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5月19日

 3日後。神威・参特式に乗って光は現地入りした。機体が身につけている装備は草薙の剣、八咫鏡、八尺瓊勾玉……のプロトタイプ。更に頭部バルカン、胸部内臓ガトリングガンが追加されている。なお、長門と大和の分身体もコックピットの中に用意されている専用座席に乗っている。


 現地入りした光を、フォースハイムの魔法使い達は全員敬礼で出迎えた。神威・参特式から降りて、現地の指揮を取っている指揮官と光は握手を交わす。


「始めまして、光殿。この場を預かっているロウと申します」「ロウ殿、今日はよろしくお願いいたします。さっそく、詳しいお話を伺いたい」


 光の要望に、ロウが頷き喋り始める。だが、聞いた話は先のティアと大差はない。今は例のソウル・ガーディアンとの接触を避けて、掘れる所から鉱石を掘り出している状況であるという。


「何とかある程度の鉱石は掘り出せていますが、このままではティア様から要求されている量には届きません。他の場所でも鉱石の掘り出しは進んでいますが、ここの掘り出しを諦めると、他の場所の負担が跳ね上がってしまいます。ですので何とかソウル・ガーディアンと和解できれば……そう思い、光様においで頂いた訳でして」


 上と現場の意見の違いがない事を確認した光は、再び光は神威・参特式に乗り込む。飛行魔法を使って空を飛ぶ数名のフォースハイムの魔法使いによる先導を受け、ソウル・ガーディアンがいる場所へと移動。だが、当然ながら神威・参特式の大きさから鉱山となっている洞窟の中に入ることは出来ない。


「どうなさいますか?」「この鉱山の外から例の場所へと向かう事としよう。ソウル・ガーディアンに一番近い場所を教えて欲しい」「了解しました、先導いたします」


 なので、外から一番ソウル・ガーディアンの存在している位置から近い場所へと先導して貰って、フォースハイムの魔法使いには距離を取ってもらう。


「では、これからソウル・ガーディアンとの対話を試みます。安全策を取りたいので、皆様は距離を取ってください」「了解しました、我々は距離を取って待機します」


 十分な距離をフォースハイムの魔法使いが撮った事をレーダーで確認した後、光はゆっくりと鉱山の外壁を叩いた。そう、ノックである。


『──何の音だ? 近頃ここに現れるようになった同郷の者か? だが、この様な姿になってしまったわしの声など彼らには2度と届かぬからな……』


 そんな、老人のような声が光の耳に届いた。光は聞こえたか? というアイコンタクトを長門と大和の分身体を取ると、二人とも頷く。自分の気のせいではない事を確かめた後、光は声の主に語り掛けた。


「いえ、聞こえていますよ。ソウル・ガーディアンとなられた方。なぜそこに居るのか、お話を伺わせていただいてもよろしいでしょうか?」


 光の声に、ガタガタという音が。それは親が突然掃除をするからと、子供の部屋にノックをせずにずかずかと上がりこんできた時の子供がする慌てっぷりによく似ていた。音が収まり、そこからさらに数分ほどが経過した後、再び光の耳に声が届いた。


『まさか、そんな事が……しかし、だ。確認を取りたい。本当に聞こえているというのであれば、今から言う言葉を繰り返してほしい。神々の試練に、我は永久に屈さぬ! と』


 それでこちらが話をすることが証明できるのであれば安い物、と光は考えてすぐさま「神々の試練に、我は永久に屈さぬ!」と返答を返した。


『──信じられぬ。だが、だがこちらの発した言葉をまさか完全に理解して返答をすることが出来る存在が現れるとは。この身になってからは、孤独の中で戦い続けねばならぬと覚悟を決めて研究を続けてきたが……まさか再びこうして会話をすることが出来る日が来るとは……』


 すすり泣くような声がしばらく聞こえてきたので、光はしばし静かに待った。やがてその音が収まってから聞こえてきた声は……


『直接、その姿を見たい。わしが今から外に出るから、少しだけ後ろに下がっていて欲しい。戦いの意志は無い、あくまでわしがそちらの姿を見たいだけだ。良いか?』「問題はありません。少し下がります」


 中から聞こえてきた要望に、光は素直に神威・参特式を少し後ろに後退させる。光が「後ろに下がりました」と伝えると、鉱山の外壁から6メートルほどの淡く輝く老魔術師の姿をした存在が姿を現した。事前に聞いていた姿と一致する事から、このソウル・ガーディアンこそが話し合いをしなければならない相手なのだと光は確信を持った。


『ふむ? むむ? ゴーレムなのか? しかし、先程の声は間違いなく人の声であったはずじゃが……』「ええ、そうです。あなた方がゴーレムと表現する存在の内部に乗り込んでいるのが話しかけている私です」


 光のゴーレムの中に乗り込んでいる、の言葉に老魔術師のソウル・ガーディアンの表情が驚愕の色に染まった。


『そ、そのような事が可能だというのか!? 信じられぬ! いったいどこの国がそのような技術を生み出したのだ!? マルファーレンスか? フォースハイムか? フリージスティか? そもそも本当に中に居るのか? 外部から何らかの声を届ける魔法がゴーレムにかけられているという方が納得がいくぞ!?』


 この言葉に、光は迷った。自分の姿を見せるかどうか……が、ここで実際に見せた方が納得してもらえるだろうし、目の前の老魔術師の姿をしているソウル・ガーディアンには一定の理性もあると判断した。なので光はコックピットを開け、自分の姿を見せた。


『──信じられぬ。信じがたい。しかし、しかし確かに貴殿はゴーレムの中に居る! それは間違いない現実だ。いったいこのゴーレムはなんなのだ……解らぬ、我が知識では欠片もその実態が理解できぬ! 教えて欲しい、貴殿は何者なのだ?』


 老魔術師の姿をしたソウル・ガーディアンの問いかけに、光は今までの事をすべて説明した。光を始めとした日本人が此方の世界に国と土地ごとやってきた事。このゴーレムは日本皇国の持っている技術に、こちらの世界の3カ国が持っている魔法技術を融合して生み出した存在である事。もちろん最後に──


「このゴーレムの存在意義ですが、神々の試練に立ち向かう為です。かつて、ある偉大な魔術師が神々の試練から一つの街を守り抜き、最後に星々の世界に行ければ……と言い残して亡くなられたそうです。その願いを私達が今、叶えるのです。このゴーレムに乗り込む事で、星々の世界であっても活動する事が可能となります。そうなれば、神々の試練が地面に落ちてくる前に破砕する事が──」


 と、光がここまで喋ったところで、今度は満面の笑みを浮かべる老魔術師の姿をしているソウル・ガーディアン。


『素晴らしい! 実に素晴らしい! まさにわしが求めていた答えその物ではないか! そう、その通りだ。神々の試練が空から地表に落ちて来る所を迎え撃つという作戦では限界がある! だから、落ちる前に処理するという考えに行きつく。しかし、その方法をどうすればいいのか……わしはその実現を目指して、このような姿になりながらも研究を続けていたのだ。だが、まさかこのような形で答えを知ることが出来ようとは……』


 何度も頷く老魔術師の姿をしたソウル・ガーディアン。


『して、そのような技術を持つ貴殿はなぜここにやって来たのかを教えてもらってよいか? わしと貴殿の目的は同じようだし、協力できるところがあれば遠慮なく言ってくれい』


 との事なので、光はやってきた理由を隠さずすべて告げ、老魔術師の姿をしたソウル・ガーディアンから鉱石を掘り出していいという許可をもらう事に成功した。光はすぐにフォースハイムの魔法使いに話し合いが成功した事を伝え、作業に入ってもらう事となった。


『ふうむ、ふむふむ、見れば見るほど興味深い。むう、わしの研究をはるかに上回る存在に出会えるとは……』


 その一方で、老魔術師のソウル・ガーディアンは神威・参特式に釘付け。色んな質問を光に飛ばしては何やら本のような物になにかを書き写す姿を見せていた。仕事も済んだので、そろそろ失礼したい旨を老魔術師の姿をしているソウル・ガーディアンに告げると、分かりやすく落胆する姿を見せた。


『むう、せっかく話が通じる者と出会えたのにお別れなのか。残念ながら他の者とは話が出来ぬようだしのう……』


 なので、光は通信機を一つここに置いていく事にした。テストした結果声が聞き取れる事が確認できたので、今回はこれで我慢してもらう事に。この日はこうして別れたが……後日、この老魔術師と光は直接再会する事になる。

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