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君が好き過ぎて終わらないRPG  作者: ものもらい
1.そんな選択
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1.告白はフラグって習わなかったの?



「……国光くにみつくん、好きだよ」



―――人生初めての告白は、もやし持った幼馴染からだった。


告白を切りだされる前、「食べる?」ともやしを一掴み出された時は大変微妙な気分になったわけだが、現在俺の胸はウキウキウォッチング過ぎてヤバい。


こいつ、顔は整ってるし性格もいい――告白されてとても嬉しい反面、なんかちょっと微妙な気分にもなる。

それはきっと、こいつとの懐かしい思い出の中にブラックなものが結構あるからだろうな……。


「お前、昔……俺に猫の死骸見せつけてきたよな……」


今でも鮮明に思い出せる。ぐいぐいと俺の手を引くこいつに大人しく付いていった俺。…いや、照れ隠しで喚いてたかもしれない。

まあその後、本心から喚いたんだが。


なんというか、不思議ちゃんすぎたこいつに泣かされてきた思い出も記憶に同居している分、ちょっと正直に告白を受け入れがたいです。



「…まだ引きずってるのかい国光くん。あとあれは一緒に埋めて欲しかったからだって何度も言ってるだろう国光くん」

「じゃあ死骸は置いとこうや!ていうか置いとけば保健所のにーさんが持って行くだろ!」

「ゴミと一緒に捨てられるの、可哀想だと思って」

「いたいけなガキが死骸見せつけられる方が可哀想じゃない!?百歩譲って一緒に埋めるにしろ、まずは連れてく前に口で言えよ!せめて覚悟を決める時間をくれよ!」

「埋めようか」

「遅いわ!!」



―――当時の俺には、刺激が強かった。何度も思い出しては泣いた。


でも成長してから、こいつはきっと轢かれてぐしゃっとなってる猫を独りぼっちにしたくなかったんだろうとか、これ以上車に轢かれないように俺に知恵か手を借りたかったんだろうな、と気づいたんだ。


やってることクレイジーすぎたけど、でもよく考えると優しい気持ちが覗けたから、中学高校とずっと一緒にいた。わりと長い友情だったと思う。


(……でもさ、やっぱあの時は生きてる人間のことの方を考えて欲しかったわけだよ……)


良い奴と知りながらもぐちぐちと文句を言ってしまうほどにスプラッタだったなあアレ。

……そういやアレって、結局埋めてくれたのは警察のおっさんだったなぁ…埋め終った後に飴玉もくれて……そしてその後、露出狂として捕まってたのも忘れられない…。


ちなみにその時のコイツの反応は「生きてれば色んな人に会うものだよ」と淡々と俺ん家のスイカ食ってたな―――あ、違うわ、スイカバー食ってたんだ。



「ねえ、君は僕が嫌いかい?好きかい?」

「二択かよ!?」

「三択目を欲しがるのは日本人くらいだと思う」

「じゃあ俺、日本人だし―――」

「女みたいにぐだぐだした男だね、君」

「お前本当に俺が好きなんですかね!?」



好きと言ったその口で、態度も顔も変えずにさらっと毒吐きやがって…!なんでこいつ+僕っ子なのにクラスで孤立しないんだよリア充が!


―――と、照れ隠しに内心罵倒し口ではぐだぐだと返答を伸ばしていると、不意にあいつは俺の制服を引っ張り、さっきとは打って変わって不安そうな目で俺を見上げた。


「返答は…?」

「………っ」


そ…そそそそそその顔やめろよぉ!こちとら恥ずかしくて返事の言葉が言えないんだよ!

緊張と焦りから汗ばんできた手を握って離してを繰り返していると、急にあいつはポケットから何かごそごそと―――カルメ焼き?



「じゃあこれ上げるから、」

「付き合えってか!?カルメ焼き一個でお前は俺が釣れると思ってんのか!?俺はお前の中でどんだけ馬鹿なんだよ犬レベルじゃねーか!」

「僕の中では現代文が平均よりは悪いが他教科は平均よりはほんのちょっと少し上だと認識しているけれど」

「地理が壊滅的なくせに厭味ったらしく評価してんじゃねーよ!この前まで太陽は西から昇るって思ってたくせに!」

「お祖父さんからそう教わったんだ」

「お爺さんんん!!娘さんが未だにあんたのせいで間違った知識に縛られてます!!」

「そんなことより告白の件、」

「そんなことじゃないだろ、お前進学どうすんだよ。俺……」

「―――心配してくれるのかい?」

「ち、ちがっ…ほら!昨日の朝のHRで担任がそろそろ本腰入れろって……担任が言ってたから!」

「国光くんは本当に素直じゃないな。だが、そこがいい」

「お前って男らしいよな!!」



癖からキツク言い返してしまった俺。

なんだか喉乾いたな……ミルクティー(こいつがジュースを購入した際におまけで出てきて貰ったもの)をぐっと一息で飲もうとしたが。

うーん……ミルクティー飲める奴って大人っぽく見えるから、憧れてたんだけど……よく飲めるよな、これ。あんま美味しくない…。


そう眉を顰めている俺に対し、あいつはめげずに自分のアピールをし続けた。


「そうだ、毎日君の好きなカルメ焼きを作ってあげよう」

「毎日食ってたら病気になるわ!」


「じゃあ野菜を食べればいい」と突っ込まれた、この…もやしぃぃぃぃ!!ふざけんな、今突っ込んだらもやしがミルクティーの味すんだろ!



「ミルクティー味のもやしの責任とるから、付き合おう」



意味分からん!




………が、そこから今までの騒ぎぶりが嘘のように十五分間の沈黙が続き、俺は俺にやると言ったくせに渡そうとしたカルメ焼きを――不安からか苛立ちからか――ぼろぼろに崩し始める(無表情)のあいつに内心ビビりながら、「い、いいぜ!付き合ってやるよ!」と返事をした。すると新しいカルメ焼きをくれた。……お前はいくつポケットにカルメ焼き入れてんだよ!?



「そろそろ掃除の時間だね。戻ろうじゃないか国光くん」

「……なんだよ、この手」

「恋人繋ぎを君としてみたい、国光くん」

「なんでお前って一々格好良いんだよ!」



ちくしょー!…と思いつつ、俺は人生初めての「恋人繋ぎ」にwktkだ。…あ、やべ、手汗が…!


「緊張しすぎじゃないかな国光くん」

「言うなよ馬鹿!」

「そんな所も愛しく思うよ、国光くん」

「ストレート過ぎだろ!もうちょっと捻った言い回し出来ないのかお前は!」

「月が綺麗だね、国光くん」

「今現在昼なんだけど!…いや、意味分かるけどね!分かるからその学無しを見るような目をやめろ!」

「君はまったく馬鹿だな。月は君だよ国光くん」

「恥ずかしいんだよバカぁ!」



―――カルメ焼きの袋をポケットに入れると、ちょうど掃除を告げるチャイム音が響いた。


機嫌良さげに教室の扉を開けたあいつは、俺が扉を閉めた瞬間、「ぐっ」と強くこの手を握って―――やわやわと、少し汗っぽい指を絡めたまま、廊下を歩く。



「初デートは来週にしようか」と提案するあいつに「再来週だ」と言うと、少しずつ近づく人の声に紛れるように、



「来週、お前の誕生日だろ」



「水族館はどうした」と言えば、あいつはきょとんとした後、「ふふ」と笑った。


真面目な顔でおかしいことを言うあいつが笑うと、少しこっちも調子がおかしくなる。「そうだね」と、「別カウントで行こうか」と俺の薬指をなぞったあいつ――――



「ねえ、"お前"じゃ無くて、僕の」






―――急に、ピカって、光った。


その後、横の教室から―――あ、実験室か―――からすごい衝撃がきて、扉が吹っ飛んで窓ガラスが割れた。

俺は無意識のうちに恋人繋ぎを解いて、実験室側を歩いていたあいつの腕を引いた。

とん、と俺の胸辺りに感触が届いた後、光が雪のように――しかし横から、突き刺して、俺の血か俺の不甲斐なさからか、あいつが真っ赤になって、一緒に倒れ込んだ。



「く…に、みつ…くん、」


掠れた声。それを合図に目を開く―――ああ、こんなのに近い風景、歴史の時間にビデオで見たなぁとか、お前、女なのに顔に傷出来てんぞとか、わりとどうでもいい事を思った。


多分悲鳴とか、先生を呼ぶ声とかあったんだろうけど、爆発を近くで受けたせいか耳が遠い。俺の隣で手を伸ばしていたあいつの手に触れると、冷たかった。


「……ふ、み」


ふみ」。おい、あんぐらいで死んだら戦場で生きて行けねーぞ、って、ふざけて言えばきっとあいつは「君は自衛隊員にでもなりたいのかい」と言うだろうに。



静寂の世界で響くのは、俺のポケットから落ちた、カルメ焼きが割れる音のみだった。














"初めまして、私はこの国の魔法使いです。この世界を救ってもらおうとあなた方を召喚しました。"


"あなた方は運命の女神に選ばれ、私の魔法で異世界にやって来られた救世主、勇者様です。どうか恐ろしい魔王を倒してください。さすれば元の世界に帰れましょう。"




―――というのを、東北っぽい訛りで言われた。あまりにも残念過ぎて脳内で敬語に翻訳してしまった。

ちなみに話しかけてきたのは格好がえらいヤバい、化け物の首が乗っかった杖を持ち酒瓶を腰に吊るしたおっさん。……般若みたいな面しやがって、お前が行けよ。


俺は「ああ」とも「うん」とも言わず、「あなた方」のもう一人を探した。そしたら探すまでもなく俺の隣で丸まって震えていて―――ホッと、した。


「豚小屋に爆竹突っ込んだ臭いがする」


うぇ、と鼻と口を両の手で押さえるあいつにホッとしたの半分、言われて気付いた匂いに、夢オチルートが消え失せてしまった。


(あ、そういえば)


今の不可解な現実よりも、最期に触れた手の冷たさが心配になって、恐る恐るその手を握ると。


(あ、温かい)


「――――…」


勝手に安心し始める俺に何かを言いたげな視線を送る文。

すぐにパッと手を離し、「な、なんだよ…」と照れ隠しにツンと言えば、あいつは「…いや、…気分が優れなくて」なんて答えて余計丸まったものだから、不安になった俺は「此処出たいんですが」とおっさんに言った。


おっさんは上機嫌で「い゛-よ゛ぉ」と訛った後、上等な部屋に俺達二人を連れてってくれたわけだが―――文が風呂から上がって「コーヒー牛乳飲みたい」と呟く頃、この国の王様がやって来て、「よくぞ勇者の運命を受け入れてくれた!」と訛らずに言われ、二人して固まった。




一言も言ってねぇよ、そんなの。








人物紹介:


御巫みかなぎ ふみ

⇒僕っ子女子高生。ベジタリアンではないけれど昼食もやしだった、文系少女。

男らしい発言と行動、しかし偶に笑う姿は上品に見えるかもしれない。肩ほどの髪はくるくるしてる。サイドを三つ編みにしてたり。

白のスクールジャケットは改造OKだったりする私立高校に通っていた。

ポケットには割と色んな物が入ってる。…が、何故かポケットに膨らみは無い。

基本的にクチャラーではないけど氷とか飴とかガリゴリ食べるのが好き。



流鏑馬やぶさめ 国光くにみつ

⇒ツンデレなのかツッコミ体質なのか作者も不明。それ以外では「平均ちょい上(現代文以外)」の男子高校生。

実はカルメ焼きが好物。卵は砂糖入れ過ぎて焦げ目がついちゃうレベルの甘いやつが好きだけど糖尿病怖いから我慢を覚えた。最近ではミルクティーとか「大人っぽいもの」に興味津々。

白ジャケットの下はフードとネタシャツであることが多く、今日は築地で買った「鮭」って書かれたシャツを着てた。割と寒がり。



なお、この話は勇者TUEEE物ではありません。どっちかと言うとぬこTUEEE物です。もしくはヒーロー系女子の女子力(物理)が高い話です。





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