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11月3日

「今日、ここに集った200機にもわたる鋼の戦士達による4国合同の模擬戦を開始する!」


 フレグの言葉に、詰めかけた観客たちから歓声が上がる。晴れ渡った秋空の下、歴史上初めての4国合同の模擬戦が行われるため、既に観客たちの興奮はすごい事になっている。


「この1歩が、神々の試練に我々が初めて打ち勝てる未来へと繋がるのだ! 各勇士達の素晴らしい奮闘に期待する!」


 今度は万雷の拍手が巻き起こった。その拍手の中、各機が入場してくる。その機体のサイズに見合った足音を響かせつつ闘技場に入ってくる姿に、誰もかれもが釘付けとなった。そしてきっちりと整列し、一同で礼をする。


「ルールは今回もハーフダウンエンド、戦闘時間は4時間とする! 今回もシールドが剥がれた時点で自動退場となる。退場して動かなくなった機体への攻撃は固く禁ずる! まあ、今まで通りのルールという事だ、問題はないな?」


 フレグの確認に、全ての機体が了解の意思を示すために手を上げる。それを確認したフレグは満足げに頷いてから再び言葉を発した。


「よし、皆にルールは行き渡っているようで安心した。では模擬戦開始は10分後だ、それまでに陣形などを整えよ!」


 両陣営……ここでは東軍西軍と明記する事にする──両陣営は前もって考えていた陣形を取るべく行動に移る。東軍側はブレイヴァーを先頭に脇を神威・弐式が固め、そのやや後ろにソーサラーが陣取り、最後尾にランチャーが陣取った。ランチャー達は主にアンチマテリアルライフル系統の遠距離からでも高いダメージを出せる物を最初に構えている。


 一方で西軍側だが……最前列にブレイヴァーという点は変わらないが、次に並んでいるのがランチャー、そのランチャーの両翼を神威・弐式が固めて最後列にソーサラーが位置する形を取った。西軍側は東軍側よりブレイヴァーの盾が大きいものが多く、ランチャー達はバズーカなどの爆発武器を主に使用しているのが東軍側との大きな違いと言えるだろう。


「両軍とも、準備は良いな? では、10分が経過した。模擬戦、始めー!!!」


 フレグの開始の言葉と同時に、でかい銅鑼モドキが高々と鳴らされて開始の合図となった。両軍とも最初はブレイヴァーが相手に向かって駆け出していくが、大盾を構えている西軍側の方が動きは遅い。初手はやや西軍側の方が押され気味の形で始まった。ブレイヴァー同士が激しく近距離で打ち合うが、ここはまずは互角の戦闘が繰り広げられる。


 次に動いたのは東軍のランチャー達。アンチマテリアルライフルを構え、西軍のソーサラーに向かって発砲する──が、ここで西軍の神威・弐式が展開した防御フィールドによって直撃した弾はなし。多少掠ったりしたものはあったが、致命傷には程遠い。東軍のファーストアタックは失敗したと言っていいだろう。


 そして待ってましたとばかりに西軍側のランチャーが動く。東軍の初手を凌いだ後に反撃する、という作戦で動いていた彼らはバズーカを構え、狙いを定める。その狙いは、今なお真っ向勝負真っ只中のブレイヴァー達。東軍のブレイヴァーの背面に爆発武器をぶち込み、一気に削り取る。その爆発に耐える為に、自軍のブレイヴァーには大盾を持ってもらったのだ。


 そして放たれる多数の砲弾。しかし、この西軍の作戦を阻止したのは東軍の神威・弐式とソーサラーだ。相手側のブレイヴァーが全員大盾を持っている、そしてランチャーがバズーカを持っているという事で警戒していた神威・弐式と、素早く動けるようにすかさず支援魔法を神威に向けて発動したソーサラー。これによって最前線のブレイヴァーの背後を護るように神威・弐式が防御フィールドを展開。砲弾は全てフィールドで防がれて東軍のブレイヴァーに被害を与える事は無かった。



「初めからかなり激しいぶつかり合いだな」「ですが、双方とも良く攻め、良く守っています」「均衡が崩れるのは何時ですかね……崩れた後立て直せるのかそのまま行くのかも気になりますが」「今はまだお互い小手調べ的な所もあるのでしょう」


 一方で、この戦いを眺めているフレグ、ティア、ブリッツ、光の4人も興奮気味に模擬戦を見ている。


「今回出したブレイヴァー乗りは卓越した技術を持つ者50名を選出したが……他の国の勇士達も見事な動きをしている。ソーサラーの支援、ランチャーの射撃、カムイの遊撃性能、どれも素晴らしい」


 フレグの言葉に、ティアが続く。


「そうですね、私達の方でも魔法の威力だけでなく制御にも優れた者達を出したのですが……ええ、良く働いてくれています。もっと練度を上げればもっと強くなれるという事を、乗っている皆が感じながら戦っている事でしょう」


 ティアがそう話せばブリッツも口を開く。


「こちらは言うまでもなく射撃の精度……そして他機の邪魔をしない射撃位置にも気を使えるメンバーを出しました。両軍共にそれを理解した上での運用をしてくれているようです……これだけの動きを各国の代表達が行えるのならば、神々の試練に立ち向かう時の連携もすぐに習得できるでしょうね」


 両方とも、大きく陣形を崩すことなく、被害を出すことなく一進一退の戦いを繰り広げている。すでに神威・弐式やブレイヴァーはビット系の武装も使い始めている。ランチャーとソーサラーは温存している点も同じだが……戦闘はより激しくなっている為、使い始めるのは時間の問題だろう。


「ヒカル殿は何か言う事は無いのですか?」


 ブリッツから話を振られた光は苦笑いを浮かべながらこう口にした。


「皆様に言いたい事を全て言われてしまいましたよ。各国の機体はそれぞれの色を出しながらよく連携しています。正直、初回の合同模擬戦でここまでの連携を見せてくれるとは思っていませんでした。これならば、来年の展開はもっと明るい物となってくれると、誰もが思っている事でしょう」


 光の言う通り、観客席ではその話でもちきりとなっていた──



「すげえな、初回だからちぐはぐな動きが多くなるじゃねえかって予想も多く出てたんだが、そんな事ねえじゃねえか!」


 マルファーレンスからやって来た観客が吠えると、周囲からも声が上がる。


「ソーサラーの支援を上手く受けて何処の国の機体も動いていますね。何処が一番、という事は無く各国ともに強みがあるという事なのでしょう」


 フォースハイムの観客の言葉。


「射撃の巧みさならうちらが一番だと思っていたんだけどなぁ……ブレイヴァーもカムイもなかなかやるじゃない。もっと訓練しないと、ちょっとあぶないかもねえ」


 こちらはフリージスティの観客。


「これだけの機体が一堂に集まってこんな戦闘をやる……くっそ、この光景を見せたかった今は亡き同士が多すぎるぜ……」


 そして日本からの観客。彼はどうやら、同好の士が求めていた光景を自分だけが目に出来ている現実を考えて、涙が止められないようである。そんな各国からやってきた様々な観客達もそれぞれに思う所、考える所が多くあった。


そんな彼らの視線を受けながらも模擬戦は続き……均衡が破れたのは戦闘が始まって3時間が過ぎた頃であった。

今年最後の更新となりました。今年も多くのご迷惑をおかけしました。

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