婚約者いわく「こいつは女だと思っていない。こいつは・・・」
「もう、いい加減にして下さい!あなた方の体の接触を控えて下さいませ!!」
アンネは怒っていた。物凄く、ものすご~~く、頭に来ていたのだ。その原因が目の前に居る2人の男女の所為だった。
男の方の名はセレク、アンネの婚約者で騎士見習いの学生である。
もう一人の女の名はゴリアンヌ、セレクと同じ騎士見習いで、同じ学校に通うクラスメイトだ。
だからなのか、セレクとゴリアンヌはよく一緒に行動している。クラスメイトだから、男とか女とか関係なく、気安い態度で接したり、肩や腕などを組んでいたりする。
それを見てアンネが注意しても、
「大袈裟だな、セレクの婚約者は。ちょっと体を触ったくらいで、そう怒鳴らないでくれる?こんなのあたしら騎士学校じゃあたりまえだよ」
「それでも限度と謂うものがあります。貴女には節度はないのですか!セレク様も彼女との距離を弁えて下さい」
アンネに面と向かって苦言を言われているにも関わらず、全く動じない素振りで、セレクはいつも彼女にこう言い放つ。
「俺はゴリアンヌを女だと思っていない。だってこいつは・・・・
ゴリラだから!!! 」
「・・・・・」
「ちょっと!女のあたし対して“ゴリラだなんてヒドいじゃない!!」
と、言いながらゴリアンヌはセレクの体を叩いた。
その瞬間、セレクは数メートル吹っ飛んでいった。
「ぐはぁっっっ」
「セ、セレクさまぁぁぁぁぁ?!!」
慌ててセレクのもとに駆け付けて体を起こす。見るとセレクは瀕死の状態だった。
アンネはセレクを傷付けたゴリアンヌに向かって叫ぶ。
「いい加減になさいまし!いつも言っていますでしょうがっ、気安く体に触れないで!と。あなた自分がとんでもない馬鹿力だと自覚していて?あなたが軽く叩いただけで、こうやって吹っ飛んでしまうの。腕なんか組んだら骨折してしまうのよ!やっと骨がくっ付いて完治したのに・・・どうしてくれんのよ!!」
「え~~~、そんな事いわれたって―――男のくせに弱くない?」
「・・・・・セレク様は弱くありません。あなたが馬鹿力なだけです!」
そうゴリアンヌはとんでもない怪力の持ち主だった。
軽くタッチすれば相手は吹き飛び、腕を組めば骨折、肩を組めば脱臼、抱きつけば全身骨折など・・・etc
そんな彼女の怪力ぶりを見た者達は、将来ゴリアンヌが歴代最強の騎士になるだろうと噂していた。
その一方でセレクとクラスメイト達は頻繁に彼女の怪力の犠牲者となっていた。その所為で誰もかれもゴリアンヌの事を女性としてみていなかった。
女性では無い何か・・・いや、人でも無い他の生物・・・そう、恐ろしいほどの怪力の持ち主“ゴリラ”だと。
女でも無い、人でも無い、ゴリラだと誰もがそう認識した。
そんなゴリラに挑むかの様に果敢に接触を試みる、所謂“勇者”がいた。
「ゴフッ・・・メ、雌ゴリラなんかに、まける・・わけ・・に・は・・・・・(ガク)」
「セレクさま――――――!!!お願いだから『男の面子がー』とか『霊長類に負けて堪るかー』とかで、こんなゴリラ女と無駄に張り合おうとしないで下さい。じゃないと、本当に死んでしまうわ!」
いくらアンネが注意しても『男のプライドが――』などのしょうもない負けず嫌いが発動して、セレクは毎回懲りずに猛獣に近付き、そして大けがを負ってくるのだった。
「はあ~~~、ちょっと叩いただけで大袈裟なんだよ。軽くスキンシップしただけじゃないか?それをギャーギャー騒ぐなんて、これだから女って面倒くさい」
「面倒くさいってなんですの―――!!だいたいあなたっ、自分が女だと・・いえ、人間だと思われていないですのよ!そんなんだからゴリラって言われているんです」
「はあ?!何よそれ――――――!!」
「うるさい、黙れゴリラ!!!」
「キイィィィィィィ――――――!!!」
「そこは、ウホッでしょうがっっっ!!」
「だからあたしはゴリラじゃないってば!!!ウホ―――――――」
こうして、アンネと他称ゴリラ女との攻防は続くのだった。
◇◆◇◆◇
(ゴリアンヌ)「あたしってサバサバしているから、女の友達っていないんだ」
(セレク)「いや、お前の場合女子に触れたら死ぬだろう。だから誰も寄ってこないんだ」




