第004話 小学六年生ぐらいから異性って違う生き物に見えるというが大丈夫。根本的なもの以外は同じだから
お久しぶりです。と言っても見ている人はあまりいないでしょうが。定期的に投稿しようと思ったんですが、なかなか難しいので不定期にさせてもらいます。
時は戦国。日本は群雄割拠の時代を迎えていた。
歴戦の猛者どもは目に血を滾らせ、美貌の寵妃たちはお互いを牽制し合う。
春という日和にも関わらず誰もが頬に汗を滴らせ、干上がる喉を潤すために唾を飲み込んだ。
つまり、簡単に説明すると、
『『『…………………………………………』』』
どいつもこいつも異性と同室することに緊張しているってわけ。
名ばかりでなく正真正銘の共学に変わりはしたが、ついさっきまで同じ校内に男子高と女子高があるような環境だったから、異性がエイリアンみたいに見えるのだろう。
女子は何度か見たことのあるはずの俺を間近で見るとみんな「ヒッ!」とか「ヒッ……」とか言って距離を置いてくる。男子からも似たような仕打ちを受けていたから慣れているつもりだが、……やっぱ地味に堪えるぜ。
休み時間の玲を見ていたらあいつは美人な転校生ということで女子の注目も集めていて、ほとんどの時間を同性の同級生に囲まれることになっていた。
当の玲は持ち前の明るさとひょうきんさでさっそく女子たちの輪の中心へとまっしぐらしていて心底殺意が沸いた。なんでお前の面からは恐ろしさがにじみ出ないんだ……。
昼休みにもなるとグループごとに集まる現象が顕著になって、男子と女子が混じって昼食を摂る構図なんてほとんどできない。
「なんぢゃか誰が先に入って用を足すか牽制し合っている厠の前みたいぢゃのうナッハッハッハ!」
ただしバカ一名を除く。
女子との会話が楽しくなかったのか、俺と嘉隆とイインチョの三人で食べているところに入りたいと言ってきた。俺はイヤだったが嘉隆が狂喜乱舞して、イインチョは怯えながらもまんざらでもなさそうだったから多数決で受け入れることとなってしまった。
玲は俺がいるということでここに入ってきたみたいで、どうやら異性というものをまったく意識していないようだ。
「まったく。飯食ってる時にトイレの話なんてすんなよ汚い」
いや、正確には俺もだ。みんな異性が近くにいるだけで何をそわそわしているんだか。
「おいリョーマ、お前何回卵焼き落としてんだよ。もうゴミまみれだぞ」
……何をそわそわしているんだか。
「嘉隆こそなんでさっきからご飯を鼻に詰めてんだよ」
「ウッセーこれはわざとやってんだ。今日からオレのトレンドは『鼻飯』だ。テメーはこそ気づかねーままそのゴミ食うんだろ?」
「これから窒息死する奴に心配される筋合いはないな」
「まあまあ二人とも。とりあえず落ち着きなって。ね?」
「箸噛み砕いたイインチョに言われたかーねーよ」
「しかも興奮しすぎてメガネ曇ってんぞ」
緊張しすぎだろ俺ら。仕方ないって言えなくもないけどさ。
「ホント、バカばっかよねアンタたちってさ」
おっと、ここに男と無縁な奴がいたな。俺のもう一人の腐れ縁、影宮陽菜だ。
根っからの仕切り屋タイプであるこいつならピリピリとした空気の中でも自己をしっかり保てるんだろうな。そういえば幼稚園の頃はガキ大将として近隣の子供たちに恐れられていたっけ。余談だが当時の俺は極悪氷河フェイスの兆しは一切なくむしろ中性的で華奢な容姿をしていた。まあだから陽菜にいじめられていたわけなんだけれども。
まあなんやかんやで今は俺、玲、嘉隆、イインチョ、陽菜の五人で固まって昼食を摂っている。
先ほど陽菜に玲の紹介をしたら、なんか梅干しを口に入れたまま胡散臭い通販番組を見ているような顔をされた。そこまで怪しいか。
お前ら水着といえば何がいい俺は無難にワンピースだな僕はやっぱりビキニかないやいやテメーら馬鹿だろ男は競泳一択だお主ら全裸を忘れちょるなどと他愛もない話をしていると、何を思ったのか陽菜が突然肩とツインテールを上下に揺らしてクツクツと笑いだした。
「なんだよ何がおかしいんだ」
「いやいや。氷の仮面王とモテない女狂いに対人恐怖症メガネなアンタたちがそんなんだから女子に構ってもらえるわけがないと思ってね」
「嘉隆、こいつの可哀そうなスリーサイズと体重をネットにばら撒いてくれ。責任は俺が取る」
「あいよ」
ドガガスバキボコドスゲシ(以下自主規制)
「だったら今すぐ責任取りたい? んん?」
「取らせた後で言うなよ……ゴフッ」
「わりーリョーマ。オレまだ死にたくねーよ(ガクガクブルブル)」
パンチが飛んできたと思ったら衝撃が同時に六つ来たんだけど何こいつ阿修羅?
「そもそもアタシのこのスレンダーボディがネットにばら撒かれたら世の女は憤死するわよ」
「それをウチの妹に向けて言ってみ? 十年後の同窓会で死にたくなるから」
————何も覚えてないんです。ただ、悪魔の眼光が俺の脳裏から離れないんです。(荒垣涼馬の後日談より抜粋)
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