第一話 〜学園の魔女〜(上)
改稿して加筆修正しました。
「全員起立!」
ガタガタガタ……ガタン!
「あぅ……」
初等部の少女が椅子を倒したため、元に戻した。
「これより、空鳥7年度、ホワイト学園一学期始業式を始めます。礼!」
その場に居た全員が頭を下げた。
「着席!!」
ガタガタガタ。
「ホワイト学園創始者」
この職業名に(うげっっ)と思わなかった在校生は居ないだろう。
居たとしても変人だ。
何たって、話が長くて有名なのだから……。
その後、創始者殿のお話は延々とに時間続き、生徒会、教師からの注意なども含め、計三時
間の始業式が幕を閉じた。
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「ふへぇぇぇ……」
初等部6年C組(先生込み)は、教室につくと同時にため息をついた。
……かと思うと、
「何だよあん人はぁ」
「話、長過ぎるよね」
「ムダに疲れるし」
「もはや七不思議の一つだよな」
と、次々に愚痴を言い出した。
「こらこら、あのお方はホワイト学園創始者様だぞー、一応敬っておけ〜」
この、威厳のかけらも無い人物はこのクラスの担任である白炎雷牙(先生)である。
「おーい、一応は無いでしょーが、一応は」
「ああ、あの人創始者だったんだぁ……」
「?!三十一回は創始者って聞いてるでしょ?」
「あれぇ〜、そうだっけ?
私聞いてた?」
「あ〜も〜、入学式で一回、今までの始業式やら終業式やらで30回……あ、去年は先輩の初等部卒業式にも居たから32回か」
と、どーでも良い話をしているこの二人は双子の黒羽 里良(姉)と、里咲(妹)である。
「まぁ、そんなどうでもい人の話よりも、席に着けー。
十秒以内につけよー、着かなかった奴はグランド10周だ〜」
そんな、白炎の声が響き渡ると、一瞬のうちに全員席に着く。
「ハーイ、出席とるぞー・・・あーめんどくさ」
ボソッと最後に余計な言葉をつけた白炎に、生徒の一人が立ち上がって指摘した。
「先生!そんな事を面倒臭がっては教師として駄目だと思いますっ!」
「・・・・さ、気を取り直して出席とるぞ〜。」
白炎は生徒の言葉をはぐらかすように言う。
「梅切!」
「はい!」
「王后!」
「はい?」
「海道!」
「ヘイ!!」
「過選無!」
「はい」
・
・
・
・
・
「里良〜、里咲〜知ってる?」
6年C組28番幽蘭 千尋が黒羽姉妹に話しかけた。
「「何を?」」
二人は声を揃えていった。
千尋は
「この学園の七不思議。本当に起こるらしいから今夜、行ってみない?」
と、話を持ちかけた。
「今夜?あたしは良いけど里咲は?」
「う〜ん、良いよー。
……怖くない?」
そう言う里咲に里良が突っ込んだ。
「怖くなかったら七不思議じゃないでしょーが。
ねえ、千尋」
「同感」
二人にいわれ、里咲は、
「そ、そんなの分かってたの!
べ、別に暗いの怖い訳じゃないの!!」
と、あわてて言い訳をした。
しかし、里良は悪戯っぽく笑うと、
「暗いのが怖い訳じゃないって七不思議は怖いの?」
と、責めた。
「…………どっちにしても、怖い……よ…………。」
ついに白状した里咲に里良は、
「あ……そーいやあたし達、お化け屋敷に入った事無かったね。
寝る時も豆電球つけてるし」
そうブツブツ言って一人で勝手に納得していた。
それを聞いた千尋は言った。
「じゃ、里咲はパス?」
「ゔ……行くの。里良が行くんなら……」
「ん。じゃ、今夜8時、里良たちの部屋行くね」
と、里良が言い、千尋はそれに賛成して3人は黒羽姉妹の部屋へ向かった。
「……おもしろそうだねぇ」
「……今夜、こっそりついて行ってみようかねぇ」
真っ黒な二つの陰が、そんな会話をしているとも知らないで……。
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「で、七つ目は食堂のおばさんが気付いたんだけど、使っていない筈の湯のみの一つだけが妙に綺麗になっていたんだって。
半月前に急に綺麗になってからずーっと綺麗なままだとか」
千尋はそう言って話を終わった。
「へぇ、おもしろそうだね。
早く夜になんないかなぁ。
ねぇ、里咲」
里良いは里咲くの方へ振り向いて言った。
「う……うん、同感なの。」
里良の問いに、里咲は目線を外さざるを得なかった。
里良はすぐその事に気がつくと言った。
「あ、ゴメン。
えー……と、探検するのに必要なのは…………」
千尋は里良が言おうとしていた(と思われる)物を手に取って行った。
「懐中電灯」
引き出しの中を探していた里良は言った。
「あっ、いつの間に!」
「ここ来てすぐ」
「ヘー」
そんな会話を隣の部屋から同じチョーカーをした二人が聞いていた。
『ますますおもしろそうだねぇ』
『早く夜の8時になってほしいねぇ』
『お〜、やっぱ不気味だよね〜夜の学園は。 二人とも、7つのどれから行く?』
ホワイト学園特別教室棟にて。小声で里良は他の二人に尋ねる。
千尋はハテナの顔をすると言った。
『7つ? 4つだよ。 三つは理由分かってるもん』
千尋の言葉に今度は黒羽姉妹が?の顔になった。
『 三つは分かってるなら回らなくて良いよね……?』
里咲は不安そうに聞く。
『うん、めんどいし』
『で? 分かってるのは?』
里良が聞くと、千尋は待ってましたという様に話し始めた。
纏めると、
・“創始者の話が長い”のは言いたいことを全て言うからである。
・“教室の机の上に置いた教科書が開いていた”のは、白炎先生の窓の閉め忘れの所為である。
・“プールで水音がする”のは忍び込んで遊んでいく人がいるからである。
……だ、そうだ。
『おわかり?』
千尋がそういって聞くと、二人は声を揃えていった。
『『おわかり』』
『よし、じゃー行こう。 まずは理科室』
千尋が言うと、里良が、
『んじゃ、さっさと見て戻ろ。 先生に見つかったら怖いし』
と、言ったので、3人は小走りで理科室へと向かった。
ガララララッ
千尋が理科室の戸を開ける。
月が雲に隠れているだけあって理科室の中は真っ暗だ。
里咲は少し身じろぎをする。
『あぅ〜、やっぱり怖いの〜。
ひゃあ!!』
理科室に入った瞬間、里咲は何かを見て、里良の腕へと悲鳴を上げながら飛びついた。
『どったの?』
『い、いま……、人体模型が……キャァァァー!』
里咲が里良へと状況を説明しようとすると、又も里咲は叫んだ。
『だーかーら、どったのって聞いてるでしょーが。 説明してよ』
里良が再び聞くと千尋が人体模型を指していった。
『多分……というか全体あれ(・・)のせーだよっ』
カラッ…………カラッ…………カラッ……………………
(どういうわけか)台車に乗った人体模型が微妙に、ほんっとうによく見ないと分からない位動いた。
『うぁっ……誰か後ろに隠れてるとかじゃないよね?』
そう言って里良がそーっと近づいて人体模型の乗った台車の裏を覗き込んだ。
そのとたん、
「う゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!」
と大声を出した。
千尋が近づきながら、
『どーしたの? ……というかそんな大声出したら先生にバレるかもよ?』
というと、里咲が真っ青になっていった。
「黒い物体Gよー!黒い物体G!!」
その意味不明な“黒い物体G”という単語について千尋がハテナマークを浮かべると、里良が、
『イコールゴキブリ』
と、すっきりした解説をした。 千尋は一瞬納得したが、すぐにハテナマークの表情に戻った。
『なんで里良がゴキブリにビビってんの? 虫“には”強かったじゃん』
『いくら何でもこーんなに居てビビらなかったら超のつく変人だっての!(あと、“には”は余計だ!)』
里良がそう言いながら台車の裏を示す。
そこには何十匹というゴキブリがうようよしていた。
『うげぇ』
『早く次へ行こうよぅ……』
『そだね……』
そして3人は理科室、今や「ゴキブリ室」を後にした。
3人の出て行った後、理科室の教卓の下から出てきた、髪の毛て左目が隠れた少年と、同じく右目の隠れた少女が話をしていた。
『4つめといたねぇ』
『残りは3つだねぇ』
『黒い物体Gって面白かったねぇ』
『『キャハハハハハハ……』』