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君が好き過ぎて終わらないRPG  作者: ものもらい
1.そんな選択
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20.お嬢さん、お茶しましょう



「ねえ、どう思う?」

「えっ」

「毛玉。爽やかな感じを目指したんだが」



三つ編みから低いお団子、シャツは薄くて、肩にかけてるショールは花が散ってて綺麗だ。

青いスカートにちょんとした靴が軽やかで、今の文はちょっとしたお嬢さんって感じ。

対して毛玉は…けだ…ま……は。



「あー、うん、良いんじゃない」

「んな゛っ」

「あだっ!?」

「…国光くん、こういう問いに適当に答えるんじゃない」



海軍のセーラー服に、それに合わせた帽子。…うん、夏っぽい。まだまだ夜は肌寒いけど、別に変では無いさ。

ただそれ以外言う事がないだけで……。



「おんやー。これはこれは。麗しいお嬢さんが二人も待っていてくれるなんて。モール嬉しー」

「ありがとう、モール。道中何も?」

「ええ、ええ。大丈夫ですわ」


片手をひらひら振ると、モールは「姫様はまだで?」と聞いてくる。

俺が「そうみたいだな」と答えると、「じゃあお茶でもしてらっしゃい」だ。


「いいのかよ。俺ら二人で」

「もうおたくらいい歳してんだから大丈夫でしょー?それに、国光坊っちゃんはアレでも文お嬢さんなら大丈夫だろうし。途中で合流しましょうや」


「ちゃんとエスコートするんですよー」とからかう声に「うっせー!」と返しながら、俺と文はアジアンな店を出た。



そうして見る文は、この世界とも違和感が無くて……少しだけ、寂しかった。

だけどそっと手を握ってくれたから、俺は涙目にならなかったんだと思う。


「ねえ、あそこの店に行こうか」

「なんで?向こうの方が客いっぱいいるぞ?」

「……その、毛玉がもう席をとってらっしゃる」

「えっ…って毛玉―――!」


まだプンプンしてる毛玉は、喫茶店の外席にあるテーブルの上に腰掛けてて、俺は慌てて毛玉を掴んだ。


対して文は優雅に店員に案内されて来て、「ああ、ここは景色が良いな」と見渡して俺にも座るように手を差し出した。


「ご注文はお決まりですか?」


渋々座ると、犬耳のお姉さんは微笑ましいものを見るような顔でオーダー票を握ってた。

それが無性に恥ずかしくて、文に「…お前からどうぞ」と投げる。プンプンの毛玉は文の膝の上、いつもの定位置で帽子を直されていた。


「お勧めは何ですか?」

「ショートケーキと苺パフェです」

「俺パフェで!」

「んああ!」

「…じゃあ僕とこの子にショートケーキ。あとコーヒー」

「えっ」


コーヒー…だと……!?何て大人なものを注文してるんだ…!

俺なんて林檎ジュース頼もうとしてたし…う、うぅ……ええい、俺だって大人だ!


「お、俺もコーヒー!」

「え、国光くん大丈夫か?無理に僕に合わせなくても…」

「合わせてねーし!…注文はこれでお願いしますっ」

「了解です。ショートケーキ二つにパフェお一つ、コーヒー二つでよろしいですね?」


それでは、とオーダーしに行ったお嬢さんを何となく目で追いかければ、向こうでもくもくとケーキやら何やらに没頭している婦人と、コーヒーを作っている狼…あれ、なんかゴールデンっぽい…男。

犬耳給仕のお姉さんは「おとーさーん、おかーさーん」と声をかけて注文票を見せていて、どうやら家族経営のようだ。



「何だか浪漫を感じるね?」

「え?…ああ……そうだな。前の国とは大違い…」

「石畳もとても綺麗だし、皆笑ってる。…まあ、高そうな馬車に乗ってるのは魔族だけれど……」

「そうだな。……良い国、だな」



確かにこれは、上の人間も情報を切りたくなるだろう。

今まで見てきた人間の国よりも、最も栄えてる。心なしか、老人の率も多い気がする。

それに文の肩越しでは倒れた婆さんを海老っぽいのが不器用にも助け起こしたり、婆さんもそれに対し怖がるどころか感謝の言葉を述べている。


きっと、豊かだからこそなんだろうな。一方が貧しければ、差があり過ぎるとこうはいかない。絶妙な加減でこの国は保たれている。



「……そういや、俺、妖精の王様に会ったって言ったじゃん」

「うん?」

「あいつ、こういう光景を、世界中で見れるようにしたかったんだろうな…」

「…うん、そうだね。…案外魔王様と妖精の王様が組んだら出来るかも」

「そうだなー…でも、魔王のくせになんでこんな統治の仕方してんだろう…」

「うーん…お偉い人の考えだから……」

「…………なあ、」

「ん?」

「………魔王を倒すのって、本当に正しい事なのかな…」

「……」



せっかくのお茶会日和なのに、俺は思わず湿っぽい事を吐いてしまう。


駄目な奴だと頭を振って、俺はこの話を止めようとした―――そう、あんまり面倒な事は、考えない方が良い。きっと、こんなの、



「…国光くんは、人の痛みを考えられる、優しい子だね」


その顔と言葉に、俺は何故だか救われたような気持ちになる。



……だって、最近になってようやく考えたんだ。「倒す必要はあるのか?」って。

―――いや、薄らとだけど、最初の頃は関係も何もない俺達がって、思ってはいた。……でも、今ではそうじゃない。


俺達が魔王を倒して、元の世界に戻った後。この世界は、この国はどうなるんだろう。隣国から攻められたりとか、さっきの給仕の子みたいなハーフは差別されるんじゃないか?


魔王領は多少の差はあっても、そういうものはない。クサイ言い方だが、自由恋愛を許されているんだろう。――――その人達にとって、俺達は本当に正義か?



「…でもね、国光くん。僕は―――君が大事だから」

「!」

「帰ろう。ここは国光くんに酷いことしかしない。他人の事なんて、気にしなくていい」

「文……」

「僕はね、君を困らせるものは全て消してやりたい。…ずっと、笑ってて、優しいままでいて欲しい……なのに、この世界は君を汚すんだ」

「……」

「これからも思い悩んだら、"僕の我儘で見捨てる"と思いこんで。国光くんはそれでいい」



俯く文に、毛玉はすりすりと頬っぺたをすり寄せた。

文はそれに弱弱しく笑って、ぼんやりとしている、から。



「お、れも」

「…?」

「俺も、文には、元気でいてもらいたい…それに、約束のデートもあるし、爺さん婆さんのこともあるし。…うん、…ごめん、さっきのは俺の綺麗事だな。俺はどうあっても帰りたいんだ。文が悪いんじゃない」

「…国光くん、別に自分を責める事は無い。そう思うのは僕らの権利だ。それに、僕は、」

「ん?」


「君の綺麗事すら、愛しい」



―――ああ、俺は。


何度、文に救われるんだろう。



「でも、帰れるとしても、毛玉は連れて行きたいな…君と離れるのも辛い」

「んあー!」

「女神様に頼んでみるかな?」

「…あー、アレだぞ、女神さまヒス持ちだから気を付けて頼めよ…」



俺が思い出しては眉を顰めていると、犬耳をぴこぴこしてる給仕の子が、「お待たせしました!」とコーヒーとケーキ、パフェを並べてゆく。


最後にぺこりと頭を下げて去っていくと、俺は苺たっぷりのパフェにスプーンを突き刺した。


「美味っ美味っ!」

「ふふ、国光くんは本当に甘いものが好きだね…ショートケーキ食べる?」

「う……べ、べつに…」

「今更取り繕わないの。…はい、あーん」


え、「あーん」って……難易度高ぇぇぇぇぇぇぇ!!!


で、でも、折角の好意……でも…でも……でもぉぉぉぉぉぉ!!!



「う、ぅぅ…よろしくお願いします(?)っ」

「うん、あー」



ん、と。食べた。何これ甘酸っぺぇぇぇぇぇぇぇ!!!


挙動不審になってパフェ掻っ込もうとしたら、毛玉がもしゃもしゃ…して……らめえええええ!!



「お、俺のパフェ――!」

「んなな♪んなな♪」

「あーあーはしたない。毛玉、人の食べ物を勝手に食べたら駄目だろう?」

「んあー!」

「そういう問題かよぉぉぉ!!うわーん馬鹿馬鹿!」



子供っぽいてか?うっせー!


俺は温くなったコーヒーまで毛玉に盗られそうになって、盗られるくらいならと飲んだ。泣いた。



「不味いぃぃぃ……」

「やれやれ。だから言ったのに……」

「うっ…うぅ……」

「……ほら、国光くん、カップをこっちに出して。僕が魔法をかけてあげよう」

「う?」



そろそろとカップを差し出すと、文は砂糖を一個、ミルクを綺麗に入れて、混ぜる為のスプーンに、スプーンに……!


「愛を込めて」


ちゅ、と。ちゅ…ああああああああああああ!!!!いやー!この子何してるのー!?


俺の心臓がバクバクしてるのも気にせず、文はそのスプーンでコーヒーを混ぜた。

「どうぞ?」と返されて、俺は機械みたいにぎくしゃくしながら、飲んだ。



「美味しい?」

「………うん」



とっても、甘かった。






「俺のせいにしろ、お前は悪くない」的な事を言える文ちゃんテライケメン。





※おまけ↓



「―――ん?……おや、絵描きさんだよ国光くん」

「う?…あ、本当だ…どう見てもパンダだけど絵を描いてる……」

「お金を払ったら描いてくれるのかな。…ちょっと行ってみたいな」

「……!そ、そういえば文!」

「ん?」

「その、恭に、恭と彼女の―――…えーっと、誰だっけ…まあいいや。二人の絵を描いて欲しいって言われたんだけど」

「えっ」

「お前の絵、賞とったり先生からも好評だったりで美大勧められてたじゃん!向こうもプロじゃない方がって言ってるし。なあ、人物画専門なんだろ?」

「いや、だが、国光くん……僕は女性の絵は二枚程度しか…いや、うん、それが先生方には運よく好評だっただけで、他のはドン引きされるようなものばかりだったんだ」

「でもでも!描いてもいいじゃん!描いて描いて!」

「何故に駄々っ子になってるんだね君は……嫌だよ、絵には良い思い出が無いんだ」

「例えば!?」

「えぇ?」

「そうやってのらくら逃げようったってそうはさせん!…おら、具体的な嫌な思い出を語ってみろ!」

「…………………国光くんと仲良くなる前、クレヨンが毛虫に変わっていたよ」

「」

「あと、仲良くなった後……敬老の日だからと祖父母の絵を描いていたら、国光くんが何故か派手に転んで僕の絵を鼻血だらけにしていた」

「」

「それと、絵を描いてると、美術室の扉がガタガタ……」

「いやぁぁぁぁぁぁ!!もう止めて!無表情で淡々と語らないでぇぇぇぇ!!」



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