期間で使いつぶしてしまうリスクを負ってまで防御を固めた。これで日本側の攻撃は無力化できるようになったはずだ。あとは数の暴力で確実に日本側の戦力をむしり取っていけば、この戦争に負けることはない。しかし、しかしだ。あの艦隊を一時間足らずで殲滅して見せた日本側の兵器の正体がわからぬ。一度、鉄を集めるためにサルベージを行っていた船を襲った鉄の巨人がいたが──)


 ここまで考えて、首を振るトップ。


(いや、あんなのが短期間で量産できるはずがない。もしできたとしてせいぜい数機だろう。そして数機では日本を護れるほどの防御陣を敷くことは出来ぬし、こちら側の雨に等しいミサイルに耐え抜くこともできぬはずだ。やはり核とはまた別の強力な広範囲を破壊するミサイルのような物を撃ちこんで艦隊を殲滅したと考えるべきだろうな。あんなロボット兵器を数機作るよりも、その方がよっぽど手っ取り早い)


 そして、その鉄の巨人が姿を見せたときのことを思い出す。


(そういえばあの時、オカルトじみたことがあった……世界中の船から『船の亡霊が日本方面に向かった』と一斉に報告が上がった。その報告と同時に上がったのはサルベージの目標が姿を消した……だったか? あの時は何が起きているのかと論争が巻き起こったが。とにかく、あの国にはまだ何かがある。こちらの知らない何かが。そんな国に『余裕だ』と言える他の国の首脳は状況を甘く見すぎている)


 考えるほどに、その顔と背中にじっとりと冷たい汗が浮かび上がってくる。その汗の不快感がさらなる不安をトップに掻き立てる。


(我ら国際連合側は何かを見落としているのではないか? そもそも、今年の2月から始まった日本における一連の流れからおかしいことは山ほどあった。しかも、あの国の首相であるヒカル・トウドウの覚悟の決まり方は普通ではなかった。


 最後に顔を出したあの時、ビームガンを向けられながらもああも一人の人間が恐怖に打ち勝って言い切れるものか? そして威圧感だけでビームガンのトリガーを引かせない重圧をもかけて見せた。それだけの行動ができるだけの覚悟はどうやって決まった? あやふやな物が心の拠り所ではあそこまでの気迫は到底出せん)


 ついにトップの顔から冷や汗がしたたり落ちる。しかし、思考の海に沈んでいる本人にとってはどうでもいい事だった。


(間違いなく日本と言う国にはとてつもない何かがある、それは間違いない。だが、その何かが一切予測できない。日本よ、ヒカル・トウドウよ。何が貴様たちをそこまで奮い立たせた? 何をもってお前たちは希望を持って明日を見ることが出来ている?


 魔法などという表現をする物とは一体何だ? 今の時代においてでも、それは魔法としか思えない超技術でも作り出したのか? なんにせよ、年末の戦争はこちらがあっさり勝利するなんて展開はない……それだけは間違いないのだろうな)


 某国のトップの思考は続く──そして、この国のトップが予想した通り……年末の戦争は連合国側が圧勝するなどという未来は訪れないのである。

ボダブレもやってますが、仕事さぼってるわけじゃないですからね?(汗)

メカのイメージを膨らませるのにとても良いのです。

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[一言] 題名の【)】カッコ閉じをつけていないのはわざとですか?
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