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第10話 カードは発生するモノか?


「おや?」


『むむ、黒のカードだ』


 ある日、彼は『悪神ウェロボラウス』と散歩していると道端にカードが落ちていることに気づいた。


 カードは基本的に工場で印刷されてパックに封入されてから世に出回る。


 プロモカードだったり特定個人にのみ所有を許されるカードなど人の手で作られる例外はあるが、基本的に普通の人の手に渡るカードは工場で作られたものである。


 そして、黒のカードのような『自然に』現れるカードも存在する。


『拾ってみろ、我に合うカードかもしれん』


「カードが道端に落ちてるのは少々いただけませんね」


 この世界のカードの価値はかなり高い。ストレージで投げ売りされているカードですら1枚500円と人によっては一食分の食費になるレベルで売られており、余程の事情でなければ捨てられる事もない。


 そして、自然に現れる例外というのが精霊が直接干渉してカードを生成したり、強い意志と勇気で書き換えられたり、無から生まれるタイプもある。


 黒のカードは後者であり、このように道端に落ちていることが多いのだ。


 それを知りながら彼は落ちているカードを拾う。


 カードは属性ごとにイラストの外枠の色が違う。


 各々の属性の色に染まっており、一眼でわかりやすくなっている。


 彼の目の前に落ちている黒のカードも、文字通り黒色のカードであり、ついでに暗いオーラも纏っているので危険だともわかりやすい。


 特に何も考えずに拾ってみる。


 カードには小さなカエルの絵が書かれており、何故かドヤ顔しているように胸を張っている。


『ふっふっふっ、拾ったなー?』『拾ったね』『気づいちゃったね』『手に取ったね』


 名前を見た瞬間、幼い声でテレパシーのように彼の脳内に直接語りかけてくる。


 彼ほどのプレイヤーならこの程度で驚かない。むしろ胸ポケットから語りかけてくる存在が居るので新鮮さもない。


 ただ、カードから語りかけているのではなく別の場所からテレパシーを飛ばしているような感覚が彼にはあり、何処から話しかけているのかを探す。


『ここだよー』『見つからない?』『じゃあ僕たちから出る?』『仕方ないなー』『貸しだからねー』


 どうやら相手から現れてくれるらしい。


 とりあえず彼はどこから現れるか確認するために一度正面を向く。


 すると、彼の散歩コースである住宅街にある電柱の上から何かが飛び降りてきた。


 本当に目を凝らさなければ分からないほどの小さい生き物がぺちぺちと地面に落下する。


 そして、彼は落ちてきた生物とカードのイラストを見て納得した。


『オタマ!』『オタマ!』『オタマー』『オタマ?』『オタマっ!』『オタマだよー』『オタマ!』『オタマっ』『オタマー』『オタマなの』


『『『『『『『『『『

    みんな揃って、オタマ!

              』』』』』』』』』』


 ちょーん、という気の抜けた効果音と共に指先に乗るサイズの黄色い蛙が10匹それぞれポーズをとっていた。


『何だこいつら』


「素晴らしい。その連携ポーズは相当練習したんでしょう」


『『『『『『『『『『

    えへへへへ〜

         』』』』』』』』』』


 『悪神ウェロボラウス』も困惑する登場だが、彼は幼いながらかなり練習したんだろうという登場ポーズに拍手を送った。


 『オタマ』と名乗った蛙達は照れくさそうに体を揺らしているが、カードの名前は『猛毒殺両生類オタマ』と書かれている。


「このような登場をしたということは最初から待ち伏せしていたのでしょう。わざわざ自分のカードを置いてまで」


『そうだよー』『ママ探しー』『あと寄生先…………じゃなかった』『パートナー探ししてるー』『でも全く気づいてくれなかった』『みんなにスルーされてた!』


 次々とテレパシーで伝えてくるが、かなりわちゃわちゃしていて整理しづらい。


 とりあえず、自分の使い手となる人間を探していて誰かが来るのを待っていたのだろう。


 ただし、実際に通ったのは彼以外居なかったらしい。


「なるほど、家探しということですか」


『こいつ今寄生とか言ってたぞ』


『役に立つからー』『そこそこいい暮らししたーい』『結構強いからー』『集団で戦うよー』『防御面は強いからー』『トドメのカードもあるよー』


 キラキラとした目で彼を見上げる『猛毒殺両生類オタマ』達。


 20の瞳が彼を見つめている中、カードのテキストを読んでみる。


「なるほど…………確かに効果は強いです」


『『『『『『『『『『

    そうでしょ〜

         』』』』』』』』』』


「でも私達のデッキでは十全に使えませんね」


『うーむ、我のデッキでも一枚だけなら採用できるが…………貴様ら複数揃って使えるやつだからもっていくにしても一枚だけだぞ』


『『『『『『『『『『

    えーーーーーーーーーーっ!!

                 』』』』』』』』』』


 これでもかと口を開いて全力で驚いている『猛毒殺両生類オタマ』達は自分達全員が採用されると思っていたらしく、現実を受け入れられていない様子だった。


 『悪神ウェロボラウス』が先程から余裕だったのは複数枚採用される訳が無いと確信していたからである。


 これが正妻の余裕というものなのか。胸ポケットに入っているカードイラストもずっと余裕そうに笑っている気がする。


『ぐぬぬぬ』『なんでー!』『僕たちも強いのにー!』『納得できなーい!』『無理にでも使えー!』『バトルだバトルー!』『この世界はバトルが全てだー!』『僕たちが勝ったら僕たちをメインにしろー!』


『は?』


「ウェロ、落ち着いて」


 黒のカードがバトルを申し出て、勝てば相手を好きにできるのはよくあること。


 ただし、NTR宣言を受けた『悪神ウェロボラウス』が9割キレたため彼は胸ポケットを撫でて必死に宥める。


「ウェロ、安心してください。貴女の愛があれば私は無敵です」


『ぬ、ぬぬぬ、そう言われるとまあ、分からんでもないが?絶対に勝つとわかってるが?それはそれとして奴ら不快だから喰ってしまおうか』


「お腹壊しますよ」


『『『『『『『『『『

    壊さないもーん!

           』』』』』』』』』』


 毒蛙が何か言っているが、彼は冷静に懐から『悪神ウェロボラウス』が入っていないデッキを取り出す。


「致し方ありません。すぐに終わらせましょう」



『『『『『『『『『『

    バトルだバトル〜!

            』』』』』』』』』』


 こうして、他人から主人を奪おうとする10匹の蛙と『悪神ウェロボラウス』のために絶対に勝つ男の戦いが始まった。








〜●〜●〜●〜●〜







「『No.1ショット』を詠唱します。このカードの効果でコスト1のカードを全て破壊します」


『『『『『『『『『『

    ぎゃーーーーーーーーーーっ!!!!!!

                      』』』』』』』』』』


「私の場のモンスターの打点が貴方達のライフを上回りましたので一斉攻撃で終わりです。対戦ありがとうございました」


『すっごい難なく終わった…………』


 『悪神ウェロボラウス』も困惑するほどあっさりと勝負がつき、彼の勝利で終わった。


 敗者の『猛毒殺両生類オタマ』達はひっくり返ってピクピクと痙攣していたが、敗北を受け入れたのか全員全く同じ動きで元に座り直し、彼を見上げて言う。


『あーん!あーん!』『負けちゃったー!』『ママー!』『今日も野宿だー!』『次は勝つからー!』『家乗っ取ってやるー!』『対策してやるー!』『お腹すいたー!』『あーん!あーん!』


 ぴょんぴょこと跳ねる彼等だったが、一瞬、足を止めて振り返る。


『10話おきに出てやるからな』


「何を言ってるんですか貴方は」


 ぴょんぴょんと跳ねながら捨て台詞を脳内に叩きつけて泣きながら去っていった。


『2度と来るなバーーーーーーーカ!』


「こらこら、お口が悪いですよ」


 実体になっていたら中指を立てていたであろう『悪神ウェロボラウス』を諌めながら、十分外を歩いた1人と1枚は帰路に着いた。


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