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2月15日

他国の情勢の一部です。

 とある某国。 その大統領執務室。 この国は2000年ほど昔はただの小国だったのだが、1200年前より徐々に軍備を拡張し、今では軍事大国の筆頭などと世界各国から呼ばれている。


「失礼します、閣下! 報告があります!」


 そこに居たこの国の大統領に、生真面目そうな人物が1人執務室に入り、敬礼の体勢を取る。 その敬礼には、一種の芸術とも取れるような妙な美しさがあった。


「ふむ、聞こう、続けたまえ」


 大統領は2つの指示を自分の部下達に下していた。 二日前の日本の総理大臣の発言。 そして日本を包み込んだ現時点では正体不明の防衛兵器と思われる存在。 これらの情報確認と詳しい情報の収集が1つ。 それからもう1つは、この国に技術者兼労働奴隷兼人質である日本人の完全な拘束、激しく抵抗するなら射殺、それがもう1つの指示だった。


「一つ目の日本の総理大臣の発言ですが、やはり他の敵国の偽装工作などではなく、間違いなく日本の総理大臣が発言した事である、との情報は間違い無い事実である事がはっきりしました」


 大統領は立派に蓄えた髭をなでながらその報告を聞いていた。


「今回の日本の総理大臣における任期は……3年目ぐらいだったかな? そこそこ壊れるまでの時間は持った方か。 その持った分、ずいぶんとファンタジーな壊れ方をしたものだ」


 大統領はそう言って笑う。 ジャパニメーションに逃げ込むようではあの総理大臣も終わったなと。


「それからあの、日本を包んだ新型防衛兵器ですが……現時点ではほとんどの事が解明できておりません……」


 この報告を聞いた大統領は思わず立ち上がった。


「ほとんど分からないだと!? 我々の兵器や解析技術を持ってしてもか!?」


 報告を続けている部下の顔色は急激に悪化し、冷や汗も流れている。 この国は兵器に関しての技術などは世界でもトップクラスであると自負していただけに、この報告を受けて大統領は、心穏やかではいられなかったのだ。


「唯一分かった事は……我々の通過を一切許さないという事だけです……」


 大統領は大声を荒げた分やや落ち着いたのか椅子に座りなおす。


「むう。 進入を禁ずる兵器とは、また日本も変わった兵器を生み出したものだ。 変な意味であの国は未来に生きているな」


 そう発言した後、髭をなでながら顔をしかめる。


「ただいま解析チーム総員であの膜の様な防壁を突破、もしくは破壊する手段を全力で調べさせています」


 報告を続ける部下はそう締めくくった。


「出来るだけ急がせろよ、ゲームの発生はそう遠くないぞ」


 この大統領の声にはっ! と声を上げて敬礼をする部下。 そこに慌てた様子で1人の男が飛び込んできた。


「だ、大統領閣下! 緊急でお知らせせねばならぬことが発生致しました!」


 もう1人の部下が息を切らせながら、慌しく大統領執務室内で報告を始めようとした。


「騒々しいな、一体何事だ!」


 その部下を叱るように声を出す大統領。 しかし、次の部下の報告に大統領は再び声を荒げる事になる。


「に、日本人の奴隷達が脱走しました!」


────────────────────────


 場所は変わってこの国の労働施設のプラント、そこに大統領自らが直接訪れていた。 このプラントに拘束し、働かせていた日本人は1万人を超えていた。 さらにここで働いていた日本人の家族は別の場所で軟禁しており、簡単に口裏を合わせてここから脱出することは、ほぼ不可能であるはずだった。 また日本人家族の軟禁場所はちょくちょく変更しており、ここで働いている日本人たちがその場所を知るはずが無い。 だというのに。


「──逃げられた……だと!? ここの包囲網を突破された上に、数日前に移転させたばかりの日本人家族の軟禁場所まで全部探し当てられてか!?」


 そのプラントを包囲していた武装メカや、多数の兵士はバラバラの物言わぬ死体を晒していた。 そして妙な事に武装メカは複数の箇所が熔解しており、兵士達の体は灰になっていた、灰になっていない部分は手足の先のほうだけである。 風が吹くたびに元人間の兵士であったであろう灰は、どんどん風に飛ばされていく。


「い、1時間前まではいつもどおりでした……そして、30分ほど前にこの場に私が戻ってくると、すでにこの状況になっておりました……急いで日本人の家族を軟禁している施設にも連絡を取ったのですが……」


 返答はありませんでした、なので、他の者を向かわせたところ……施設は破壊され、武装メカや、兵士達はここと同じ状態であったそうです……。 と、足をがくがく震わせながら大統領に報告を終える。


「空港などは当然、もう閉鎖したんだろうな!」


 大統領の大声が響く。


「は、はっ、空港、ならびに国境を、既に全て封鎖済みであります! 逃げることは出来ないと思われます!」


 部下の一人が大急ぎで大統領に返答する。


「全軍に伝えろ、日本人狩りだ! 見つけ次第射殺を許可する! むごたらしく殺して、その写真を日本に送りつけてやれ!」


 激昂する大統領に向かって大慌てで敬礼をした後に走り出す部下達。 数分後には日本人を殺すためだけに、大掛かりなこの国の国軍の部隊が一斉に動き出している事だろう。


「日本人め、優しくしておれば付け上がりおって! 貴様らのような大悪党は、大人しく我等に奉仕することが義務であると言うのに! これから流れる血は貴様らにとっては当然の裁きだ!」


 そういって地団駄を踏む大統領。 だが、当然この大統領の裁きとやらは成功しなかった。


 フルーレの部下達は、日本人が囚われている場所を探し当てたら即座にテレポートにより現場へ移動し、上空からファイアーボールなどの魔法で一瞬にて障害を無力化。 音は風を操ることで消音。 それから奴隷扱いされていた日本人労働者達と、その家族達を救助した後に、再びテレポートの魔法により、とっくにこの国を立ち去っていたのだから。


 フルーレの部下達はこの方法で、次々と各国に労働奴隷として扱われていた日本人達を救い出していった。 その手際の良さにどの国も対応する事を一切許しては貰えなかった。 ちなみに、数少ない親日国の人達は、フルーレの部下が現れたとたん敬礼で出迎え、既に集まってもらっていた日本人をすぐに日本に送らせやすいように協力した。


 フルーレの魔法部隊の活躍により、全ての海外に囚われていた日本人達は、数日で生きて故郷の土を再び踏むことが出来たのである。

『ゲーム』についての内容は次回。

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