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5月29日~6月2日

 昨日、ソーサラーの調整が全て終わり、本格的に量産が始まったと光の所に如月司令からの連絡が入った。これで、神威・弐式、ブレイヴァー、ソーサラー、ランチャーのすべてが量産されて来年の年末までに必要数を揃える為に作られる事となる。なので、次は本格的に前線基地となる宇宙ステーションの建設計画がスタートした。


 この計画をきちんとすべての国で共有するために、光はこの日各国から使者を招き、官邸内にて大臣達と共に如月司令から今回の計画を説明する場を設けた。世界全てに関係する事なのだから、日本皇国一国で勝手に事を進めるわけには行かない。きちんと連絡し、内容を理解し、共有しなければならない。


『大まかな設計図はもう出来上がっています。皆様は手元にある資料を確認してください』


 日本に集まってもらった各国の使者達に、宇宙ステーションの設計図や建設の進め方が公開された。外見だが、大雑把に言えば球体状の中央にドーナツの様なリングを外周部に配置。いくつもの通路を兼ねたシャフトで両者を繋げるという物。中央は各国の機体を収容し、修理やパーツの取り付けを可能とする工場がメインで、周囲のドーナツ状のエリアが居住区となる。


 当然それらを詰め込むわけなのだから宇宙ステーションのサイズはでかい。規模は一国の領土が丸々入るレベルとなる。それぐらいのスペースがなければ、前線基地としての役割を果たせないというのが如月司令を始めとする技術班の考えの様だ。無論居住区も宇宙と言う場所で溜まるストレスを減らすために極力地上の環境を再現する事になっている。


「とんでもない規模ですな。資材がどれだけ必要になるか……」


 マルファーレンス帝国からやってきた使者の中からそんな声が上がったので、すかさず如月司令がその点を補足する。


『確かに、この規模の宇宙ステーションを作るとなれば資材の問題が上げられます。ですが、既に小型衛星を飛ばして確認したからこそ言える事があります。それは、宇宙には我々が使いこなす事が可能な資源が豊富にあるという事です。ですので、基礎の部分だけは資材を宇宙に持ち込まねばなりませんが、そこから先は宇宙に漂っている資源でステーションの製作に必要な材料を出来る限り揃えます。その後はその資源を用いて、各国専用の機体の強化や修繕を行う資材の製作も視野に入れています』


 この如月司令の発言に、各国の使者達はざわめいた。まさか戦いに行くだけでなく、資源すら星々の世界から調達しようなんて話が出てくるとは完全に予想の外の事。だがら、こんな質問が出てしまうのも無理のない話だろう。


「そのような事が可能なのですか!? 正直、こちらの想像を遥かに超えているのですが……」


 声を出したのはフリージスティ王国の使者。無理もない、ほんの少し前までは星々の世界──宇宙に飛びだってそこで神々の試練を迎え撃つという考えすらなかったのだ。それが日本皇国が来てからというもの、今までの常識が粉微塵になる感覚を味わってきた。それでもなお、今回の如月司令の計画は衝撃的であった様だ。


『もちろんです。できもしない事や希望的な予測を元に計画を立てるような真似は致しません。まず、これをご覧ください』


 如月司令が映し出したのは、いくつかの鉱石であった。


『総理は分かっていらっしゃると思いますが……他の皆様には先に申し上げておきます。皆様が星々の世界と呼んでいる世界には、我々の体を蝕む毒のようなものが存在しております。これらは地上に下ろす前にそれらの毒を徹底的に排除しておりますことを最初にお伝えしておきます』


 大事な事なので、如月司令はそう釘を刺した。如月司令の言う通りこれらの鉱石はきちんと洗浄を行った上で地上に持ち込んでいる。こちらの世界でも宇宙には放射線を始めとした人体に有毒な物がいくつも確認されていた。それらの対象は……この時代の日本には当然存在している。何せ、4000年ともなれば地上の素材はほぼ採り尽くされている為、自然と宇宙に求めるようになっていったためだ。


「なるほど、やはり一筋縄ではいかぬものなのですね……私達が下手に真似をすれば、惨事しか引き起こさないでしょうね……」


 フォースハイムの使者が静かに呟く。その呟きはマルファーレンスやフリージスティの使者の耳にも届き、彼らも静かに頷いていた。


『そして、こちらの鉱石ですが……精製してみた所、耐久性、柔軟性を両立させる素晴らしい素材になる事が判明しました。宇宙ステーションの外壁はこの素材を主体としたものとなりそうです。もちろん合金も作りますので、この鉱石を精製する事で得られる鉱物をそのまま使うかどうかはまだ未定ですが』


 いい素材が手に入ったのに、更に手を加えて改良を図る。この辺は日本人の考えの一つだろう。良い物が出来たからそれで良しとはせず、更なる改善を図る。そうやって技術を積み立ててきたからこそ、日本はぎりぎりの所まで来てはいたが潰れる事無くその命脈を繋げる事が出来たのだろう。


「なるほど、此処迄計画が出来上がっていて、具体的な進め方もきちんと明記されている。更に資材の問題も対策済みですか……これならば、本国に持ち帰っても反対される事はまずないでしょうな」


 マルファーレンスの使者は、渡された資料を読み終えて如月司令の説明を聞いた上でそう結論を出した。フォースハイム、フリージスティの使者も同じ意見のようでこれと言った異議が出る事は無かった。


『改めて申し上げます。こちらの前線基地となる宇宙ステーションがあれば……神々の試練で武装が消耗した時の補給所、兵士の皆さん疲労が溜まった時の休息の場として、活用できることは間違いありません。建設をする許可を頂けることを切に願います』


 そんな如月司令の言葉を聞いて、各国の使者は情報を持ち帰り、報告した──



 マルファーレンス


「フレグ様、これはとてつもない計画ですな」「ああ、しかしあの人々が出来るというのであれば本当にできるだろう。そもそもブレイヴァーの様なゴーレムに乗り込んで戦うという考え自体が、すでに我々の常識の外なのだからな。しかし、なるほど。すぐに戻れる前線基地があるというのは確かに心強い」


 部下とともに、フレグは宇宙ステーションの資料に目を通していた。


「確かに、転移は気軽に使える魔法ではありませんからな。ならば星々の世界に前線基地を作り、そこから出撃するなり補給を受けるなりした方が現実的でしょう。むろん、こんなものを作れるとあの国の人々が言わねば考える事すらありませんでしたが」「しかも、ただの前線基地ではなく居住も出来るのだろう? 計画書にもあるが、住居は出来るだけ地上を再現する事になっている様だ」「神々との試練は1日2日で終わる時もあればそうでない時もありますからな。休息を取れる場所があるというのは大きいかと」


 特に反対意見は出ず、了承する流れに向かっている様である。



 フォースハイム


「──とんでもないとんでもないと思っていましたが、ここに来て更にとんでもない事をぶち上げましたね……」「星々の世界に砦を作ってしまおう……ですか。どうやったらここまでとんでもない計画をここまではっきりと手順を踏まえて出せるのでしょうか?」「しかし、その有用性は確かです。横になって休める場所があるのは、精神力の回復に大きく寄与します」


 ティアも部下と一緒に、宇宙ステーション設計計画書を読み漁っていた。有用性もすぐに理解できたし、あるとないでは神々の試練における兵士達の疲労の差は歴然とするだろう。だが、今までの常識をさらに3回転半捻りするかのような、あまりにも荒唐無稽なと思える内容であるが故に、会議はかなり荒れた。


「出来る訳がない! そう言い切るのは簡単ですが……」「ソーサラーなるゴーレムを作り上げているのだ。彼らならもしや、と言う所がある」「正直に言えば、欲しいですね。やはり前線に砦があるというのは兵士達に心の余裕を与えるでしょう。ある程度手傷を負ったら下がれる場所がある、と言うのは大きいですよ」


 が、最終的には前線基地があった方が良いのは間違いないという話にまとまっていく。半信半疑な所も多いが、それでもソーサラーという一つの結果を出している以上可能性があるのは事実であるという所を誰も否定できなかった。最終的に、やらせてみた方が良い、と言う形で長丁場に渡る会議は終わった。



 フリージスティ


「計画はきっちり練られたものであり、無理がない」「組み立て速度も現実的な数字である。否定すべき場所が見当たらない」「場所が神々の世界でなければ、即座に了承していい。それだけの完成度であることは疑う余地もない」


 先の2カ国と違って、フリージスティでは如月司令が出した計画書の内容を吟味し、その内容に不備が見当たらないと言う所から話が始まっていた。


「皆が見ても同じ意見ですか。ええ、この計画書はよく出来ています。確認するまでもない事ですが、一応聞いておきます。この前線の砦が出来る事で我々が得るメリットの大きさは分かっていますね?」


 ブリッツの言葉に、この場にいる全員が頷いた。


「補給、休息、どちらも欠かせぬ」「うむ、疲労した兵は元気な兵の半分も働けぬ」「弾薬を失ってもすぐに補給できる場所があるのは精神的にも助けとなる」「この計画に反対する理由が私には見出せない。この砦が無ければ、兵士達の肉体的、精神的両方の負担は間違いなく倍以上に増えると見ている」


 それらの意見が出揃った後、ブリッツは頷いた。


「では、この施設の建造を我が国は認めるという事で良いですね?」「「「「異議なし」」」」


 荒れたフォースハイムと違って、フリージスティではあっさりと了承する事になった。フリージスティでは魔法に頼り切らないという国の方針が原因で、機械に対する知識が先の2国よりも多かったことが理由だろう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この功績を生成する事で得られる好物をそのまま使うかどうかはまだ未定ですが』 [一言] 宇宙ステーションとなれば、 軌道エレベータとかの出番もありますかね?
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