表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/219

5月下旬

 事前にVRにて訓練を行ってきたとはいえ、やはり実際に動かすとなればそれなりの緊張はある。光・フレグ・ティア・ブリッツを前に、各国の機体が整列をしているとなればなおさらだろう。なお、整列はオートパイロットである。


『よし、本日訓練を行う全員が揃ったな。本日は、今まで日本皇国から提供された機械にて事前に行ってきた基礎的な動きを実機でも出来るかどうかの確認、並びに基礎的な訓練を行う。各員、始め!』


 フレグの言葉に従い、各機体は前進、後退、左右移動、上昇と下降(宇宙空間では上下はないが、そう表現させてもらった)等を行う。だがやはり、もたつく機体は存在する。やはりどれだけやっても訓練は訓練であり、実戦ではない。訓練にはなかった緊張感や重みがあるが故に起こりうることだ。これをなくすために、実機を用いた訓練が必要なのである。


『慌てるな、慌てなくていい。訓練に使った機材と、実際に決戦に使う機体に乗り込んで動かすのでは勝手が違って当たり前だ。まずは、確実に基礎的な動作が出来るまで何度でも復習しろ! それだけの時間は十分ある。それに、もし何らかの問題が起きて動けなくなっても大丈夫だ! この宙域には先にこの世界に来た意思を交わせるヤマトなるソウル・ガーディアンがいる! 彼女が必ず助ける事になっている! だから安心して訓練に集中しろ!』


 整備が万全であっても、予測不可能な事態は起こりうるもの。その時の対処の為に、宇宙ステーション建設の為にこの世界にやってきている大和が、いつでも救助行為に動けるようにスタンバイしている。万が一機体が暴走したり爆発によって動作できなくなっても、大和と大和に乗船している技術者たちが救助に向かえるようになっていた。


『だから、過剰に緊張する必要はない! 動けなかった者はまず深呼吸をしろ、今我々が居るのは今まで来ることなど考え付かなかった世界だ。緊張をするなというのは無茶なのは分かる。だからこそ、深呼吸をしろ。そして、周囲を信じろ。お前たちを見捨てるような者は居ない、落ち着いて、訓練を思い出しながらゆっくりやってみろ』


 もたついていた機体のパイロット達だったが、フレグの言葉にある程度の落ち着きを取り戻した。言われた通りに深呼吸し、訓練を思い出してゆっくりと機体を操作する。それを繰り返す事で、もたつきは徐々に改善されていった。


『よし、いいぞ。最初の一歩を踏み出すのは誰でも難しいものだ。しかし踏み出せてしまえば、そこから先は意外とどうにかなるものだ。今日一日は基礎動作に充てるつもりだ。皆、気が逸るところはあるだろう。だが、だからこそこの基礎動作を何度も繰り返せ! 自分の体で剣を振るう、魔法を撃つ、銃を放つわけではないのだ! それを忘れるな!』


 そう、日本皇国の自衛隊と、日本皇国がまだ地球にあった時に救援に来た部隊以外は、実機に乗るのはこれが最初。もちろん訓練で今自分が乗っている物がどういう物かは理解している。しかし、理解だけで機体が十全に動かせるなんて話はない。剣だってそうだ、剣を持って今まで教本を読んできたからと言って、剣の振り方がすぐに身につくなどあろうはずもない。


 魔法や、銃、それらも全て同じだ。知識を得たうえで、そこからは実際に使って、動かして、何度もそれを繰り返してようやく身につくのだ。そう考えれば、残された時間はかなり少ない。だが、ここで急かして基礎訓練をおざなりにすれば、いざ実戦を迎えた時、大事な所でパニックに陥って機体を動かせなくなり自滅する。


 そう言う結論を、各国の上層部は共有していた。だからこそ内心では非常に焦れていても、それを表に出さず時間はあるから落ち着いて訓練を行えとフレグは言っているのである。フレグとて本来は一刻も早く武器を使った訓練に移りたい。しかし、彼は子供の時剣を早く使いこなしたいがために基礎を疎かにして、剣技の訓練を個人で勝手に隠れながら行った事がある。


 そして、大けがを負った。幸い治療が間に合ったおかげで怪我が元で死亡したりする事はなかったが──このことは彼にとって大きな教訓となった。己の体を己の未熟な技で傷つける事の恐ろしさをたっぷりと知ったのだ。それを知った顔をベッドの上で当時のフレグがしていたからこそ、彼の両親は当時の彼に対して小言を二、三言うだけに留めた。本人が十分に思い知っている以上、それだけ言えば十分だろうと判断したからだ。


 その後、フレグは基礎訓練を何よりも大事にした。そのおかげでその後剣を振るって大けがを負った事はない。そして、彼が乗り込んでいる彼専用のブレイヴァーにも同じ事が言える。だからこそ、どんなに焦れていても彼は基礎動作を訓練する時間を短縮させるような真似はしない。そしてフレグの考えに、光、ティア、ブリッツも同意した。


 さて、当然戦士達だけではなく、光たちも訓練を行う。と言っても光はすでに神威参特式を十二分に動かせているので、他の三名を光が補佐する形になっていたが。


『やはり、基礎が重要ですよこれ。訓練は私もしてきていますが、やはり実戦は色々と勝手が違います。訓練と全く同じなのに、同じ道具なのに、完全に別物だと感じるなんて200年ぶりぐらいでしょうか』


 ティアがそんな言葉を漏らす。


『そうですね、今の状態では満足に銃を撃つ事など出来ないでしょう。無理に撃っても、味方に当ててしまう事になりそうですよ。我々もみっちりとやらないと、戦場のお荷物になってしまうでしょう。それでは、上に立つものとして示しがつきませんからね』


 ブリッツの意見も最もだ。上官である以上、相応の行動と結果は出したいものだ。間違っても足手まといになってはいけない。助けるべき側が足を引っ張るなど、あっていい事ではない。


『私達にとっては新しすぎる技術に存在だが、そんな泣き言は言ってる暇はない。神々の試練に真っ向から立ち向かえる時が来たのだ、この時を逃せば死んでも後悔し続けるだろうからな』


 そして、フレグ。どんな時でもイメージ通りに動かせるようになるために、彼は人一倍熱心に取り組んでいた。過去の失敗を繰り返す事の無い様に、彼の心にその思いがある限り、彼が基礎訓練をいい加減に終わらせるような真似をするはずもないが。


『我々もできうる限りサポートさせていただきます。何としても、決戦までには間に合わせましょう。今はとにかく、基礎訓練で機体を慣らしてください。ある程度機体を用いる事で、その機体をうまく動かすコツという物がつかめるはずですから』


 これが光の発言。機体の操作関連に関しては、日本皇国の自衛隊員たちに一日の長がある。なので、訓練中に困り始めた機体の所へ自衛隊員が駆る神威弐式が出向き、アドバイスする姿が見られるようになってきていた。



 そんな形で、この日の訓練時間が終わった。時間にして10時間ほど行った事になる。機体の燃料補給やトイレ、昼食などの休憩を取りつつではあるがそれでもかなりみっちりと行った。当然参加者は全員疲労困憊であり、簡単な食事を取り、身を清めるとすぐに就寝した。4人を除いて。


「訓練の内容はどう見ました? 今日一日じっくりとやりましたが」


 そう、光、フレグ、ティア、ブリッツはこの日の訓練がどうだったかを各国上層部と通信を繋いで話し合うという仕事が残っていた、なので当然眠れない。


『そうですな、動きが確実に良くなっていくのがはっきりとわかります。ただ、現状では前線に行かせて良いという感じはしませんな』『その点に関しては、こちらも同意するところです』『異議なし』『異議なし、まだ修練が足りているとは世辞にも言えないという意見はこちらも同じです』


 と言った形から入ったこの日の会議は大体1時間ほど続き──各国上層部からの反応は、大雑把に言えば訓練の成果は確実に認められる。しかし、あと最低でも数回は同じ訓練を行いより機体に慣れさせる必要があると言う事。こちらとしてもじれったい所はあるが、だからこそこの部分を疎かにしないようにしてほしいと、フレグの考えとほぼ一致する形であった。


「了解しました、ではもうしばらく基本訓練を重視する形で。幸い訓練はやや前倒しで進んでいます。ここで時間を使っても問題になる可能性は低いでしょう」


 光の言葉に、この会議に参加している全員が頷いた。こうして5月の終わりまでは基礎訓練を全員がみっちりやる事になり、武器を用いた訓練は6月からと決定した。翌日この事は宇宙ステーションにいる全員に通達され、共有された。


 また、実機が使われることになったが故に整備班にとっても新しい仕事が増え、こちらもいい訓練となっていた。だが当然忙しい分、整備班に直接いい経験になってるななんてこと言えばスパナの数十本ぐらいが口を開いた愚か者の所に飛ぶだろうが。人員も当然増やされてはいるのだが、練度が違う為に教える時間が必要となる為、まだまだ整備班の特にベテランに対する負担はなかなか減っていない。


 それでも時間は容赦なく進む。止まってくれることなどない。

ことしもあと1か月ですね。年末の更新ですが、12月の2週まではいつも通りやろうと考えています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点]  会議の時間『0』になってますぞ! 続いてない!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ