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7月15日

更新遅いよ、なにやってんの!

の声にお答えし、頑張ってみました。

「総理到着、全員敬礼!!!」


 ここはとある自衛隊駐屯地。武器や兵器を取り上げられ、国軍としての力を失っていた現自衛隊ではあったが、いざと言う時の災害の発生時には体を張って救助に向かう猛者がその程度の苦難で消えたわけではなかった。むしろいろいろなものを取り上げられた分、僅かな機材で如何に救うか、守るかと言う技術をより伸ばしていた。その姿はまるで踏まれても刈り取られても再び起き上がり、生えてくる雑草の如く。


「楽にして欲しい」


 壇上に登場した光の言葉に全員が敬礼を終えて、胸を張って休めの体勢をとる。乱れも無く整然と胸を張る自衛隊員。 たとえ武器や兵器がなかったとしても彼らは国を守る為に徴兵されるのではなく、自ら志願してこの場に立っているのだ。そんな彼らだから、当然入っている気合が違う。


「先日、KAMUIの戦闘シーンをグロテスクな部分のみ修正をいれたものを全国に開放した、その映像を見た者は挙手をして欲しい」


 大半がすぐさま挙手する。 大体九割は見てくれていたか、と光は確認をすると、手を下ろして欲しいと指示をした。すぐさま綺麗に手が下ろされ、再び休めの体勢になる自衛隊員。


「そして本日ここに私が来た理由だが。 あのKAMUIの量産機に乗るメンバーを自衛隊の中から選出する事になるために出向いた」


 一般市民ならざわめきそうな一言ではあるが、自衛隊員は全員体勢も崩さす、無駄口も叩かない。


「言うまでもないが、搭乗し戦う機動兵器であるKAMUIだけに特殊な訓練を積んでもらうことになる、訓練はVRで行なうことになる。 そしてその訓練の中で成績が優秀な自衛隊員を八十名選出、その八十名をKAMUIとローマ字表記していた事を改め、神威と今後は漢字で表記することになった初代神威、その神威の量産型である弐式に搭乗してもらうことになる。当初三十機が量産の予定になっていたが、向こうの世界より追加で来た協力者の尽力もあり、さらに十機が追加されることになり、合計四十機となる事が確定した。人数要望が機体の倍である理由だが、一つの機体につきメインパイロットと、サブパイロットを各一名ずつ選出、疲労状況などにより交代しながら運用してもらう為だ」


 一旦話を区切り、整列をしている自衛隊員を光は見渡す。


「なお、全国に居る全ての自衛隊員にこの話は現在進行形で伝わっている。そして選出方法も立候補に絞る、推薦は要らない。例えあの強力無比な機動兵器に乗るとはいえ……敵の真っ只中に突っ込むことも考慮されている為、命の保障は何所にもない。そのような戦場に出向いてもらうことになる為に、立候補のみに絞らせてもらう。その覚悟を持った上で、遺言書を書いてもらった後に訓練を行なってもらうことになる、私のように」


 最後の『私のように』で一瞬だが空気が変わった。 そして自衛隊員の中から一本だけ手があがった。


「須藤と申します、大変失礼ですが総理に対し、質問をする許可を頂きたいのですが」


 須藤と名乗りを上げた一人の自衛隊員に対し、光は許可する、ただし質問は一つだけにとどめていただくと声を発した。


「ありがとうございます。 遺言状を総理も書かれたとの事ですが……まさか、総理も自ら戦いの場へ赴かれるのですか!?」


 須藤伍長の質問に、光はゆっくりと頷いた。


「専用機を用いると言う違いはあるが、その代わりに一番前へと私は立つ予定だ。皆だけを戦わせるような真似はしない。一国の総理としては本来なら許されない行動なのかも知れないが、今は非常時! 故にやらなければならない。今回のような機会を逃せば、もう二度と我々日本人は立ち上がる事は出来なくなるやも知れぬのだ。 故に! 私が先頭に立ち! 日本に住む全ての国民を引っ張る! 皆は私に続いて立ち上がり、共に戦って頂きたい。 対話ではなくミサイルで、脅しで、殺戮で我々の祖先を苦しめてきた今の世界に生きている人間達がこのまま我々を静かに行かせてくれる事は無いだろう……非常に残念だがな。 当然私とて殺生を好むわけではない、暴力ももちろん好んではいない。だがな、攻めて来る相手にすら非暴力であっては国民を、この国を守る事が出来ないのが今の時代だ」


 須藤は総理である光の声に圧倒されていた。完全に総理は戦いにおける覚悟を固めていると。様々なメディアから伝わってくる情報などではなく、直接何も隔てない総理から伝わってくる熱気によって、心で、魂で総理の覚悟を直に理解できたのだ。 その瞬間、須藤の全身は駆け巡る血が3度ほど急激に上がったような感覚に包まれる。その熱気に押された須藤は、いつの間にか両手に堅い握り拳を作っていた。 いや、須藤だけではない。気がつけば周りにいた自衛隊隊員全員が、まるでオーラを発するかのように闘志を高めていた。


「立候補はこれから半月の間受け付け、そこからVRの結果などを鑑みて最終的な八十人を選出する流れになっている。 それからもう一つ、民間からも搭乗者を募っている。民間が乗るのは神威・零と表記することになる機体だ。 自衛隊員が乗る神威弐式は量産機ではあるが激戦地区に向かう事になる為、一つ一つのパーツ選定が厳しく行なわれている。 その選定に漏れはしたが十分に使用に耐えうるパーツを集めて作るのが神威・零だ。零の方は後方支援、弾薬や燃料補給の戦闘補助などを担当することになっている。 民間といえど、適正が高い人間が動かすのならば十分戦力になる、それに」


 ここで一息置いてから、光は言葉を続ける。


「民間からも共に戦いたい、神威に乗って国を守りたい。神威に乗って国を守れるのならば、命を国に捧げる覚悟は出来ていると、嘆願に近い要望書がひっきりなしにこちらへと届いているのだ。その数はもう既に二百万を越えている。故に、その熱意に此方も応える事とし、民間からも共に戦うことになる戦士を選出する予定だ」


 だが、と光は厳しい雰囲気を纏わせながら話を聞いている自衛隊員達に告げる。


「それでもやはり民間人、激戦地区には送れない。 遠距離からのライフル攻撃などは良いだろうが、近接攻撃などを望むのは少々酷かも知れん。だからこそ覚悟ができている自衛隊員には、その覚悟に見合う強力な機体を用意している。 もう一度言うが、条件は立候補のみだ! それ以外に細かい決まりは無い! 階級も年齢も一切関係ない! 死地に共に向かう覚悟がある人間であればそれで良い! 共に戦ってくれる者が居てくれる事を信じている」


 全自衛隊員が総理に向かって敬礼をする。 光はその敬礼を受けて駐屯地を去った。


 ────────────────────────


「須藤、お前は……やっぱり立候補するのか」


 総理に質問をした須藤に同僚が声をかける。


「適正が俺にあるかどうかは分からん、分からんが……今日俺は、あの人になら命を掛けてもいいと思った。例え自分が明日を見れなかったとしても、どんなに苦しい目にあっても、あの人と共に同じ戦場に立ちたいと思った。そしてそうやって戦えば、先に死んでしまった妻に……胸を張れると思う」


 須藤の妻は海外の過剰労働を強いられて過労死している。須藤が自衛隊に志願したのはその後だ。


「やはりそうか、だが俺も立候補する。理由は言うまでもないだろう」


 立候補を宣言する同僚に須藤は無言で握手を交わす。 このような流れで、最終締め切り時にはなんと自衛隊の九割が立候補した。 残り一割は後方支援のエキスパートたちだったので、そちらで戦いに向けて貢献する事を考えていた為に、立候補しなかっただけである。


 民間からは総人口七千五百万人中、千二百万の人が立候補した。理由は様々であったが国を守りたいの一点は共通していた。徴兵など一切掛けずに、戦う意思を持つ人間が膨れ上がり、それに呼応するかのように異世界から日本に来ていた魔法部隊の隊員達の士気も上がってゆく。 その熱気はまるで、一匹の龍が天に向かい、戦いの意思を世界に対して宣言するかのように咆哮を上げたかのようであった……。

そんなに~を書いていると、自分の体温も実は上がっていたりします。

おっさんの戦闘シーンを書く時よりも熱血してるかもしれません。

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