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君が好き過ぎて終わらないRPG  作者: ものもらい
1.そんな選択
31/44

30.宣誓はフラグって習わなかったの?



※ラストに作者絵があります。





【魔女の呪文】




―――さあ、唄おう。


我らこの世のはみだし者。見捨てられ路地裏で恵みを待つ者? いいや、我らは恵みを作る者。


この燃える心臓を愚かと笑うならば、いっそ私が苦しみに足を踏み鳴らすのを、手拍子でも加えて嘲よ。


そして、私の心臓が燃え尽き灰になる頃、どうかあなたの奏でるビウエラで私を眠りに就かせて欲しい。

願うなら、もう一度二人で触れあい引き離し抱擁しようじゃないか、私の恋人よ。


ああ戻っておいで、私の愛しい人。石榴の実を食べてはならぬ。決して後ろを見ぬ私の腕に、しっかりと縋っておいで。……私の、


いとしいひと。










【女神様と、その物語】



そのタペストリーは、意思を持って織れない故にとても醜い。


けれど先程まで、魔王の手に落ちた子らは真っ白に、金に染まって、"主神の紋章"が描かれていたのだ。……今は、黒く爛れているけれど。



「何しに来たの」



鋭い声の持ち主はこのタペストリーの織り手。目深にヴェールを被った女―――そして「彼女の」、妹である。


「あんたさー、もう少し嫉妬とか?攻撃的過ぎなその部分何とかしなさいよ。まぁた勇者チームが負けたじゃない。これで何人目よ?」


露出し過ぎて色々ギリギリな美女は、当然ながら愛と美の女神。下僕に磨かれた爪の先では、ここでは黒い糸である勇者の片割れ――文の糸が、引き千切った運命の女神の手の中にある。


「何言ってんのよ。あの女のあの態度、とても許せたものじゃないでしょ」

「ははっ、そんなちっさい女だからあんたはいつまで経っても一人なのよ―――あら」



不意にタペストリーが、勇者が来るまでの頃に出来あがっていた物に変わる。


さっきまで黒く澱んでいた銀の糸――である魔王はその輝きを取り戻し、ルビーのような輝きを放つ糸に寄り添う。その光景に、うっとりと愛の女神は呟いた。



「命を燃やす程に過激な愛……ああいいわ、大好きよ陽乃。そのまま頑張って汚らしい地獄を這い、美しい華を咲かせなさい。私はそんなあなたを"祝福"するわ」



口紅よりも赤く、淫靡な舌先で唇を舐めれば、ルビーのようなその糸は一層輝きを増す。


それを目の前で見ていた運命の女神は唾を吐き捨て"加護"の与えられた赤い糸を引き千切りたくなったけれど、そんな事をすれば兄弟たちに何をされるか分かったものじゃない―――ので、引き千切った糸を戻そうと手を放した。


その黒い糸は、もう一本の糸とやっと再会することが出来て嬉しそうで、きゅ、と強く結ばれる。


結ばれるけれど、運命の女神の許しを得られていないばかりに、文であるその糸は脆かった。



「異界のお嬢さん、あなたの棺に片足突っ込んだ愛にも祝福を」



その脆さにほくそ笑んでいたのに、背後の愛の女神は歪んだ楽しみすらブチ壊すのだ。


すぐにでも崩れ落ちそうな糸は、愛の女神の加護で多少はマシになった―――



「……あんた、魔王も勇者も応援してどうするのよ」

「面白いじゃない」

「面白いじゃないって……」

「私は退屈がだぁいキライ!…あんたは知らないでしょうけど、色恋沙汰ってとっても面白いのよ?今ね、すっごく派手で切なくてキュートなドロドロ愛憎劇が見たいの!」

「………」

「それに、気になるでしょう?"あの子"がどう出るのか……あの魔王、今までのと違って、邪神ではなくて"あの子"の加護がとても色濃かった……つまりね?」

「……なによ」

「そろそろお仕置きタイムじゃなぁ~いぃぃぃ?あはは、あの子が大人しくて優しいからって、舐めてるからいけないのよお馬鹿さぁん!」



くるっと踵を返すと、愛の女神はヒールを鳴らして、鼻歌交りに神殿へと帰る――が。



「……もしかしたらあの子も望んでるのかもね、"楽園"の復活を」



それもそれで楽しそぉ~、と笑って、愛の女神は去って行く。


気配が完全に消えた後、運命の女神は糸紡ぎを叩き落として、復讐を恐れていた……











―――

―――――

――――――――



ふ、っと。彼女は目を覚ましました。


頬の痛みも背中の痛みも無くて、爪の色は新作のマニキュアの物ではなくて……。



「きょ、う……恭ちゃん……」



シーツの波を彷徨う手の先、腐った手にお揃いの指輪を嵌めた   の幻覚を見て、彼女は悲鳴を上げて恐る恐るもう一度見直しました―――いない。


よろよろと、寝間着の乱れたまま、彼女は彼を求めて城を彷徨います。


何人かとすれ違い、どうしたのかと聞かれても応えずに、素足が痛んでも、彼女は。



「陽乃!?」



いつもとかけ離れたその行動を心配した侍女の報告で、繊細な生き物を創造している途中だった彼は部屋から飛び出て、亡者のような彼女に慌てて駆け寄ります。


自分の上着をかけて、ぎゅっと抱きしめて。そして優しく乱れた髪を梳いてあげました。



「どうしたの?怖い夢でも見た…?」

「……そう…ね、うん、……とても、怖かった……」

「可哀想に…最近人間の国の動向に苛々していたものね、疲れちゃったのかな」

「………そうね、疲れたのかも…」

「陽乃が寝るまで、傍に居るよ。だから部屋に戻ろうか。こんな格好じゃあ風邪引いちゃう」

「……ううん、もう寝たくない」

「そう?…あ、それじゃあ俺と温室でお茶会をしようか?」

「…お茶会」

「そう!……たくさんのケーキと温かい紅茶を飲んで、花を愛でで俺とたくさんお喋りしてる内に、怖い夢なんて忘れちゃうよ!」

「……もし、お茶の途中で、怖い夢が実現したら…?」

「大丈夫だよ!陽乃に怖い思いをさせるものなんて、夢でも何でも俺がやっつけちゃうんだから!追い出しちゃうんだから!(`・ω・´)」

「………―――ふふっ、そうね」

「(`,,・ω・,,´)」



ぎゅぅ、と。彼女は血生臭くなんかない、温かい彼の優しい香りに、顔を埋めました。











「国光くん、好きだよ」



その言葉に、彼はハッとして―――泣きそうになって、慌てて俯いたら。


「く、国光くん……?」


そんな彼を心配する声がとても苦しくて、彼は彼女のミルクティーを一口貰うと、切なそうな笑顔で、大人びた顔で答えました。



「―――俺も、文が大好きだよ」



彼女は驚いた顔で、だけどその後とても嬉しそうに微笑みました。はにかむ顔が、とても。


「……じゃ、じゃあ、国光くん…これは、その…そういう、意味で…」

「そういう意味だよ」

「……そっか」


ふふふ、と微笑む彼女から、彼としては長い事嗅ぐことの出来なかった石鹸の優しい匂いがします。彼はそのまま、細い指に触れようと……


「んあ!」


彼女と彼の間に挟み込まれに行ったこの世界の"異物"は、生きている主を見てとても嬉しそうです。それと同時に、彼はクラっときましたが。



「わあ国光くん!この子は?」

「……さ、最新型の……ぬいぐるみ」

「最新型……なるほど、瞬きまでするのか……抱き上げても?」

「え、いや……」

「……」

「俺をそんな目で見るな!」



じっと彼を見上げる"ぬいぐるみ"に、彼は諦めたように彼女に押しつけました。

彼女は頬をすり寄せて、「可愛いらしい」と……その時点でぬいぐるみは涙をばっしゃあああと流しました。



「おまああああああああ!!」

「国光くん!すごいぞ、最新のぬいぐるみはここまで進歩したのだな!」

「違うぅぅぅぅ!ごめん、もう返して……」

「んあっ!」

「痛っ!?」



叩かれて、彼はぬいぐるみを無理矢理引き離して彼女にくっつきました。


彼女はその微笑ましさに、優しい目で彼らを見守っていて―――


「……?…ごめん、国光くん、ちょっと…具合が」

「えっ」

「どうしてだろう。さっきまで全然……」

「お、おい…?」

「ちょっと貧血気味……ごめんね、掃除行けないかも―――あ、」

「じゃあ俺が保健室まで送ってってやる。ほら、おぶれよ」

「……いや、国光くん……僕はスカートだからね、」

「え……わ、分かってるし!!あーもういいっ、肩貸してやるから!」


もしかして彼女の使い魔のせいだろうかと、片手で掴んだぬいぐるみを見ていた彼は、彼女に肩を貸したまま、行儀悪くも足で扉を開けました。



「……こっちだ」

「…?…でも、国光くん、そっちの方が近いし、ちょうど教室にも行けるから―――」

「駄目だ。……実験室がある」

「…それが何か…?」



けれど彼女は彼の提案を大体飲み込みますので、不思議に思いながらも足は反対方向を目指すのです。


彼は片腕で支えている彼女を気遣い、尻尾をぱたぱた振るぬいぐるみを叱りながら、やっと保健室に辿り着きました。


彼は「失礼します」と言うのも惜しくて、やっぱり雑に扉を開け、たら。



「ずっと私と一緒って言ったじゃない!!!」

「ちょ、ごめ、ごめんって。あいつとはその……浮ついててちょっと…」

「許さない許さない許さない!!私はこんなにあなたに尽くしたのにぃぃぃぃぃ!!」

「ごめ……ひぃっ!!」



彼が同級生の生々し過ぎる修羅場に固まっていると、目の前で男子生徒が切られました。


そのまま彼らの所に逃げようとして、彼女にぶつかって、腰が抜けそうな姿勢で距離を稼ごうと足掻いています。彼は慌てて彼女を抱え直し、逃げようと………。


(―――え、動かない)



そして、彼と彼女は真っ赤に染まりました。






「あなた方は運命の女神に選ばれ、私の魔法で異世界にやって来られた救世主、勇者様です。どうか恐ろしい魔王を倒してください。さすれば元の世界に帰れましょう」



―――…彼は、どうしようもない事実に目を伏せ頭痛を耐えながら、言いました。



「……しょうがないな。これから逃げられないのなら、」



同時刻、遠くでシュークリームを運んでくる恋人に手を振る彼女が言いました。



「…立ち向かうしかないわ。幸せを掴む為に」



「―――頑張ろう。……まだ、始まったばかりだ」



「そうよ。たかが一回、派手に転んだからって、泣き寝入りするような女じゃないのよ」



「次こそは」


「ええ、今度こそ」






「「…………殺してくれる」」






だって負けられないもの。


ということで一章終わります。次の話は一章まとめ入れるかどうしようか悩み中です。



しばらく放置していてすいませんでした。


なお、これから出てきちゃうのは「ハロウィン企画絵描こうぜ!」と勝手に思い立った作者が間に合わなくてむなしくなったものです。ちょっとアレです。



・性別逆転しています。大丈夫な方だけどうぞ↓




挿絵(By みてみん)


「逆転☆君好きRPG」での魔王夫妻の設定は、


・陽乃ちゃん⇒魔界最強チート騎士。口も悪けりゃ手癖も足癖も悪いけど恭ちゃんの前では猫被る。凶暴さはアップしてるがメンタルは湯葉レベルに転落。

魔界の道場破り的なことをしていたら恭ちゃんに会った。そして惚れた。


・恭ちゃん⇒魔王で巫女様。性格はぶっちゃけ変わらない。ヒロインらしいがメンタル最強。武器は薙刀。

「魔界の妖精」とか称えられてファンクラブがある。会長は陽乃さん。

貧乳でロリ体型なのを気にしているが、ぽそっと言えばその場の全員(強面のおっさん含め)が「ロリ最高!」「貧乳は神!!」とか叫ぶ。

ひかりちゃん(=国光くん)とは友達だが胸の格差社会を感じてちょっと悲しい……。


だいたいそんな感じですが、下手したらこっちの方がちゃんとしたRPGになります。



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