7月10日
やっと一話かけたので更新します。
「くそっ、この大事な作戦がまさかこんな結末を迎えるとは……」
物に当り散らしている某国の大統領。 新しい兵器の効果などをデータにとり、有効であればそのまま破壊して日本の総理にテンノウを殺害して、再び今までのような労働力として扱おうと計画を繰り広げていたのだが……結果は連合してまで生み出した兵器、出し合った艦船など、全てが何の成果も結果も出すことなく水の底へ沈んだ。
「完全に予定外だ、一体あの場所で何があったのだ! 完全殲滅された上にあらゆる通信がその時だけ死んでいただと!? おまけに映像はハッキングされていて殲滅を受けた時のデータも一切回収できなかった上に、全てのブラックボックスまで破壊されていた……!! 何所の国がやりやがった!!」
怒りが収まらない大統領ではあるが、いつまでこうやって居ても何も改善しないと言う事は分かっていた。 机を叩きつつも椅子に座る。表情だけは怒りを抑えられていないが。
「今回はヨーロッパ系列の妨害ではないでしょう。腰抜けの日本が打って出たとも考えにくいです。そもそもあの国に兵器がある訳がありませんが。あれだけの防衛兵器を、我々に感知されぬように工夫しながら製作していたとなると攻撃の為の兵器までは手が回るとは思えません。そうなりますと、ハッキングが得意で自らこそが世界の王であるとふんぞり返っているあの国が今回の容疑者と予想される筆頭格ですね」
「ふん、あいつらか……確かに今までの行動から考えれば、あいつらなら平然とやりかねんな。ふざけた理由で他の国に侵略行為をするのはお手の物だからな」
「しかし、今回は残念ながら一切の証拠がありません、あいつらのように捏造するにも、真実をいくらかは混ぜなければ信憑性を持たせることが出来ませんので……」
「ハッキングをされた、ということは言えないからな……侮られるだけだ」
もちろん連合艦隊が海の藻屑になったのはKAMUIに乗っていた西村の逆鱗に触れたからなのだが、この時点では他の国はKAMUIの情報を一切手にしていない。故に事実からかけ離れていくことになった。
「どういう方法を使ったのかが現時点では分かりませんが、サルベージすら今回は不可能に近いです、せめてある程度引き上げる事が出来れば……おまけにブラックボックスまで全てが完全にロストしている事が痛いですね」
「忌々しい、他は他で新兵器を作っているのだろうが……今は世界で争っている場合ではなかろう、さっさとあのクソジャップを外に引きずり出して世界への贖罪をより厳しく行なわせねばならん時期だろうが……!」
自分達の国とて新兵器を作っていた事を棚に上げてそう舌打ちをする大統領。 贖罪云々は別にして、問題はもうはっきりと表面化してきている。 兵器以外の生産力が目に見えて落ちてきているのだ。貯蓄を考えてもタイムリミットが後数年とはっきり宣言されており、そのタイムリミットを越えた後には衣・食・住全てが大幅に悪化する。 歪みに歪んだ歴史を持つ故に、一本の柱が折れると全てがドミノ倒しの様に瓦解する。まるで耐震設計を考えずに作った家が、軽い地震を受けた途端に柱も壁も崩れ落ちて潰れて行くかのように。 更に加えて言えば、その兵器すら原料を生産する工場がこれまた日本人が消えた為に止まってしまったので、近く武器の生産そのものが出来なくなってしまう事が判明している。
時間が無いのだ。 プラントによる一斉大量生産という方法を取らせてきた形で国民の衣食住を満たしてきた為、昔ながらの大地に種をまき、食料を作るという方法ではとてもではないが増えた人口を維持できない。 そうなれば当然奪い合いになり、無法地帯が増え、国家が内部から自然崩壊する。 現時点ではプラントの生産方法はオートになっており自動生産をしてくれてはいるが……メンテナンスの方法も、燃料の供給方法も分からない状態であり、近く日本人が管理していた全ての食料生産プラントは燃料切れなどの理由により停止する。 ごく一部の国が管理していた生産プラントの技術者を出向させて日本人が管理していたプラントを見せたのだが……。
『申し訳ありません大統領……日本人達は"外見だけは同じ"だが、"中身は別物"という機械の作り方をしていたようです……!! くそったれ、こんな手段までなりふり構わず……!』
"その時"が来るまで、耐えに耐え、確実な一撃を我々に打ち込むためにそのような真似をしていたのでしょう、と技術者は報告してきた。停止した後の再稼動方法を探らせてはいるが、うかつに今、分解などをすればプラントの全体作業が止まってしまい、即座に物資の供給不足が発生してしまうために詳しい内部の調査も今は殆ど出来ない。 見えないように、気が付かれない様に……そしていざという時がきた場合には確実に引き裂ける様に、ずっとずっと日本人達は前から用意を積み重ねていたのだ……。
(くそ、あのジャップモンキーめ、こういったくだらないことには本当に上手くやりやがる! ここまで人間にたて突くとどうなるか近い内に必ず思い知らせてくれる!!)
日本人から言わせて貰えば、『嘘と脅しでやってきた愚か者達に、心からの貢献などするわけが無かろうが、この馬鹿共が』といった所であるが……日本人を長い間ただの奴隷と見続けた彼らには悪態をつくことしか考え付かないようだ。
「大統領、申し訳ないのですが更に悪い知らせです」
「なんだ、まだあるのか!?」
「今回の作戦に使われる予定だった兵器の改良案が上がってきたのですが……これを生産しますと、我々の温存している金属関連の在庫がほぼゼロになってしまいます。しかも、今から作り始めなければ、彼ら日本人が何かをすると宣言している12月31日に間に合わなくなります!」
「なんだと!?」
この時期でもう最後の賭けに出る事を強要される始末だと言うのか……! だが"実験"が全く出来なかった以上、少しでもあのモンキー達を引きずり出す為に兵器強化をしておきたいのは言うまでも無く……。
「──分かった、大統領の命令として作らせろ。 ただし絶対にクリスマス・イヴには間に合わせろ! サンタクロースのプレゼントを取り戻さないといけないからな!」
"クリスマス・プレゼント奪回作戦"などと、日本人から言わせれば寝言を言うなとばかりに逆撫でするであろう計画がここに持ち上がることになる。 もちろん兵器による強襲も計画にはあるが、一番の目的はその兵器によって恐怖を煽らせる事で、"死ぬよりは生きたほうがマシだろう?"と言わんばかりのプレッシャーを掛けることで、日本人を自発的にバリアの外に出して捕縛、奴隷として再利用する。 この計画のプレゼントとは、日本人を再び労働力奴隷として扱うようにし、国が潤うようにするという意味である。
だが、彼らは忘れていた。WW2で彼ら世界各国が日本に取った行動を。輸入を差し止め、対話を求めた日本の声を無視し、とどめに"ハルノート"を突きつけた事を。奴隷になるよりは、戦って死のうと覚悟を決め、勝てない戦いと十分理解しながらも戦いに身を投じた日本人の事を。
そして彼らは知らなかった。日本はもう世界を相手に戦える力を身に着けつつある事を。彼らに助太刀をする"強き同胞"が居る事を。
なにより、本気でブチキレた日本人がどういう行為に走るのか。バンザイアタックなどと世界に言われた『特攻魂』は、既に日本人の中で復活していた。抜き身の刀の如く静かに、しかしはっきりとした戦意を日本国の国民は皆、持ち始めていた。 それに加えて、残虐な部分だけ最小限の修正を掛けたKAMUIの戦闘、戦果を総理である光は国民に正式発表し、戦える力を我々は今こうして持つ事が出来たと演説も振るった。日本人の士気は今、とてつもなく高まっていた。
そんな事を一切知らない各国は、12月に日本へ向けて攻め入ることになるのである。




