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第12話 要監視対象?


「せんぱーい!見てくださいよこの動画!」


「職場ですよ、少しは静かに話しなさい」


「えへへ、すみません」


 管理局、休憩室にて職員2名が休憩時間をゆったりと過ごしていた。


 暇つぶしと言えばバトル…………をするのではなくSNSを見たり小説を読んだりとそれぞれが思うままに過ごしている。


 後輩から話しかけてきた話題を無為にしないよう神宮司ソノカは後輩が見せてきた動画を見る。


「これは、開封動画?」


「どっかの商店街が開いたイベントらしいんですけど、そこで一等賞が当たった人が3ボックス開封してるんですけど、これが結構ためになるんですよ」


「へえ、ここの近くの商店街じゃない」


「そうなんですよ!羨ましいな、経費とかじゃなくて普通にボックスを開けられるのは」


「そうね、それで他とは違うところはあるの?」


「はい!カードパックをただ開けていくならすぐに終わるんですけど、再生時間を見てくださいよ」


 ソノカは後輩の言う通り気にしていなかった再生時間を見てみると、一時間を軽く超えているではないか。


「パックを剝くだけなら誰もすぐなんですけど、この人のパック開封は1枚1枚丁寧に解説を挟んでくれるんですよ」


「どこかの教授が当てたのかしら?」


「いえ、それが何の情報もない一般人みたいですよ」


 すごいですよー、と後輩がおもむろに動画を再生し始める。


 音量は控えめにして周りに配慮しつつ、ソノカは動画を見始めた。


 最初からノーマルカードの解説から始まり、そこそこの量がある筈の新カードをしっかり説明し切っていたのに驚いた。


 テーマ内だけでなく、古いカードと絡ませてどのような挙動をするかという話も組み込み全てのカードに何らかの用途を見出す慧眼。


 確かに一般人では出てこない知識量だ。だが、この声はどこかで聞いたような気がする。


「…………あ、もしかしてあの時の?」


「先輩、知ってる人なんですか?」


「いえ、確信は持てないけど、声と話し方が前に事情聴取した方に似てるんです」


「へぇー!そんな事があったんですね」


 ソノカは思い出す。丁寧で話しやすく、しかし手や首に子供の噛み跡を残していた不自然な人間のことを。


 よく考えたらソノカが黒のカードとバトルを始めた際には知らぬ間に帰宅しており、翌日そこを事情聴取してものらりくらりとかわされたのだ。


 それだけでない、しれっと黒のカードの情報を聞いてきたあたり何かしらの執念があったりするのだろうか?


「もしかしたら、また黒のカードに関わってるのかもしれない。調査しに行く」


「へ?あ、でも先輩この前に『最近の予定が詰まりすぎて休みが取りにくい』みたいなこと言ってましたよね?」


「……………………言ってた」


 がくり、とソノカは露骨に肩を落として仕事の忙しさに時間を取られることに絶望する。


 まだ二十代前半とはいえ色恋もなく絶対に勝たなければならないバトルばかりでリフレッシュ要素が欲しいのに、人員不足でままならない。


 いくら主席であっても現場に駆り出される頻度は下と変わらないのが悲しい現実なのだ。


「他の人に調査を回さないといけないかもね」


「ですねー。私達も自分の仕事で手一杯ですし、暇な部署はないですかねー?」


「だったら俺がいるぞ!」


 ドンッ!というほどの声の大きさと存在感が背後に現れ、突然のエントリーに2人はビクッと体を震わした。


 圧倒的存在感、鍛え上げられた山の様な肉体、そして厳つい顔。


 彼こそが管理局三番隊主席、石和田ゴウタロウである。


「うるさいですよ。休憩室も広くないんですから」


「はっはっはっ!済まなかったな!しかし興味深い話だ!そんじょそこらの教授と名乗っている者よりも知識が多いと話題となっている人物を知る者が近くにいたとは!」


「石和田さん、一体いつから…………?」


「しかし!俺も忙しいから自分の足で調べに行けないのも事実!管理局は人使いが荒すぎる!」


「最近は黒のカードが活発化しているし、本当に手が足りない!一般からのプレイヤーを雇用するのも資金がいる!ならば使えるところは使うものだ!」


「へえ、どこを使うというのです?」


「俺の姪だ!」


 どんっ!と分厚い胸板を張り勢いよく口に出した。


 見た目通りの年齢…………と言うわけでもなく石和田には姉が居るのでその子をタダで使おうと言いたい訳だ。


「無論、姪も強くなりたいと今を頑張る学生だ!強くなれば良し!情報を引っこ抜けたら万々歳!カードを買う金を渡せばあいつも簡単についていく!」


「…………いえ、分かるんですが謎の相手に身内を向かわせるのはどうかと」


「そ、そうですよ!知識はあっても実は悪い奴、なんてことあるんですから、ね?」


 ソノカも後輩も自信満々に言う石和田の言葉に呆れていた。


 人目がつく場所ならいいが、必ずしも善人であるとは限らない。


 というか、全てのカードを褒める事ができる変人に姪を送っていいのかというデリカシーの無さを女性陣は咎めてるのだ。


「大丈夫だ!何かあれば俺が呼ばれるだけでなく、単純に俺を投げ飛ばせるくらい強い!」


「あの、黒のカードって腕っぷしは関係ないよね?」


「意志の強さで力に飲まれるかどうかは決まるので、少しの基準にはなりますが…………」


「だろう!なあに、姪も姉に似て堅物!そう簡単に知識だけある男に靡くものか!」


 はっはっはっ!と豪快に笑う石和田。それを半目で見つめる2人。


 大雑把でデリカシーが無いから投げられたりするのでは無いかと思った人、正解である。


 別に悪気がなくても豪快なことを口に出すのが石和田の良いところでもあり悪いところでもある。


 だからこそ慕う人が多くいるのだ。


「まあ、好きにしたらいいですよ。周りに迷惑だけはかけないでくださいね」


「無論だ!注意はしっかりしておくからな!」


 そんな話をしていたら休憩時間は終わり、ため息を吐きながらソノカと後輩は業務に戻るのであった。


 一方その頃、話題に上がった彼はと言うと。


「なに読んでるのだー?」


「プロプレイヤーのデッキ構築論です。やはりどこも殴り合いが主流ですね。コントロールやハンデスも流行りそうなくらいのカードプールが揃ってるのですが、黒のカードに関わる際にカードの入れ替えをする必要があるかもしれませんね」


「我も見る!一緒に考えるぞ!」


 角付き褐色幼女と寝そべりながらイチャイチャしていた。


 裏で働く人たちをよそに不労所得万歳の生活を送っている。


 オチはない。以上。


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