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9月4日

更新が遅くて本当にごめんなさい。

なんか毎回謝ってばっかりですがごめんなさいとしか言いようが無いです。

『それにしても、今の世界の中でも特に愚かな者がここまで見事に出揃ったものですね、マスター』


 ここはVR上に展開している訓練所。題目上は『鉄』のパイロットである光の訓練となっているが……その内容はただのストレス解消である。一応世界中で現在までに確認できたあらゆる兵器を研究し、その上で半分空想も含めて数倍ほどに強化されたものが現時点で戦っている仮想敵なのだが、『鉄』のシールドシステムや装甲を抜くことができない。そうなれば起こることは一方的な蹂躙である。


『ミッション・コンプリート。これではあまり訓練になりませんね、マスター』


 ノワールの言うとおりである。ひどい言い方をすれば、ただ前に向かってブーストを吹かしてタックルを仕掛けるように突っ込むだけで勝ててしまうような相手だ。


 実際、先ほどの戦闘訓練では鉄に備え付けてある装備の大半は使われぬままであり……胸部に仕込まれている胸部ガトリングガンを四方八方にばら撒いただけで仮想敵として設定された存在を全て殲滅してしまった。ノワールの言うとおり、この内容ではお世辞にも戦闘訓練とは呼べないだろう。


「これだけ次々と出てくる相手を薙ぎ倒せば一時的な鬱憤晴らしにはなってくれるが、それだけでは訓練にならないから困るな……。ノワール、お前が言うあの愚か者達のせいで苛立ちがあまり隠せんよ。こんなところでもない限り、表に出すわけにもいかないのだがな」


 この愚か者達とは、例の飢えた子供達を使ったプロパガンダ映像を作った連中をさしている。もちろんどこの誰が作ったなどは調べても今の日本にとってはあまり意味がないので調べていない。光とノワールが言っている愚か者達の範疇には、製作にかかわったと予想がつく奴等全員が含まれる。


『私はAIですが、あの映像を見て私が感じたことは嫌悪感だけでした。逆に言えば、人間ではない私にすら嫌悪感と言う感情を抱かせた点だけは評価できるかもしれません。もちろんマイナス方面での評価ですが』


 ノワールの口調にも、とげとげしい部分が顔を出す。研究所の人と話すことも多いノワールなので、そういった心といってもいいかもしれない部分も成長しているのである。


「だが、世界の馬鹿どもにはちょうどいいんだろうよ。あの映像を支持する国が大半らしいからな……後は中立が少々か。特にわれわれ日本人が消えてから、ライフラインが厳しい国には受けがいい。まあ、矛先を我々に向けれるから、というだけのつまらない理由しかないのだろうがな」


 そう斬って捨てた光の様子に、ノワールは話を変えることで光の気分転換を図った。


『その話はこれぐらいに。ところでマスター、マスターは長門と大和のお二人には会いましたか?』


 急に話が変わったので、ん? と光は少し考える。


「その長門と大和というのは、今日本を守ってくれているあの戦艦の事ではないのか?」


 そもそも長門や大和と話すときには鉄に乗ることが必須であり、当然ノワールもそれを知っている。だからここでノワールが言っているのは戦艦の方を言っているにしては妙な言い回しだと光は考えた。


『もちろん違います。マスター、実はそちらの戦艦の姿をした本体とは別に、人の姿をしている分体を存在させているのです。そして、その人型をした分体二人は私に『鉄』の操作方法をよく聞きに来ているのです』


 長門と大和、二人の分体の存在をここで初めて知った光は、ノワールに向かってつい再確認をしてしまう。


「すまん、もう一度言ってくれないか? 分体だと?」


 ノワールは『混乱なさるのは無理もありません』と前置きをしてからもう一度発言を繰り返す。


『正直に申し上げて、ありえないにもほどがあります。私の思考プログラムにおきましても、彼女達の存在を考えるとエラーのような存在としか考えられません。しかし、彼女達の体を今海で活動している戦艦長門や大和と比べた所、魔力の波長が完全に一致すること。そして何より、映像と音声の両方も私の記録メモリーの中にはっきりと残っていることから、私が発生させたバグであるとも思えません。念には念を入れて技術班の人達による徹底的なメンテナンスも受けましたが、異常は全く無いとの事です』


 次のVRによる訓練に移る前に、光は腕を組んで目をとじ、思考を始める。


(──ありうる、ありえないという考え方は排除だ。そもそも魔法という1年前なら馬鹿げた話を切って捨てたであろう物事は、今の日本の中に間違いなく存在している。実際に魔法の力というのであれば、今の私にでも使える。だからノワールの話に嘘は無いだろう。


 そうなると、なぜ長門と大和は分体? なる物を生み出したのだ? 本体は海上での監視……監視船というにはでかすぎる存在だが、ともかく監視をしてくれている、そこにわざわざ分体を生み出す理由が見つからない)


 ほほを少しぽりぽりとかいた後、光は思考を続ける。


(第一、なぜ『鉄』の操作方法を学ぼうとする? いざというときは神威弐式を実戦装備で配備するという話は長門にも大和にもきちんとしてある。それとも純粋な興味をもったからそんな姿で歩くようになったのか? それとも彼女達には彼女達の考えが……どう転んでも日本を裏切るという線は絶対に無い、そうなると俺が何かを見落としているのか?)


 あれこれ考えをめぐらす光だが。答えは結局出ないままだった。


『マスター、そろそろ次の訓練を』


 ノワールの声で、光の思考は中断される。腕組みを止めて操縦フィールドに手を突っ込む。鉄のバージョンアップに伴い、操縦桿などではなく、もっと細かい作業をダイレクトに反映できるようにと、左右の両手を特定の場所に突っ込んで動かす形に変更されていた。これに脳波を感知するヘルメットを装着することで『鉄』のコントロールを行う。


『次の訓練は、仮想敵のレベルを神威の領域にまで引き上げました。これならば鉄といえども、先ほどのような突っ込んで殲滅するだけといったことにはならないと予想されます』


 ノワールの発言どおり、次のトレーニングの仮想敵は神威弐式がメインになっていた。バリエーションも豊富で、より大型の剣を装備していたり、ミサイルランチャーやバズーカで火力を重視していたり、光には伝えられていないが狙撃班もいる。


「なるほど、ついでに新規に完成した神威弐式のオプションパーツ仮想テストも兼ねていると見ていいのだな?」


 今まで光の記憶には無い神威用の武器がここまで次々と出てくれば、そんな予測を光が立てるのは当然の事だ。


『はい、申し訳ありませんが神威のチェックをするために最適な仮想敵はこの鉄なのです。データの収集も兼ねさせていただいています……ご不満でしょうか?』


 ノワールの申し訳なさそうな声に、光はいやいや、と首を振りながら答える。


「不満など無いから安心しなさい。時間は限られているのだから、データを取れるときには取ることが当たり前だ。──そうだな、今後神威パイロットに選抜された自衛隊員と一緒にトレーニングしたり、お互いがコントロールしている機体同士で闘ってみるのも良い訓練になりそうだな」


 ノワールは、機嫌を悪くした様子を見せない光に内心? でほっとする。訓練のため、VR世界といえど真っ先にやられ役になりかねないテスト役を総理に押し付けるのはあまりに無礼ではないのかとノワールはノワールで悩んでいた。


 だが、光の言ったとおり時間が限られているのもまた事実であり、一刻も早いテストが必要だった。もちろんオートパイロットによるVR模擬戦はそれこそ百回以上行われているが……それを擬似的な世界といえど実戦に近いテストと評することはできなかった。


 自衛隊員のVR訓練はまだ基本的な動作から一歩踏み込んだ辺りであり、戦闘ができるレベルには到達していない。初代神威パイロットである西村君の方は現状初代パイロットとして追加武器の研究に関わっており、そっちの方向で忙しい。結局一番テストを受けるのに適切な人材が光であるという、とんでもない状況になってしまっているのだ。この状況は当然ながら、故意に引き起こされたことではないのだが……。


 そしてそんな状況で行われるテスト。仮想敵が現時点の最強機体『鉄』のために、単なるデータ取りでは収まらず改善案が次々とはじき出されてゆく。その結果、神威弐式、零式に追加装着されるオプションパーツの性能は凶悪度を増していく事になる。実戦でこれをぶつけられる相手にとっては悪魔が育っているような物であるが……その悪魔の登場はもうしばらく先の話となる。

防衛兵器? すでに相手側を虐殺可能なオーバーパワーな形に。

数がどうしても少なくなるというのならば質をとことん上げるのが日本人。

そしてそんな物を持っても虐殺行為をしないのが日本人。

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