表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Honey、トラップを仕掛けて~幼馴染が素直になる10秒前~  作者: 猫塚ルイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/11

第8話

重い瞼をゆっくりと持ち上げると、視界に入ってきたのは見慣れた執務室の天井だった。


窓の外からは夜の静寂がしんしんと忍び込み


部屋の中は魔法具の石が放つ、淡く柔らかな琥珀色の光に包まれている。


(私…また運ばれたんだわ。それも、彼の腕で)


お酒の残滓と「魔力酔い」のダブルパンチで、体の中はまだ熱いような


それでいて芯だけが凍りついているような、ひどく不安定な感覚が残っている。


けれど、背中から伝わってくる羽毛布団の極上の柔らかさと


鼻腔をくすぐる清潔なリネンの香りに、強張っていた全身の力が少しずつ解けていくのが分かった。


「……気がついた?エマちゃん」


すぐ傍から、耳に心地よく響く低音がした。


横を向くと、ベッドサイドの椅子に深く腰かけたアルくんが


今にも壊れ物を眺めるような、痛々しいほど心配そうな瞳で私を見つめていた。


その瞳には、昼間の園遊会で見せたあの刺すような鋭い光はなく


いつもの穏やかな、けれどどこか心身ともに疲れ切ったような色が濃く浮かんでいる。


「アル、くん……?」


私は力の入らない体に鞭を打ち、這いずるようにしてベッドの上に身を起こした。


まだ頭の芯がふわふわとしていて、思考が霧に包まれたようにうまくまとまらない。


アルコールが血管を巡っているせいか、心の防波堤がいつもよりずっと低くなり


理性の箍が外れかかっているみたいだ。


「アルくん……」


自分でも驚くほど、熱っぽく甘えた声が喉の奥から漏れた。


私は無意識のうちに、彼の凛々しい騎士服の袖をぎゅっと掴み


そのまま誘われるように彼の逞しい肩へとコテン、と頭を預けた。


肩越しに伝わってくる彼の体温が、胸を締め付けていた魔力酔いの残滓を優しく溶かしていく。


このまま、世界が止まってしまえばいいのに。


アイラの緻密な作戦も、背伸びしたハニートラップも


今はどうでもよくなってしまうほど、彼の隣は温かかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ