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28日夜

 この日、光の家は炎に包まれた。物理的に燃えたという意味ではないが……幻で家が燃える姿を見てしまった人はいたかもしれない。


「フェルミア、お前ー!?」「ほほほほ、使えるものは何でも使いますわ」


 チョイスされたゲームは、十字に伸びる炎を生み出す爆弾を置きあって相手を吹っ飛ばして勝つという〇〇〇ー〇〇(有名すぎるタイトルなので、ほぼ全伏せ)であった。これを光がチョイスした理由は、ルールが簡単であり、特殊なアイテムを出さないようにする(リモコンとか、スライムボムとか、貫通ボムとか)事で、初心者でも覚えやすく理解しやすいからである。


 実際、最初の数試合はチュートリアル的な形で自爆もあり、対処法を教えたりと和やかな空気の中で進んだ。ガリウス、フェルミア、沙耶の3人がルールや戦い方を理解していざ勝負となって数試合後。最初の空気は完全に何処かへ避難してしまい、今はお互いがマジで殺しあうような剣呑すぎる空気を各自が漂わせながら試合が行われていた。


「ガリウス、お主!」「ハハハハハ、隙だらけだったぜ沙耶さんよ!」


 爆炎と策略が飛び交い、相手を何が何でも殺る(ヤる)気満々での勝負が続いてしまう。まるで今までのお互いの中にあったストレスをぶつけ合うかのように。


「そしてさっきの仕返しだ、フェルミアー!!」「返り討ちにしてあげますわ! 食らいなさい!」「グラブもってんのかよ、ふざけんな!」


 えー、こんな罵声を浴びせあっていますが、各国の象徴である皆様方でございます。しかし、すでにそんな考えはこの場には一切なく、やるかやられるかのバトルフィールドにおいては勝者が正義と言わんばかりの感情むき出しの爆弾を使った殴り合いが展開している。


「これでもくらえ!」「見え見えです……って沙耶、あなた!」「ふっふっふー、このミソ〇〇と言うシステムは良いの! こうして妨害できて~復活できるんじゃからの!」


 えー、このゲームはやられてしまっても画面周囲を動き回って妨害する爆弾を投げ込めるという救済措置があり、その攻撃でもしまだ生き残っている人を倒すことが出来た場合、倒した人と入れ替わる形で復帰出るのである。先ほどはガリウスの攻撃を避けた先に爆弾を置いて、ガリウスの爆弾に誘爆させて沙耶がフェルミアのキャラを倒したのである。


「だが、復帰したては弱い! 一気に倒させてもらう……ヒカルゥゥゥ!」「はっはっはっは、足元がお留守ですよ、ガリウス殿」


 そして復活した沙耶にばかり注意を向けてしまった事で、光のキャラにガリウスのキャラがぶっ飛ばされた。こんなやり取りを続けたことで、更なる乱入者が訪れてしまった。


「ガリウス様、ご無事ですか!?」「フェルミア様!」「沙耶様、今助けに来ました!」


 やっぱりいた護衛の人達が光の家に入ってきてしまったのである。そのあと説明を受けて、あくまで遊びがヒートアップしただけだと知って護衛の人達は胸をなでおろし……更に彼らも交じってしまった。その結果……


「ぎゃああああ!?」「ひっどーい!」「ガリウス様、こっちは味方です!」「勝ち残れるのは一人だけなのだ! 味方などこの勝負に限ってはいないぞ!」「じゃあ私こうします!」「ちょっと、なんで私を倒しに来るのよ!」


 同時対戦が16人までできてしまう事で、より阿鼻叫喚な地獄絵図がここに生まれてしまった。既に護衛対象だとか象徴だとかお構いなしに、倒せる奴はすぐに始末すると言う事が必須だと護衛の方々も理解してしまい……遠慮なくガリウス,フェルミア、沙耶に牙をむいた。もちろん、やられっぱなしな3人では無い。


「はははは、これが攻撃という奴だ!」「ほほ、甘いですね。こうすればもう逃げられませんよ」「安全な場所なぞない、仲良く燃え尽きるがよいぞ!」


 牙をむいた護衛達に対して反撃を加えて容赦なくぶっ飛ばす。そんな攻撃の合間を縫って光は強かに生き残る。そんな光の行動を見て他のメンツが潰しにかかる。もはや身分だとか職務だとかそんなもの関係なく、皆が全力で皆を潰しあった。あっという間に時間は流れ、晩御飯の時間となった。


「ここでいったん終わり!」「「「「「「ええええええ!?」」」」」」


 光の言葉に、他の面子が非難の意思がこもった声を上げた。まるで体だけが大きくなった子供そのものである。だが光はきっぱりと夕飯の時間なのでいったんここまで、夕飯と風呂を済ませたら再開すると宣言した。すると護衛の人達は一瞬で各自済ませてきますと言うが早いか、すぐさま姿を消した。


「夕飯はわらわが作ろう。なに、それなりの味でそれなりの物なら作れる。食材もある事じゃし、ここは任せておくがよい」


 と沙耶が夕飯の製作に取り掛かった。行動が普段よりもはるかに素早い。


「では私は沙耶の手伝いをしましょう。沙耶、作る物を教えてください」


 フェルミアはすぐさま沙耶のサポートに入った。2人はいくつかのやり取りを交わすと、すさまじい勢いで下ごしらえを始める。


「では俺は食器関連の事をやろう。出すときと食べ終わった後の洗いは任せろ。よくやってるからな」


 ガリウスも自分の仕事を決めて動き出した。


「じゃあ私は風呂を掃除するか……ちょっと行ってくるので、ここは任せますよ」


 なので光も自分がやっておくべき事を済ませるために動き出した。くどいようで申し訳ないが、皆いい年した大人である。なのにゲームを早く再開したいと言う一念で、素早く各自出来る事を見つけて仕事を始めたのである。良い事なのか悪い事なのかは、皆様の判断に任せる事としよう……


 そして食事を終え、後片付けも済み、風呂も入ってさっぱりした。後は寝るまで容赦ない潰しあいである。皆すでに臨戦態勢に入っており、闘気も殺気も一切隠していない。おかげで光の家からそこそこ離れた所で飼われている犬は吠え、猫は落ち着きなく歩き回り、小鳥たちは巣の中に逃げ込んで身を小さくした。それくらいの威圧が周囲360度満遍なくばらまかれていた。実にいい迷惑である……かけている彼らに自覚は無いのだが。


「では再開する」「「「「「「うおおおおおお!!!」」」」」」


 もはや性別すら関係なかった。ただ周囲の15人をなぎ倒し己がトップに立つ。それだけしか彼らの頭の中にはなかった。START! の文字が消えるや否や、素早くアイテムを回収し、近くにいる奴をぶっ飛ばすと殺意むき出して動き始める各自の〇〇〇ー〇〇。キックで爆弾を滑らせ、グラブで持ち上げて投げつけ、パンチで脱出する。アイテムを拾えなかったものは容赦なくぶっ飛ばされ、ミソ〇〇からの復帰を遠慮なく狙う。


「てめえ!」「よくもやったわね、絶対次でぶっ殺す!」「なんで2人して俺を狙うんだよ!」「「あんたが一番勝利してるからよ、つぶれなさい!!」」「ぶっ飛べ!」「そっちがな!」


 ──もはや敬語などどこにもなかった。ぶっ飛ばされた方は恨み言を口にし、勝者はただあざ笑う……とそこに飛んできた爆弾でぶっ飛ぶと言うカオスな空間が出来上がっていた。それでも皆、ただ一つの勝者の椅子を巡って感情むき出して争いあった。そして最終的に一番勝ったのは──


「まあ、一応一番経験があるからなぁ」


 光であった。それでも試合は二転三転し、光は何とかぎりぎりで勝者の椅子を確保しただけに過ぎない。周囲もそれは理解している。なので当然「もう1回!」の声が上がるわけなのだが。


「気持ちはわかる。だが、まず外を見てくれ」


 光の言葉を聞いて、皆が外をガラス窓越しに見ると既に深夜であり真っ暗である。時計はすでに11時を回っていた。


「夜も更けた。さすがにそろそろ今日はお開きだ。安心してくれ、勝ち逃げはしない。明日の午後からまた勝負をする、それでいいだろう?」


 勝ち逃げは許さない、と言う視線に負けた光はそう妥協案を提示した。その言葉を聞いて納得した彼らは、静かに解散した。しかし、各自の心の奥にはすでに十字の爆炎が深く刻まれている。明日はますますやる気満々で戦いの場に降り立つだろう……

今回の話を一行で言うと、


『身分も性別も乗り越えてゲームで盛り上がった』


以上。ただし盛り上がり過ぎて危険な空気も漂っていたことからは目を背けたいが。

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― 新着の感想 ―
[一言] 爆弾男か……(青春の光と闇が脳裏をよぎる こんな真剣になるほど楽しまれていて何よりです!!(^o^)
[気になる点] > もはや身分だと職務だとかそんなもの関係なく もはや身分だとか職務だとかそんなもの関係なく 修正してなお間違えるって‥
[一言] 桃鉄とかドカポンを選ばなくてよかった。 (ゲームを知らない人にやらせるものじゃないけど) あと、この世界の戦士とかは熱くなりすぎるとコントローラー握りつぶしそう。
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