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28日朝

 トラウマを抱える夢を見せられた光が目を覚ます。睡眠時間的には十分寝ているはずなのだが、光の顔には生気があまり感じられない。まあ、あのような夢を見せられれば無理もないだろうが……ご愁傷様としか言いようがない。


 少々よろけるような形で布団から起き上がり、服装を着替えて朝ご飯を作ろうとキッチンに向かう途中で光が見たものは……酔いつぶれてあられもない姿を晒して大いびきを立てて寝ているフェルミアと沙耶の二人の姿だった。


(何というか、すごい格好だ……あの後ただひたすらに酒を飲んでそのまま寝てしまったのか)


 服がはだけている女性と言うのが好きな方はそこそこいらっしゃるかもしれないが、その姿にとてもじゃないが色気も何もあった物ではない。虹色のしずく(つまりゲ〇)が飛び散っていないだけよしとしたい。


(こりゃ朝ご飯はおかゆだな……あそこまで酔っぱらった後にまともな物は食えないだろ……あと食事の後にスポーツドリンクを用意しておかないとなぁ)


 二日酔いには水分補給が対処法となる。要は一種の脱水症状に陥っているので、水分を取らせる必要があるのだ。本当なら寝る前に水分補給をした方が良いのだが……昨日のあの二人の様子ではそんな事は一切考えていなかっただろうなと光は予想する。


「よう、ヒカル殿。寒いがいい天気だな」


 起きてきたガリウスが光に朝のあいさつ。寝っ転がって高イビキの二人の事を意図的に見ないようにしている様であるが……


「ああ、ガリウス。済まないがあの二人を起こしてきてくれないか? そろそろ朝ご飯を「ヒカル殿は俺に死ねと言っているのか!?」」


 小声で必死の絶叫と言う器用すぎる発言をしたガリウス。顔には汗がいくつも浮かび上がっている、つまり本当に怯えているのである。大の男でマッスルな男で戦士な男が怯えているのである!! しかし、そこに光は容赦ない一言をかける。


「いや、こちらは朝食の用意がまだ残っているから手が離せないんだ。軽く声をかけるだけでいいんだ、何も体をゆすって起こしてくれとは言わない」


 しかし、高いびきをかいて寝ている二人にそんな行為が意味を成すのかは怪しい所である。しかし、確かに光が朝食を作っている以上起こしに行くのはガリウスと言う事になる……しぶしぶガリウスが二人に近づき、そっと、それこそ蚊が囁く様な感じで「朝だぞ、起きてくれ」と口にした。その途端……


「うるさいわね……あと4時間ぐらい寝かせて頂戴」「うむ、それぐらい寝たい。今日は休みじゃ」


 そう言うが早いか、再び高いびきを上げようとする二人。そこに朝食の準備をすべて終えた光が現れてこう言い放った。


「じゃあ二人の朝ごはんは無しになるのだが、それでいいのかな?」


 光の声を聴いた二人の反応は早かった。一気に起き上がって「「食べます(るのじゃ)」」と同時に発言。この反応を見たガリウスはボソッと一言「やっぱり俺が声かける必要なかったじゃないか」と呟いていたとかなんとか。とにかく、朝食のおかゆと小さく切った豆腐を浮かべたみそ汁を出す光。おかゆの上に乗せる具もいくつか用意している。


「あいたたたたた……」「ううー、ずきずきするのじゃ」「二人とも飲み過ぎだぞ……」


 やっぱり二日酔いにかかっていたフェルミアと沙耶の二人にガリウスが白い目を向けながらおかゆを口にする。そのまましばし4人とも無言で食事を進める。そして、ガリウスが口を開いた。


「そこそこうまいとは思うが、食いごたえがないな……」


 少々不満そうに口にするが、光がすぐに理由を告げる。


「ああ、でもそこそこ重い物を出すと二人ほど食事が辛いと思われるメンツが居るのでな……」


 と、そっとフェルミアと沙耶を見ると、二人ともあえて聞かないふりをしたままおかゆを口に運んでいた。二人とも流石に色々恥ずかしいのだろう。光の家に来ておいて、その後派手に酔っぱらって今も衣服は最低限整えたただけと言うみっともない姿。色々見せたくない自分を見せてしまい、居心地が悪いことこの上ないと完全に目が覚めた二人は内心で痛いほどに思っていた。


「二人とも、落ち着いたらシャワーだけでも浴びておいてくれ。一通りの身支度は出来るだけのものはそろっているはずだからな」


 朝食を終えた後、食器を片付けながら光が言う。一方で食事を終えた二人は、先ほど口にしたものに興味を持っていた。


「のう、光殿。先ほど出してくれたものはなんじゃ? 酒を飲み過ぎた翌日は昼まで水ぐらいしか入らないのじゃが、今日出された白いものとみそ汁という物は無理なく口にできたのでのう」


 沙耶の言葉に、光は内心で首を捻る。おかゆに近いものはこちらに存在しないのだろうか? とりあえず光はおかゆの説明を二日酔いのフェルミアと沙耶の頭に響かない程度の音量に抑えて説明を行った。


「穀物をそのようにする文化は無かったですね……大体緩くするものと言えばもっぱら果物ですね、私の国は」


 二日酔いをこらえつつ、フェルミアが自国の料理に関する情報を口にする。


「二日酔いになったら、水だけ飲んでろって感じだからなぁ俺の所は。なった奴が悪いって考えで、いちいちそういった奴に合わせた料理という物は無いな」


 これはガリウス。酒を飲むなとは言わんが、深酒をして無様な姿を見せた場合のフォローが一切ないのは国の性質のみたいなものである。なお、酒によって戦士らしくない暴行をした場合の罰則もかなり重い。力があるからこそ己を律せと言う考えがマルファーレンスという国には根底に存在しており、力ある者は心も強く、そして優しくあらねばならぬとしている。


「こちらもこの手の料理に使う物は果物じゃなぁ、穀物をこうして柔らかくして食するという文化はこちらでは芽生えなかったのう。やはり、世界が違うとこういった違いを知ることが出来て面白いの」


 お茶を飲みながら、沙耶も己の感想を述べた。確かに果物を柔らかくして食べるのも一つの方法だ。果物でも栄養が高いものは多数存在しているので、それでも十分やってこれていたのはおかしい事ではない。


「まあ、お酒を多く飲んだ後は寝る前に水分を多く補給することをお勧めしますよ。そうすれば二日酔いになりにくくなりますから。もしくは、こういった物もありますね」


 光は冷蔵庫から取り出したスポーツドリンクをコップに注ぎ、3人の前に置いた。3人ともにコップを手に取り、口に含む。飲み干してからややあって……


「ふむ、味はそこそこいいな」「飲みにくい、と言う事はありませんね」「うむ、口当たりは良かったの」


 と三者三様の感想を述べる。そして視線が向けられた光は説明をする。


「先ほど飲んでもらったのがスポーツドリンクです。体が失った水分を吸収しやすいように調整されており、大量の汗を流した後などに飲むと良いとされています。二日酔いも体の中にある水が失われることで引き起こされる現象なので、その分の水を補給する事ができるスポーツドリンクは有効と言う訳です」


 光の説明を聞いてもう一杯貰いたいと目で訴えてくる3人に、光は3人のコップにスポーツドリンクを注ぐ。今度は3人とも、じっくり味わうようにしながら飲んでいく。


「体が吸収しやすいように調整した水を作り出す、か」「そう言う考え方をしたことなど、一度もありませんでしたね」「興味深いのう。光殿、これはいかほどする品なのか、教えてもらえぬか?」


 そして光からスポーツドリンクの値段を聞いて3人ともに驚く。その値段の安さに……是非帰る前に買っておこうと、心の中で3人の考えが一致した瞬間でもあった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 寝汚い姿を見せて・・・・・・それでも落とせると考えているんか強国二大トップ様がた・・・・・・ [一言] 最悪塩と砂糖と水とで出来ますしね経口補水液。
[一言]  開発し、子供の小遣いで買えるようにしてくれた、偉大なる先人たちに敬礼!  うちはポカリ派です。
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