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君が好き過ぎて終わらないRPG  作者: ものもらい
1.そんな選択
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23.さよなら愛しい人



あの帽子屋で出会った―――旧日本兵の上官用のような制服に、眼帯。黒髪でさらさらしてるのに恭と違って冷たさを感じさせる"騎士"。


日本刀を握る姿は慣れたものがあって、俺は腰に差していた剣を抜いた。



「こ―――こっち見んな!文に手を出したらぶっ飛ばすぞ!」



言ってる事と身体が情けないのはフェイクだ。ここであえて駄目そうに振舞って、何とか意表を突いて勝つしかない。


騎士はすっごく興味の無さそうな(何これ地味に傷つく…)顔を俺に向け、まじまじとてっぺんから爪先まで見ると、


「なんだ、勇者か」


と、どうでもよさそうに呟く。……ってえぇぇぇぇぇぇ!?何で!?今までこっちから名乗らないと分かんなかったのに!



「な…何を……」

「何もなんでも、そんな間抜けなネタシャツにフードに制服のジャケット、ついでにそんな靴はこの世界に無い」

「あ、阿呆みたいって言うな!これは文が買って来てくれたんだぞ!――ていうか制服のジャケットって何で知って……」

「俺も"お前らと一緒"だから」



文と毛玉に背後からしがみ付かれ、それでも声を張り上げる俺に、"騎士"は爆弾を投下した―――…"お前らと一緒"?



「俺は言わばお前らの先輩。…先代の、勇者だ」



足下の今にもぷっつりと死にそうな男の手を踏みつけて、魔女の騎士は言うのだ。


「…先代…?待て、先代の勇者は死んだ筈だ」

「それは人間側の嘘だ。……俺は、魔王に敗れた後に…"拾われた"から」


文の問いに、何故か騎士は頬を染める。

……もしかしてこの人エm……いやいやいや!


思わず無言になる先輩後輩勇者組に、ブスは「なんだと!」と食ってかかった。


「拾われただと!?貴様、貴様が魔王と組んだせいで我らにどれほどの被害が出たと思っている!?どれだけの人間が不幸に突き落されたと!?」

「知らない。這い上がれ」

「はぁ!?」


同郷でも何でもないブスに対し、先輩勇者はすっげー適当に返した。……いや、「這い上がれ」って何だよ。



「貴様のせいで、ずっと新たな勇者を喚べなかったのだぞ!?」



ブスは叫ぶ―――それに、素早く声を上げたのが文だった。


「まて、勇者ぼくたちが死んだら……代わりが呼べるって、どういうことだ」

「どうも何もそのままだ。お前たちが駄目なら次、それでも駄目なら次と喚び続けるのさ!なんせ、」

「俺たちは争いとは無縁の世界から来ているから、元の性能が良くない。そして女神が不完全であるからそれを修正する事も難しい」



―――お前も、知ってるだろう。……先代勇者は俺を見る。


そうだ。帰宅部の俺が、こうまでなる為に、俺は何をされた?過去に飛ばされ地獄を見て、助けに来た文はまるで罰されたように、俺が、俺の手が、………。


俺たちだけに出来る事は運命を作りかえること。修正し、時に破壊すること。

けれど俺たちを最大限に支える運命の女神が「不完全」なせいで、俺たちは無事に帰還することが難しい……。詰んだ役を押し付けられている。



「―――まあいい。早く仕事を終わらせないと」



ピン、とブスの首に赤い線が走って、そのまま何の文句も言えずに首が飛んだ。


動揺する文に対し俺は一層心を冷たくして、剣をしっかりと構え直した。


先代もまた向き直ると、俺に剣を向けて淡々とした声で名乗り上げる。



「俺の名前は大殿おおとの 夕凪ゆうなぎ。クローディアを守る番犬ペット

「名前までイケメン!!……じゃないっ、ペットって…じゃなくて!ちょっ」



言いたい事がいっぱいあり過ぎて変な事になっている俺に、夕凪は何の遠慮も無く斬りかかって来やがった。

一太刀目は上手く見切れたけど、それ以降は若干掠る。……まあ腕が斬られないだけいいか。



「ほら、どうした。相手が名を名乗ったらどうするか、学校で習わなかったのか」

「…―――お、俺の名前は流鏑馬やぶさめ 国光くにみつ!帰宅部ですけど何か!?」



押し返すと、イケメンこん畜生は優雅にステップを踏んでまた斬りかかる。何というかめっちゃトリッキーな感じ。


悪戦苦闘する俺に、文は、



「撃て!」



しゃん、といつの間にか取り出したらしい錫杖を鳴らして、毛玉はいつものようにそれに従ってぬこビームを発射した。


避ける為に夕凪が開けた距離にホッとしたのも束の間、俺は文に感謝と逃げろの言葉を口にしようと振り返って、固まった。




「―――お転婆なお嬢ちゃんだこと」



白い、和と洋の混じったドレスを着た、桃色の髪の女だった。


その手の大太刀は異様に不吉で、とても美人なのにそれがまた余計に怖かった。


「ねえ、」


女は、そっと文に手を伸ばして、



「お嬢ちゃん、…おねぇさんと、楽しい火遊びをしましょう?」



ずるり、と文が女と一緒に、大口を開けた蝙蝠にの中に引き込まれる。


慌てて文に引っ付く毛玉に手を伸ばそうとして、俺は夕凪に吹っ飛ばされた―――…。













「あ、あのね!モール……その、わたくしね、あなたのこと……えっと、」

「……」

「す、き………」



「……姫様も変なのを好きになってまあ、どうなっても知りませんよ」

「へ、変なのって―――…変なのだけど、でも、」

「でもー?」

「でも……悪い人じゃ、ないわ……」

「………」

「…きっとわたくし、国の為にどこかの王子様と結婚するんでしょうね。…でも、この旅の間だけでもいい、一番若くて、美しい時を、あなたにあげたいのっ。あなたに……っ…」

「…あーあー、泣くんじゃありませんよ、俺が悪いみたいじゃないですか」

「う、ぅぅ…だって、あなた、何も言ってくれない……」

「………」

「……っく、……ふぇ…」



「―――そうですね、姫様が嫌わない限り、お傍に居ますよ」

「……本当?」

「ええ。……その代わり、モールの我儘に振り回されてくれますー?」

「い、いいわ!」

「よしよし、元気になって良かった……じゃーそうですね、折角"恋人"になれたことだし、姫様の真名、教えてくださいよ」

「わたくしの真名を……?」

「…嫌ですか?」

「だ、だって、魔法使いが、誰かに自分の真名を悪用されたら……ぜ、絶対変な事に使わないで下さいませ!」

「はいはい」

「もうッ不誠実な人!………わ……わ、たくしの、真名は……」

「ん?」

「……………」

「……………」

「………―――エリーゼ」

「……優しい名前ですね」




「エリーゼ」

「な、なんですの…」

「…エリーゼ」

「だ、だから!なんですのよ!」

「……いえね、きっと、もう呼ぶ事も許してくれないだろうから」

「え?」



「―――エリーゼ姫、今から"私"があなたを、陛下の元まで連れて行きます」








国光くんがイケメンに嫉妬している裏で、ある意味王道な展開が……。

どうでもいいけど「テレーゼ」か「エリーゼ」で悩みました。ギリギリまで「テレーゼ」が勝ってたんですけどね……。

悪いお兄さん×姫様も好物ですもぐもぐ。





補足(主に私が忘れそうなんでメモとか):


・勇者二人で一組。片方が生き残った場合、新しい勇者組を呼べない。一人だけまた連れて来るとかそういう芸当は女神様が不完全だから無理。


・まあ勇者が片方だけになったらなったで大人が考えなおしてくれる。一番最悪な決着の付け方が夕凪君の場合で、先代魔王が退位するまで世界は暗黒期。


・勇者は女神様の監視が行き届いているけど基本的に詰んでる。運命の女神はモンスターと魔族関係に限っては運命操作出来ない。それは魔族の神様・邪神様にげふんごふん。


・姫様の「デステア」はご両親からの名前。魔法使いとして一人前になった時に真名を知る。悪意を持った誰かにこれを知られると、魔法にかけられた状態で服従を求められた時に逆らえなくなる。



・「モール」は当然ながら偽名……「勇者拾ったら大変な事になった」で魔女さんの復讐相手の、お父さんの目玉踏んじゃった☆な息子くんです。


人生舐めてたらエライことになり、魔女さんに仕事押し付けられて日々忙殺されてました。

鬱一歩手前でやっと解放されたと思ったら陽乃様の従僕に。(22話冒頭より)

テンション上がり過ぎて恭ちゃんに会った時に調子こいたら気に入られちゃって、嫉妬した陽乃様に折檻されました。虐められ過ぎて骨の髄まで叩きこまれた感じ。逃げるとか怖くて考えられない。

ちなみに恭ちゃんは「虐めてない?」と何度か陽乃様に聞いてくるのでとった虐め案が「シカト」。割と効いたらしい。


今でも陽乃様を見ると反射的に土下座します。


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