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9月26日(前半)

体調が戻ってきてるので、こっちも一回更新更新。

「では皆様、現時点における神威・弍式の生産状況、およびパイロットの育成状況についての報告を行います」


 本日の日本&異世界組合同会議では日本側の主力となる神威・弍式の生産状況、およびパイロットの育成状況が発表される。日本側はもちろんだが、異世界側も非常に注目している話の一つである。


 自分たちが提供したあまり使えない技術とされていたゴーレム技術や重力系魔法の技術が、この日本と言う国によって大きな変化を起こした戦闘用機体の存在には注目が集まっている。それだけなく、日本側にまだ伝えていない事の一つである異世界側の危機に対抗できる手段となりうるのではないか? と本国からも密かに期待を集めている存在となっている。


「生産状況ですが、神威・弍式は予定配備数の3割程度、神威・零式は4割程度となっております。神威・弍式は最前線で戦う事が前提となっておりますので、生産されたパーツの品質がトリプルSランクでない限り組み込まれないようにしております。


 そのトリプルSランクに満たないパーツで作っている神威・零式の方が、どうしても数が先行して増えやすくなっている状況になってしまっているのはご了承ください」


 これはやむを得ない事である。いくら技術者が努力しても、常に最高品質を叩き出し続けるのは不可能である。後方支援メインとはいえ戦場に出る零式の方に回せる品質なのだから、決して質そのものが悪いわけではない……それぐらい厳しくパーツのチェックが行われているという証拠でもある。


「そのペースなら12月までには間に合いそうだな……その調子で頼む。残念ながら、無血による綺麗な旅立ちという訳には行きそうもないのでな」


 光の発言に、発表を行っている神威生産責任者は「心得ております」と返答を返し、次の話を始める。


「そしてパイロットの育成状況ですが、自衛隊のメンバーでも特にシミュレーションで好成績を上げたメインパイロット候補メンバーが出そろいつつあります。神威・弍式がもう少し数をそろえた所で、実機に乗せて順次訓練を行わせていく予定です。


 また、この訓練の際には神威・弍式の元であるKAMUIの乗り手である西村パイロットに教官として動いてもらうつもりです。彼は若いとはいえはるかに長い訓練を受け、さらに実戦も行っておりますからな」


 7月の頭に日本に向けてやってきた艦隊を、一人と一機で戦って生存者ゼロの戦果を挙げた西村少年なら適切か、と光は考える。


 それでもその若さから侮る者が出ないとも限らないが……その時は総理である自分が西村少年の戦果を発表し、実戦経験があるからこそ教官に据えたと発表すればいいだろう。もっとも、実力があるかどうかは一度直接戦えばわかることだ。それを証明することができる実力を西村少年は持っている。


「また、一般公募による神威・零式パイロットの募集状況ですが、すでに国民の4割以上が男女の差なく応じており、募集を打ち切りました。人数を絞るためにあえてゲーム大会の様なトーナメント方式にして、ふるいにかけます。トーナメント中の神威・零式が戦闘する姿も公開し、選ばれたメンバーに納得がいくようにします」


 神威・零式は弍式よりも数がそろう事になるとはいえ、無数に提供できるわけではない。国民の4割以上が今回の公募に応じてくれたことはうれしいが、物資の量と時間ばかりはどうしようもない。


「ちょいといいですかい? 神威・弍式と零式の能力差はどれぐらいになるんですかい?」


 ここで異世界側の部隊長である男性から質問が上がる。


「質問にお答えします。神威・弍式を100と仮定しますと、神威・零式は75~85ぐらいの力になります。これはパーツの品質にばらつきが出るため、特定箇所に負荷がかかりすぎて自壊しないように全体の能力を抑える設定にするためです。


 それでも後方からの射撃支援、いざと言う時の格闘武器に持ち替えての近接戦闘などは十分にこなせます。さすがに最前線に出すには少し不安が残りますが、異世界の皆様からもたらされた魔法技術による新しい防御フィールドも積むことができますので、最悪の場合はある程度の前線に出すことも可能ではあります」


 この責任者からの発表に、なるほど、とか、それぐらいの力はあるのかといった声があちこちから上がる。


「また、弍式限定ですが宇宙空間でも戦闘可能となっています。宇宙空間における戦闘の発展はまず無いと思われますが、こんなこともあろうかとと言う言葉は、不思議といい展開を呼ぶことが多いのでそのように弍式は生産されております。


 宇宙空間ですら行動可能であれば、戦場で過酷な展開を迎えても耐える事が出来る可能性が高まるという一面もあります。当然ですが、弍式が展開できる防御フィールドは零式の物よりはるかに強力です。極端な話になりますが、フィールドを張ってタックルする戦闘方法を取れるほどです」


 ゲン担ぎと、現実面のすり合わせによりそうなったのなら良いか……と光は一人で納得する。それにそれだけ頑丈であるなら、パイロットの生存率はかなり高まるだろう。


 戦場に送り出すという面から考えると甘いのかも知れないが、一人でも多くの人が生き残ってほしいと考える光には、こういうゲン担ぎを兼ねた機体の能力向上は喜ばしい。


「宇宙と言うと……月や星があるこの星の外の世界ですよね? そんな場所ですら戦闘行為が可能であるというのですか!?」


 ここで突如、異世界側の部隊長の一人である女性が心底驚いたような声を出す。どうやら、異世界側の人達にとっては完全に予想範囲外の話だったようである。


「はい、その宇宙と言う認識で間違いありません。異世界の皆様からによる多量の物資提供により、それだけの性能を弍式限定ではありますが備えさせることに成功いたしました」


 その一方で責任者は苦労しましたがと言う雰囲気は漂わせつつも、事実ですと言う態度を崩さなかった。


「す、すみません! 今の話を本国に報告してもよろしいでしょうか!」


 ここでこの会議一番の大きな声を上げたのはフルーレだった。日本側のメンバーは一体何事だ? と訝しげな顔をフルーレに一斉に向けてしまう。


「理由を教えてはもらえないだろうか? 宇宙空間での戦闘が可能であると、そちら側としては何かしら都合が悪いのだろうか?」


 フルーレの大声で会議が一瞬硬直してしまったので、再度動かすために光がフルーレにそう問いかける。フルーレはしばし困惑していたが、観念したように口を開く。


「──実は、私達の世界にも問題があるのです。事前に申しあげてきた人口減少問題もそうですが、もう一つの問題として……神からの試練と私達が言っている現象……こちらの皆様が分かりやすいように言えば無数の小さなメテオが30年から50年の周期で降り注いでくるのです……」


 この話を聞いたとたんに、ガタッ!! と椅子を跳ね飛ばして立ち上がる日本側の大臣が数名いた。


「そんな大事なことをなぜ今まで黙っていたのですか!!」


 そして大声でフルーレを非難する大臣までいるが……すかさず光は手をスッとだして、大臣を諌める。そしてフルーレに視線を向け、話の続きを行いなさいと目で指示を飛ばす。


「──もちろん皆様の転移先は、我々の歴史と記録が残っている限りになりますが……一度もメテオが落ちたことがない海上のある場所に設定されております。私達の世界に転移が成功した後には、メテオの被害が出る区域にいる人達を避難させておける場所として日本皇国の皆様には協力をお願いするつもりでした」


 フルーレが状況の説明を行っていく。とりあえず転移先はきちんと考えられていたことを受けて、激高した日本側の大臣達もひとまず椅子に座りなおしている。


「私達も何にもしてこなかった訳ではありません。魔法による迎撃やバリアによる防衛を何度も行ってきました。ですが……メテオの威力はすさまじく、被害を完全に食い止める事は残念ながら一度もできませんでした。


 もちろん毎回メテオは街などに落ちるわけではなく、大半は海に落ちます。ですが、次回のメテオ落下予測は……約2年後の我が国マルファーレンス帝国の首都……なのです。何度も予測などをやり直しましたが、ほぼ間違いないという結果が出ております」


 フルーレの告白に、会議場……特に日本側がしんと静まり返る。異世界側も悔しそうに唇を噛んだりしている者がいる。


「言うまでもありませんが、首都ですから当然大勢の人が住み、多くの人々が商いや生産を営んでおります。逃げて生き延び、祖国の首都が崩れ落ちるのを見る位なら、首都と運命を共にするとまでいう人も多数おりまして……


 実は我が父も運命を共にしようと考えている一人です。俺がいなくなっても、お前がいれば国の象徴になれるから問題はないだろうと言って聞かないのです……」


 ここまでのフルーレの話を聞いて、なるほどと頷いたものが数名。光や神威の生産責任者などである。


「つまり、だ。フルーレ達はその2年後に来るメテオの新しい対処法として、今こちらで作っている神威シリーズに期待を寄せている訳だな? そして宇宙空間にまで出撃できれば、勢いがつく前のメテオを攻撃して粉砕し、地面に落ちる前までに燃え尽きるようにできるのではないか? と考えてもおかしくはない。


 だからこそ、首都が助かる可能性がある事を本国に伝え、諦めるなと励ましたい……と言った所かね?」


 光の言葉を聞いたフルーレは、その通りですと静かに頷いた。

 異世界側のもう一つの問題がここで明らかに。最初の予定では人口減少問題とメテオに対する安置を得る事が目的だったのですが、日本人が神威を製作し始めたことを受けて、あの鋼鉄の巨人ならもしかしたら……の期待がひそかに異世界メンバーの中で高まっていました。


 そして今回の宇宙戦闘が可能と言う話でとうとう我慢できなくなってしまったという感じですね。異世界に転移した後は、このメテオとの戦いに向けての準備や、国同士を知ることなどがメインになるため、結局光はまだまだ休めないですね。

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