10月12日
やっと更新。そして本日の作業用BGM
真・豪血寺一族 ステージBGM『貧乏人間カネナイジャー』
「如月司令、少々お時間よろしいですか? 申請したい事案があります」
その日、いつも通りの仕事を行っていた如月司令は、突然の呼び出しに少々驚いた。その呼び出し相手が総理である光ならば別段驚きはしないのだが……今回如月を呼び出した相手は、光専用機体『鉄』のAIを務めているノワールからであった。何事だ? と内心焦りながらも応対する如月。
「ええ、問題はありませんよ。それで、一体何の用事でしょうかノワールさん?」
如月司令の問いかけに、即座に返事を返さないノワール。このノワールの反応に、如月司令はおや? と首をかしげる。こんな反応というか、即座に返事を返さないノワールを見たのは初めてなのだ。そして時間にして十秒ほど後に、ノワールからの返答が届く。
「万が一のために、私の製作時において密かに組み込まれている最終攻撃手段である『天照・システム』におけるリミッターの解除を要求します」
『天照・システム』とは、光の専用機体における隠された必殺技である。ただしまだ未完成であり、60%の出力までしか安全に発射することができない。ぎりぎり機体が自壊しないという条件付きで出せる最大出力が80%であり、リミッターはこの80%に掛けられている。まさに最後の手段であり、戦場の盤面を無理やりひっくり返す、がコンセプトだ。ただし、その後の戦闘継続は60%なら多少低下で済むが、80%を放てば機体半壊は免れないだろうと言うシミュレーターの結果が出ている。
「──リミッターを外すこと自体はそう難しくはありません。ありませんが……リミッターを外して、ノワールさんは何を撃つつもりなんですか? 正直安全圏の60%ですら現状の兵器レベルを考えると、この様な一種の化物の様な性能を持つために、地球にある現存勢力から考えると明らかに過剰な一撃となりますよ? それ以上の出力で撃てば、砲門とする腕が持ちませんから継続戦闘にかなり支障が出ますし」
なお、発射時には両腕を変形させつつ出力炉の専用射出口と直結し、機体を一つの馬鹿でかい銃のような状態に入って撃つことになる。なので、如月司令が砲門となる腕と言っているのである。
「それらのデータは、私も理解しています。理解しているからこそ、リミッターをつけたのですから。しかし、このリミッターのせいで不味い展開を迎える……AIである私がこのような表現をするのは苦笑なさるかもしれませんが、そのような嫌な予感がするのです。データを洗い出しても、このまま問題なく我々日本が大きな問題が発生せずに異世界なる場所に移動できる可能性は99.9999%と出ています。不慮の事故がありうるために100%にならないのは当然なのですが……この僅か0.0001%に対し、私は嫌な感じがぬぐえないのです」
このノワールからの言葉に、ふうむと声を漏らしてから考え込む如月司令。確かに0と1できっかりと考える事が多いAIであるノワールからの提案理由は、あまりにもあやふやな物であった。普通ならこんな理由で許可は出さない。しかし、今は色々な意味で普通ではないのが普通の状況となっており、それをAIであるノワールが感じ取ったとなれば……安易に無視することもできなかった。
「確かに今、日本を取り巻く状況は厄介の一言では済む状況ではないですからね。たとえ発生確率が限りなく低い物事に対して不安や嫌な予感をぬぐえないのは無理もない事です。しかしノワールさん、昨日まではそんな事を私に言ってきませんでしたよね? にもかかわらずそんな事をこのように言ってきたのは何か理由が? もしくは長い長考の末に決断を下したのでしょうか?」
如月の言葉に、また沈黙状態にはいるノワール。そしてそんなノワールの言葉を静かに待つ如月。そしてまたノワールの声が如月の耳に届く。
「長考したのは間違いありません。ですが、それだけではリミッター解除の申請を出すまでには至りません。私がリミッターの解放を申請することを決断したのは、昨日の出来事が原因です」
昨日の事と聞いて、如月の頭に引っかかったのは一つしかない。総理の光が過労状態であるのにもかかわらず、異世界の人達から持ち込まれた魔法技術を使用して無理をし続けた。それを止める為に周囲の人々が協力し合い、無理やり光に休息をとらせた一件だ。
「我がマスターは無茶をします。その無茶も並ならともかく、使える物を使えるだけ使ってとことん無茶をします。さらには、私が生まれる前には敵の総本山である場所に出向いているではありませんか。そんなマスターの剣となり、盾となるには……リミッターはただの枷にしかならない。私はそう考えたのです」
ノワールの意見に、如月も腕を組んで考える。──確かに、今まで総理は無事であった。しかし、一歩間違えばすでにこの世の人ではなくなっている状況はかなり多かった。そんな光が駆る『鉄』に兵器のごく一部にとは言えリミッターをかけておいて、自分の体を投げ出してでも無茶を通しきる事が多い光の相棒が勤まるだろうか? 如月は、ここで一抹の不安を覚えたのだ。何とも表現しにくい、あいまい過ぎる感覚なのだが。
「そうですね。確かにあの一件はこちらとしても不安になりました。国家の危機故、厳しい所が多くなるのは仕方ない。ですが、その時国を率いている人物が突然倒れるとなるとこれは大問題です。時期的にも、人望的にも代役を立てる事もできませんし……ノワールさん、再確認です。そのリミッターを外して80%以上の威力で『天照』を放った場合……貴方は……」
如月の言葉を、ノワールが受け継ぐ。
「はい、機体は爆発し、私も消滅することになるでしょう。ですがそれはすでに覚悟の上です。それに、これを発射するときは必ずマスターを脱出させてから行います。絶対にマスターを巻き添えにしない事も誓います。万が一がやってきた時、被害者を私だけに抑えるために使用します」
はっきりとノワールは宣言した。『死ぬ覚悟はできています』と。そのノワールの覚悟に、如月は気圧された。AIだとか、人間だとか……そんなものさしはそこには無かった。覚悟を決めた存在から受ける気迫、それは確かにあったのだ。その気迫に気圧された如月であったが、表面上は何でもないように取り繕いつつ考える。
(リミッターの解除は難しくはない。しかし、完全に外せば最悪の場合、ノワールが世界中を薙ぎ払うような行為に出ないとも限らない。理性あるAIだが、それ故にマスターに対する敵相手には苛烈になる一面がある。そんなノワールに『天照・システム』のリミッター解除をしていいものか。──そうだな、限定条件下という条件を付けよう)
考えを纏めた如月は、ノワールに対し自分の考えを述べ始めた。
「ノワールさんの要請である『天照・システム』のリミッター解除ですが、条件付きで認めようと思います。その条件とは、『マスターである光総理が認めた時限定』という条件です。あまり言いたくはないのですが、ノワールさんはマスターである光総理の敵に対しては苛烈で必要以上の攻撃を加える一面が、これまでの模擬戦やシミュレーターなどから見受けられます。そのため、この条件を付与させて頂かないと許可を下す訳には行きません」
この如月からの提案を、ノワールは素直に飲んだ。
「そうですね、私にはそのような一面がある事を否定することはできません。私にとってはマスターこそが最上であり、守護対象ですから。それゆえ、少々シミュレーションなどでは力が入りすぎていたことは否めません。そのような観点から、我がマスターの許可がなければ撃てないと言う制限をかける事は間違いではありません。私としても、マスターからの許可が下りない限りシステムを開放して放つつもりは始めからありません」
この言葉に、如月が内心ホッとしたのも無理はない。非常時とは言え、一機にふざけろレベルのトンデモ攻撃が内蔵されていると言うだけで恐ろしい物がある。しかし、何が起きるか分からない情勢なのだから、追い込まれてからの開発では遅すぎる。泥棒を見て縄を綯うような事態になった時点で負けである。
「では、司令権限にて『鉄』のシステムを変更します。これによって『天照・システム』のリミッター内容が変更されます。総理の剣となり、盾としての活躍をこれまで以上に期待します。──正直に言えば、いくら戦闘になってもこの『天照・システム』を起動する必要が出て来る事態にならない事を祈っているのですがね」
鉄のリミッター変更を行いつつ、如月司令はつぶやくが……その言葉にはノワールも同意した。
「それは私も同じです。万が一に備えるため、こうしてリミッター内容を変更していただきましたが……この攻撃は威力が高すぎます。この星を必要以上に破壊することは、私もそうですがマスターもお望みにはならないでしょう。それでも、撃たねばならぬ状況に追い込まれた時は……躊躇するつもりは欠片もありませんけど」
撃つべき時には撃つ。そうしなければ余計な被害を広げるだけ。言葉ではわかるが、行動に移すとなれば難しい。だが、ノワールはそう言う部分ははっきりと割り切っている。割り切れる。あいまいな人間的思考と、割り切る機械的思考の二つが、今のノワールの中でははっきりと確立されている。そのため、必要な時を迎えればノワールはあっさりと攻撃を行う。守るべきものを護る為に、他を切り捨てる。自らの『命』ですら、その切り捨てる物の中に入っている。
こうして光が休息をとり、ほどほどに落ち着いた仕事のスケジュールをこなし始めた裏では色々な覚悟を決めた存在が生まれていたのである。このノワール決断がどのような結末を呼び込むことになるのか……。
豪血寺のBGMっていうか歌は、いろいろおかしい(いい意味で)。
いまいち分からんって人は、どーまんせーまんどーまんせーまん
助けてもらおう陰陽師! と同じと言えばわかるかなぁ?




