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5月27日

更新遅くて申し訳ない、今日は時間が取れました。

 あれから数日が経過し、今日で向こうから来ていた御三方とそのお付の方が向こうの世界に帰る日がやってきた。この数日御三方はそれぞれ色々な場所に出向き、日本を見て周ったと護衛のために忍ばせていた『忍』から報告を受けている。


「色々と世話になったな、光総理!」


 がっはっはっはと豪快に笑うガリウス。 ちなみに彼は肉料理を中心に食べ歩き、刀剣類を始めとした武器をよく見ていたらしい。


「本当に、此度は急な来訪にもかかわらず、ありがとうございました」


 頭を下げるフェルミア。彼女は野菜料理を中心に食べ、公園などの場所をよく訪れていたと報告を受けている。


「次、会うのはあちらでじゃな、色々と準備を整えて待っておるぞ」


 最後に沙耶がそう締めくくる。彼女は魚料理を特に食べることが多かったそうだ。また、妙に総理をよく見ていたと報告にある。


「後もうしばらくしたら、我々もそちらへと向かいます。その時は宜しくお願い致します」


 光の返答を受けた後に、ガリウス、フェルミア、沙耶、そしてお供の人達が魔法光に包まれた後に、大量のお土産と共に消え去った。


「光様、象徴の皆様による急な来訪にも寛大なる対応をしてくださり、ありがとうございました」


 フルーレが頭を下げ、各部隊長も皆いっせいに頭を光に下げる。


「ああ、問題はないから気にしないで頂きたい。だがフルーレ、貴女のお父上はなかなかに役者だな」


 頭を下げた異世界組に対し、光はそう告げる。


「役者、ですか?」


 イマイチ判っていないという感じでフルーレが首をかしげ、その動作にフルーレの長い金色のロングヘアが僅かに揺れる。


「ああ、あの姿はおそらく演技だ。 こちらを知るための……な」


 あの言動、あの行動はおそらくあちらのお三方の本来の姿ではあるまい。光はそう予想していた。


「そうでしょうか……」


 あまり納得できないフルーレ。自分の父はいつもあんな感じなのだが……と首を再び傾げるフルーレ。そんなフルーレを光は僅かに笑って見ていた。


 ────────────────────────


「無事帰ってこれたな」


「ですね」


「そうじゃな」


「「「「お帰りなさいませ」」」」


 自分たちの世界に帰還したガリウス、フェルミア、沙耶。帰ってきた自分たちの象徴を出迎える各国の代表たち。


 実は、今回の急な各国の象徴による地球への外遊行為はきちんと計画をされた上で実行に移された。したがって、『急に各国の象徴の三人が無理やり自分達が出向くようにわがままを通した』と言うこと自体が嘘である。こちらの世界にも『敵を欺くには味方から』と言う感じの言葉は存在し、地球に出向いている出向部隊にも今回の外遊計画に対する事実は一切伝えずにいたのである。


 また、各国の象徴ではあるのだが、『居なくなっても国が極端に傾かない』人達であると言うシビアな面も存在し、最悪地球で殺されても問題は少ないという部分まで考えられており、ここが日本の天皇陛下とはちょっと違うところである。


「ガリウス様、向こうの日本皇国の様子はどうでしたか?」


 そして、帰りしだいすぐさま三国共同会議が開催される。 内容は『日本皇国との付き合いの距離をどうするか』。まったく新しい国が訪れるとあってその距離感をどう保つか……この会議のため、三国の象徴は自ら地球に出向いたのだ。


「うむ……我としては、深く付き合っても問題がないと考えている」


 地球に居たときの豪快な格闘家と言う空気はまったくなく、そこには一国の王と言って差し支えない威厳を持つガリウスが居た。


「技術は戦うためにも用いられている部分があったのは事実だが、かの国は技術を楽しむことにも十分に振り分けておることも確認した。技術を鼻にかけ、いくさを吹っかける愚か者でもないと我は見た」


 静かにゆっくりと、だがこの会議に出席している者すべてに十分聞こえる重い声が会議室全体に響いた。


「お付として行動を供にした我々の報告ですが、我々をしっかりもてなすと言う心を感じました。どの店に入っても「いらっしゃいませ」と挨拶をくれます。我々だけの特別扱いではなく、店を訪れるすべての者に言っている光景から、我々が居るときだけの取り繕った姿ではない、と見ます」


 ガリウスに付き従っていた二名は店の店員の反応を例えに、喜ばしい人々である、との報告書を上げる。この報告書に会議場に居る人々の顔には、ほんの少しだが笑顔がこぼれる。


「なるほど、人格的に争い事を好む人達という線は薄いですね。もちろん魔法で始めに確認はしておりますが、やはり直に触れた様子の方がよりはっきりとするのは言うまでもありません」


 この会議の議長役を務める男がそうまとめる。


「次は私が報告します」


 フェルミアがそう声を上げる。回りは邪魔にならぬよう口をつぐみ、自然と静かになったところでフェルミアが口を再び開く。


「あちらの色々な場所を共の者と歩き回り、人の心を感じ、水晶にまとめ、占いを行ないました」


 これはフェルミアの得意技で、その国の人をランダムに選び水晶にその国に住む人達の心根を動物などに例えて見ることが出来るという魔法である。 フェルミアは、他の人達にも見えるように動物が写っている水晶球を机の中央に置いた、そして置かれたその水晶には一見亀の様に見える生物が映し出されていた。


「答えはこの姿になりました……タートルドラゴンです」


 タートルドラゴンとはこちらに生息している龍の一種であり、温厚かつ争いをあまり好まない亀を大きくしたようなドラゴンの一種である。 襲われると手足を引っ込め、耐えることでしのぐことを選択することが多いのだが、あまりにしつこく攻撃したり子供に対して暴力を振るおうとすると怒り出し、強烈な水のブレスで攻撃者を一気に排除する恐ろしい一面を持つ。


 会議場は少し騒がしくなった。「ドラゴンですか……」などの声も小さくではあるがフェルミアの耳にも入る。


「皆様が見たとおり、かの国の人々はまずは我慢をする性質があります。ですが、その性質に甘え私達が度を過ぎた行動をすれば死に物狂いで反撃してくるでしょうね、まさしく、タートルドラゴンです」


 そうフェルミアが告げると再び会議室は静まり返る。


「私達の付き合い方も、タートルドラゴンに習いましょう。 そうすれば争いの火種を生むことは少ないはずです」


 フェルミアの結論でまた会議室は小さく話し合う人々が増える。「今のところ、報告される内容は実に喜ばしいのでは」「そうですな、無闇に血を見ることもありますまい」などと和やかなムードが漂い始めた。


「もうほぼ言いたいことはないのじゃが、一応わらわも、な」


 沙耶の言葉にまた静まり返る会議場。


「とはいえ、人格や国のあり方などは、ガリウス殿、フェルミア殿が仰られた通り、好ましい物であると考えておる。 出向した部隊たちも向こうの生活を楽しんでいる様子も伺えておる。引退直前であったガリウス殿の部隊長の一人もあちらにまだ残ると言っておった、いい食事といい酒があると言っておったわ」


 ちなみに、この引退直前の部隊長とは清酒を好むおじいさんの部隊長を指している。


「そして、あの国のソウリと呼ばれていた光 藤堂じゃが。 そうじゃな、わらわの婿に迎えたくなった」


 この発言で一気に騒がしくなった会議場。「沙耶様、それは真ですか!?」と質問も飛び交っている。


「うむ、見ていたのは数日だけじゃが、なかなかの胆力の持ち主よ。それにわらわが率先して結婚し、子をたくさん成せば皆の希望にもなるし、明るい交流の第一歩にもなる」


 と沙耶はなんでもないように言っているが、ほほが僅かに普段より赤くウサギの耳はひくひくと落ち着きなく動き、普段の鋭い目がずいぶんと緩んでいることにガリウス、フェルミア他数名はしっかりと気が付いていた。


「ふむ。ヒカル殿は我が娘のフルーレと一緒になってもらおうと思っていたのだが」


 そう口を開くのはガリウス。


「結婚のお話は、またいずれ。ですが慎重なあなたがそんなことを言うとは思いませんでした、沙耶殿」


 とフェルミア。


「今までの話から、日本皇国とは三国とも親密なお付き合いをする、ということで宜しいでしょうか?」


 会議場の議長役からの問いかけにこれといった大きな反対意見は出なかった。 そしてこの会議の結果を受けて、日本皇国を出迎えるためのパレード開催が決定される運びとなり、お祭りムードが漂い始めたのである。

午前と午後一回更新は結構きつい(苦笑)。

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