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第一話 〜学園の魔女〜(下)

『ハイ、気を取り直して次はここ、第2音楽室』


 千尋が戸の前に立っていう。


『ここは何が起こるの? “起こる前に”説明して』


 里良が言うと、千尋は話し始めた。


『ここでは……』


 ポロロロロロラララララリリリリリン!

 ……間に合わなかったが。


『コラー、“起こる前に説明しろ”と言っただろーがぁぁぁ! ……とにかく入ってみよう』


 里良は最初起こったものの、すぐ元に戻ると、戸に手をかける。

 すると里咲が、


『はぅ、怖いよぉ……』


 といって尻込みしたが、二人はかまわず戸を開ける。

 その途端、

 ピリリリリリラララララロロロロロンッ

 今度はピアノが高い音から低い音へと鳴った。


「キャー、何か居るのーー!」


 里咲が叫ぶと、千尋が手に持っていた懐中電灯をピアノへ向けた。

 真っ暗な音楽室に黒いピアノだけが不気味に浮かび上がる。


『里咲、何もいな……』


 里良が言いかけた時、又ピアノが鳴った。

 ポロロロロロララ……

 千尋がパッとライトをピアノのふちに移すと、

 ラララリリリリリン 「チュー」

 ネズミが走っていった。


『なーんだ、ネズミが鍵盤の上を走ってただけじゃん』


 千尋は少し残念そうにしていたが里咲はペタン、と膝をつく。


『あぅっ、怖かったよぉ……』

『泣くなぁ! ほら、次行こ』


 里良がいうと、里咲は里良にしがみついて3人は音楽室から出て行った。


『後二つだねぇ』

『さっき変な女の人が入ってきたねぇ』

『大丈夫かねぇ……』



『ぐすっ、……次は、なぁに?』


 里咲は今度こそ心の準備ができるよう、千尋へ聞いた。


『だ〜れも触ってないのに絵が……』


 ガタッ 『キャアアア!!』


『……傾くんだって』

『なんでいっつもこのタイミングで起こるかなぁ〜、開けるよ』


 ガラララ


『暗いよぉ、あれ、あの絵……?』


 里咲は絵を指す。幸いにも目が悪かったために、里咲には傾いている様に見えなかったので、叫ぶ事は無い。


『あっっ、絵が傾いてる!』


 里良の指した絵にライトをあてた千尋が言う、かと思うと里良がもう一度言った。


『よし、裏っ側を覗いてみよう』


 里良は絵に近づきながら続ける。


『留め具が緩くて外れただけってゆーのは無しだからね〜』


 しかし、裏をのぞいた瞬間、里良の体もカクン、と傾く。


『ど、どしたの?』


 千尋が駆け寄りながら聞くと、里良は微妙に「怒」の表情を浮かべながら言った。


『本当に留め具が片っぽ外れただけだった……』


 それを聞いた里咲は脱力する。


『はぁ〜。

(でも、目が悪くて良かった……)』


 里咲の目が良ければ、今頃大騒ぎになっていただろう。

 ……里咲だけであるが。


『それでは、最後行きますか!』


 千尋がそう言うと、3人は食堂のある寮へと向かった。


『最後は確か食堂だったねぇ』

『さっき、ここの食堂では使わない筈の緑茶のにおいがしてたねぇ』

『無事に終わると良いけど、ねぇ』


 石骨像の裏で、黒い瞳の二人がそういう会話をしているとも知らないで……。



 キィ……

『え〜っと、ここは何だった?』


 戸を開けた里良が千尋を振り返っていった。


『使ってない筈の湯のみが、』

「あ〜、今日もお茶が美味しいですねぇ……」

『……きれい、に…………』


 千尋の口が開いたまま止まる。

 少しの沈黙の後、三人は大声で叫んだ。


『うわぁぁぁぁ!』『キャァァァァ!』『……はうー!』


 約一名遅い気がしないでもないが、それは気にしない。

 ガタッ

 食堂の椅子が一つ動いた。

 人影が三人の方へと歩いてくる。


「あら〜。

そこのお二人さん、黒魔女さんになりませんか〜?

今なら私もついてきます!」


 すぐ近くまで来たのは若い女性だった。

 その女性は里良と里咲をじっと見つめながらそう言った。

 (あまり)危ない人物ではなさそうだと考えた里良は言う。


「黒魔女?! ……ていうかあんた、誰?」


 その言葉を聞くと、女性は言った。


「え〜とですね……、私は黒魔女の教師インストラクターさんです!」

「黒魔女の教師? そんなのいるの?(あと、自分にさんを付けるか? さんを)」


 里良の問いに“黒魔女の教師”さんはムッとして応える。


「黒魔女の教師さんなくして、黒魔女さんはありえないのです!」

「あ、それもそうか。え〜と、お名前は? 知らないし怪しいしね、黒教こくきょうさん」

「む〜、何か腑に落ちませんが……まあいいでしょう。

私の名前は高銅 里依紗です!」

「えっと、里依紗さん?

私、魔女さんに憧れてたの〜!」


 里依紗のエッヘンとした態度に、里咲はキラキラとした視線を向けた。


「え?! 里咲ちゃんと考えていってる? それ」


 すっかり里依紗に夢中の里咲に里良が問いかけた。


「うん、考えてるの〜。

魔女になって世界征ふ……じゃなくて、お空を飛ぶの〜!」


 里咲は一瞬黒い発言をしたが、幸いその場に居た人物には分からなかったようだ。


「あ〜、それは楽しそーかも。

うん、あたしもやる!」


 里良がそう言うと、里依紗は微笑んでいった。


「では、決まりですね」


 すると里依紗はおもむろにペンを取り出す。


「その証として、印を描かせてもらいますよ〜」


 里依紗の言葉に、二人はハテナマークを浮かべる。

 その様子に気付いたり里依紗は、苦笑いをしながら言う。


「あ、このペンは特殊でして、他の人には見えない契約の印が描けるんですよ〜」

「そういうのもあるんだ……」


 感心した様子の里咲を見ながら、里依紗は二人の制服を捲って手の甲に何やら不思議な模

様を描いた。

 ちょうど里依紗がそれを描き終えた時、あまりにおかしな人物の登場の為、意識を失っていた千尋が起き上がる。


「うぅ……! 誰っ!?」


 千尋は里依紗に気付くとそう言った。意外そうな顔を里依紗はする。


「見えるのですか〜?

どうして見えるのですか〜?」


 里依紗は千尋に二つの質問を投げかけた。

 千尋はぽかんと口を開ける。それを見ていた里良が千尋の代わりに言った。


「この顔してるって事は見えてるね。見えてるのは霊感が強いからだと思うよ。

千尋、この人は高銅里依紗……さん。黒魔女の教師インストラクターさんなんだそうな」

「へ、ぇー……。そぃー……」


 千尋はそう言うと、フラフラ食堂を出て行く。


「ところで〜」と、里依紗は気の抜ける様な声で言った。

「あなた方の家に……いそうろう、してもいいですか〜?」


 里依紗はあくまでも笑顔で言う。


「ほぇ?」

「はいぃ? あたし達、寮なんだけど……」


 里良がそういうと、里依紗はにぱーっと言いそうな笑顔で言った。


「だいじょーぶですよ〜。

見えないのでバレませんバレません♪」


 里良が言っている事と里依紗が言っている事はずれている様な気がしたが、生憎二人とも気付かなかったようである。


「え〜……どーする? 里咲」

「うん、良いと思うの!」

「じゃOKってことで」


 その事を聞くと、里依紗は頷いた。


「じゃあ決まりですね〜」


 里依紗と里咲の周りには、やはりノホホ〜ンとした空気が漂っていた……。






『見習い魔女誕生だねぇ』

『おめでたいねぇ』

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