第003話 ※一応階段です
教室のスピーカーからブツンと電源がつながった音がした。放送朝礼が始まる予兆だ。
だというのに、ほとんどのクラスメイトは玲の周りに集まって質問攻めにしている。しかしそれもうなずける話だ。玲はダイナマイトボディな美人だから燃えてジジイ言葉のギャップが萌えるんだろう。ちなみにほとんどというのは何人かは自分の時間を過ごしているから言っている。たとえばイインチョは自習をしてて、嘉隆は俺を経由して知り合える保証があるからか余裕で爆睡中だ。
『ねえ、荒垣さんって兄貴のことどう思ってる?』
『最高の男ぢゃよ。出かける時と帰ってきた時に必ずワシを踏みつけてくれてのう。もうアレがないと生きていけない身体になってしまったわい!』
ブフッ!! と俺を含める全員が吹き出した。お前階段だった時代はそんな風に俺を見てたのか!?
これによってみんなが俺を変態を見るような目で見てくる。これは早急に手を打たねばスクールカースト的な意味でやばい。
スピーカーからからブゥーンというマイクと接続された音がした。そろそろ始まるな。
俺も眠いから寝ようと思ったが、占部先生の言っていたことが気になるから真面目に聞いておこう。
『えー皆さんおはようございます。今日はいい天気ですね。風邪などを引いていませんか? 今日は緊急で朝礼をしてすみません。しかしどうしても伝えねばならないことがあったので機会を設けさせていただきました』
前置きが長い。校長という人種はどれもこうだからいけないな。
『今回の話というのは、我が校の指針についてです。皆さんのご存知の通り我が校は文武両道を標榜していました。しかし今日からそれにもう一つ加えたいと思います。それは男女平等です』
ほうほうそれはまたどうして?
『我が校はいじめや性犯罪が起きないように男女を校舎別にしていましたが、その考えは差別であると気づきました。そこで、今日から全学年全クラスを男女混合にしていきたいと思います』
へえ、それはまたすごい気の変わりようだな。
『反対する人、嫌がる人がいるかもしれません。しかしどうか私のためと思ってどうかお願いします。いやほんと頼んますアレが家族にバレるとマジで家族にイヤアアアアアア!!』
何があった校長。
……まあ、タイミングから考えて犯人は一人しか思い浮かばない。
黙ってそいつの顔を見るとそいつは呑気に手を振ってきた。一応聞いておくか。
「玲、もう一度聞くがどうやってここに入れた?」
「うんにゃ。ただ校長が夜な夜なSMクラブに通っておるからそれをネタに脅しゴホンゴホンいやいやこればかりは言えんのう」
「ほとんど言ったぞ」
そうか、たまに外出していたのは入学するためのネタを探すためだったのか。それにしてもまさかたった三日でそこまでたどり着くとは、腐っても神ということだろうか?
「はい、ということで一、二時限は授業潰して引っ越しをするわよ。出席番号が奇数の子は女子棟に引っ越し、偶数の子はその手伝いをしなさいね」
みんな動揺を隠せずにいる。嬉しいという感情より驚きの方が心を大きく占めているんだろう。俺としては野郎ばっかの環境に飽きてたところだからちょうどいい。そこだけは玲に感謝だ。