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第23話 灰よりも黒く


 石和田ゴウタロウ、巨漢にして豪快。『岩石拳法』という太古にして殴り合いを至高とするデッキを扱う男である。


 管理局において三番隊を率いる主席、つまり公的に強者と認定される程の実力者。


 そして何よりも彼を更に高みへと至らせるカードが存在する。


 管理局にはとあるシリーズがある。外にはほとんど出さないが、黒のカードやそれ以上の脅威において使用が許される強力なカード。


『どうしたどうした!我が筋肉の前では立ち往生か!』


 『八大天使 バイキエル』、相手を消しそうな名前であるが仲間を超強化するマッスル天使である。


「やっぱり強い…………!でもまだ倒れないよ!」


「あれが『白のカード』か。上半身裸の天使とか気色悪い」


「おやおや、変わらないですね」


 天使の加護として味方のパワーを大幅に引き上げるポージングを見せびらかす『八大天使 バイキエル』。


 相手のモンスターのパワーが上がりすぎて攻めるに攻められないマキコはターンが回ってきたと同時にカードを引く。


「あと一歩足りない…………けどやるよ!」


 叔父を倒すまではいかないが盤面を整える必要はある。故に彼女は一枚のカードを切る。


「お願い、『合金拳法ニックロルト』!」


『任せよ。儂が何とかしようではないか!』


 ズン、と重量級の着地音を鳴らして灰色の老人が現れる。


 四本の腕で構えを取り、いつでも攻撃に移れるぞと言わんばかりの圧を見せつける。


 だが、それも『八大天使 バイキエル』と比べたら見劣りする。黒のカードと言えど所詮は数多あるうちの一枚、『八大天使』という神に仕える八枚しかないシリーズと比較するのは間違いかもしれない。


「ターンエンド!」


「殴ってこないのか!」


「殴ったところで返り討ちになるでしょ。そこまで無暗に行くわけないじゃん」


『はっはっは!よく見ているねお嬢さん!』


「ならば俺から攻める!その黒のカードは破壊させてもらおう!」


 『岩石拳法』も相手を戦闘破壊できれば効果が発動できる。『金剛拳法』と効果を比べたら劣るが打点も持ち合わせている。


 しかし、ゴウタロウはマキコの手札に戦闘破壊耐性を付与するカウンターカードを握っていると睨んでいる。


 勘ではあったが当たりであり、次のターンに使わせないため敢えて殴り耐えさせようとする魂胆があった。


「行け!黒のカードを倒し完全たる拳法を見せるんだ!」


『儂とて昔はともかく今は真面目に拳法を収めているのだがな』


 ゴウタロウの合図で『岩石拳法』のモンスターが『合金拳法ニックロルト』に襲いかかる。


 平時なら返り討ちにするところだが『八大天使 バイキエル』によってパンプアップされている彼らにパワーが負けている。


「カウンターカード!『食いしばりの底力』!」


「やはり切るか!だが、耐えたところで他のモンスターを…………!」


『させると思うてか!』


 指示する前に、いや、指示を受けなくとも役割を果たさんと『合金拳法ニックロルト』は隣に仲間として並んでいる『金剛拳法』モンスターを守っていく。


 戦闘破壊さえされなければ『拳法』モンスターは効果を発動できない。


 だが『合金拳法ニックロルト』はバトル終了時に回復できるため、勝敗に関わらず再度攻撃or防御できるため無限の矛と盾となるのだ。


「そのような効果があったのか!」


「やっぱり馬鹿ではないか。効果すらちゃんと読まないとはの」


「おやおや、変わらないですね」


 ケッ、と馬鹿にするような笑いを漏らす『悪神ウェロボラウス』とやや呆れたような笑みを浮かべる彼。


 プレイヤーならでた時点で効果を確認しなければならないというのに、こういったミスにより勝負は大きく傾くのだ。


「ならば!その黒のカードの気力を削り切る!」


 『合金拳法ニックロルト』が心折れるまで殴る。敢えて他モンスターを倒して戦力を削る戦法をとり、頭数を減らしたく無いであろう相手は防御せざるを得ない状況を作る。


 本来なら破壊されず無限ブロックできる相手がいるため悪手ではあるが、相手は精霊。戦えば怪我もするし痛みに耐えられず拒否するかもある。


 故に気力を削ろうとする戦法は公式では無い戦いで有効なのだ。


「ニックロルト、頑張れるね!」


『無論!この程度!』


 残念なことに一つ前のバトルでめちゃくちゃボコされた『合金拳法ニックロルト』には関係ない。無限アタックで根性を試された彼にとって苦痛はあれど耐えられる。


『ほう!耐えるか!なかなかいいマッスル見せるね!』


「あーきーたー!帰ろう!何が悲しくて筋肉の見せ合いなど見なきゃならんのだ!」


「まあまあ、もう少しで終わりますから」


 裏で駄々をこねる『悪神ウェロボラウス』と何とか宥めている彼の声をBGMにしてバトルは進む。


 しれっと噛み付かれてるし流血しているのだが誰も気にしないのだろうか。


「私のターン!ドロー!」


 そしてターンが回ってきたマキコがドローし、そしてカードを確認した瞬間、勝利の道筋が開かれる。


「私は『復讐の研師』を召喚!そしてそのままバトル!」


 モンスターを一体出しただけで確信できるものなのか?


「ニックロルト、お願い!」


『委細承知!』


 無謀にも『合金拳法ニックロルト』は『八大天使 バイキエル』に戦闘を挑む。


「血迷ったか!パワーではバイキエルの方が上だ!」


『いや違う、君は握っているのだね!』


「そういうこと!手札から『食いしばりの底力』を発動!」


 2枚目の耐久カード。既に握っていたこれを何故ここで切ったか?


「『復讐の研師』は戦闘に敗北(・・)した時に効果が発動する。破壊じゃなくて負けた時だから無限に負け続けてたら無限に発動できる!負けるたびに相手のモンスターのパワーを下げていくよ!」


「なんだと!そのために黒のカードを突っ込ませるのか!?」


『カカカっ!勝負であるなら素直に突っ込みたいのだがな、これは試合なのだ。勝負に負けようと試合は取らせてもらうぞ!』


 ガン!と『八大天使 バイキエル』の腹筋に拳をぶつけ、合金でできた腕が少し欠ける。


 そのカケラを『復讐の研師』が即座に拾い、持っていた研ぎ石で刃物に変えて他モンスターに投げつける。


「しまった!パワーを上げようと下げられたら戦闘で破壊される!」


「そういうこと!こっちのモンスターが全員戦闘破壊した時の効果を使えば叔父さんのライフは全部消し飛ぶ!頑張って、ニックロルト!」


『応援されては倒れられんなぁ!』


 全身にヒビを入れながらも『八大天使 バイキエル』を殴り続ける。


 その度に『復讐の研師』がゴウタロウのモンスターのパワーを下げて戦闘で破壊できるまで下げていく。


『なるほど!見事だ、その根性と精神は賞賛に値する!』

 

 ガンガンと胴体を殴られても微動だにしない『八大天使 バイキエル』が『合金拳法ニックロルト』に賞賛を贈る。


 黒のカードではあるが、他に比べると遥かに高潔な精神を持つ『合金拳法ニックロルト』を認め始めていた。


「いっけえ!みんなで一斉攻撃!」


 パワーが下がり切って、しかし0以下ではないためギリギリ生かされていたゴウタロウの『岩石拳法』モンスターに『金剛拳法』モンスターが襲いかかる。


『悪いな天使、儂らが勝たせてもらうぞ』


 ゴン、と最後の1発を『八大天使 バイキエル』に叩き込み笑う。


「まずい!バイキエルで防御…………!」


『ゴウタロウ、残念だが私のパワーも今ちょうど彼に負けるまで下げられた。打つ手なしだ』


「馬鹿な、うおおおお!!!!?」


 モンスターが戦闘破壊された際に発動する『金剛拳法』モンスターの効果、それに加えてさらに倍発動される『合金拳法ニックロルト』の効果によりゴウタロウのモンスターとライフは全て破壊される。


 そしてピーというバトル終了のブザーと共に精霊以外のモンスターが消える。


「…………勝てたぁ」


『よくやったな。儂らの勝利だ』


 緊張の糸が切れたのかへたり込むマキコに全身にヒビが入りボロボロになりながらも主人を労う『合金拳法ニックロルト』。


 思わぬ強敵に勝利できた実感がじわじわと湧くと同時に少し疑問ができた。


「ヒビ、すごいね」


『金属だからな。厳しく使い込めばこうなるものよ』


「じゃあ師匠にボコボコにされた時は何で顔が腫れてたの?」


『…………何故だ?』


 そういえばヒビが一切入らずボコボコにされたのがさっきだったことを思い出し、師匠に対する謎がまた一つ深まった。


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