永遠の形を守る!の巻!
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「――たとえ神にだって俺は従わない」
ゴヨウは、そう言って虚無戦線へ出陣した。
「ようやくわらわに逆らったか…… 子は親に逆らってこそ一人前じゃ……」
蛇遣い座の女神は寂しそうに微笑み、ゴヨウの出陣を見送った。
ゴヨウはアーマー騎兵「猟犬デッドショルダーカスタム」を駆り、敵アーマー騎兵部隊と交戦する。
混沌の闇から現れた敵アーマー騎兵は、未来から来た人間の悪意である。
「リア充、爆発しろおー!」
コックピット内でゴヨウは叫ぶ。
彼は人類を守りたいわけではないが、チョウガイやソンショウの未来を守りたかった。
そのために彼は「蛇遣い座の女神」に初めて反抗した。
だが、リア充には爆発してほしいのだ。
チョウガイもソンショウもリア充である。
なので、ゴヨウは血涙を流しながら、自身の矛盾した思いと葛藤しつつ、未来から来た「悪意」と戦うのだ。
過去の自分を許せない者達が、未来から波動を送ってきている。
いわば、死後の後悔の念が現代を襲っているのだ。
「うおおおー!」
ゴヨウの猟犬デッドショルダーカスタムがマシンガンを連射し、ロケットランチャーで敵を撃破していく。
だが多勢に無勢、やがて武装が尽きたゴヨウの猟犬デッドショルダーカスタムは、敵アーマー騎兵の一斉射撃で大破した。
すでに脱出していたゴヨウは「ウィンドセイバー」に乗り換え、大空へと飛翔した。
蛇遣い座の女神からゴヨウに贈られた黄巾力士ウィンドセイバー。
神秘の力を秘めたウィンドセイバーは、音速を越える速さで急停止、急旋回が可能だ。
飛行形態のウィンドセイバーは、二門のオーラキャノンで敵アーマー騎兵部隊をあっという間に蹴散らした。
更に、人型に変形したウィンドセイバーを駆り、ゴヨウは敵に突き進む。
闇の彼方から飛来するのは、昆虫に似たフォルムを持つ黒い黄巾力士だ。
それは「百八の魔星」最大の難敵シブンキョウの駆る黄巾力士であった。
「俺は人を殺さない! 人の怨念を殺す!」
ゴヨウのウィンドセイバーが、オーラソードで斬りつけた。
シブンキョウの昆虫型黄巾力士が、オーラキャノンを発射した。
虚無の彼方で両者は相討ちとなって、虚無戦線に果てた……
「答えは人が出す」
宇宙最古の生命体である開拓者の一人、カーレルは言った。
「未来を望む者が多かったからこそ災禍は払われ、人は命を未来へつないでいけるのだ」
カーレルの言葉をゴヨウは聞いていた。
彼はシブンキョウと相討ちになったはずだったが、まだ存在しているとはどういうことなのか。
生かされているということなのか?
「まだ終わりではないのだよ、ゴヨウ」
カーレルの言葉に優しさが混じっていた。
七夕の夜、チョウガイとゾフィーは会っていた。
たまにしか会えぬ二人は、共に夜空の天の川を見上げていた。
「ゾフィーさん……」
「チョウガイ様……」
満足げに微笑して見つめ合う二人。それは「不滅の愛」の体現だ。
「回らない寿司がいいんだけど」
ツンツンした様子のギテルベウス。彼女も彼氏のソンショウと会っていた。
「お、おう! かかってこいや!」
闘志みなぎるソンショウ。彼とギテルベウスはケンカばかりしているが、だからこそ「男と女」の永遠の形の体現だ。
「だいじょうぶよ、会長!」
「あたし達がついてるからね!」
ソンショウの側には、さくらとこゆきがいた。
さくらは混沌に属する怨念の一体だったが、ソンショウとギテルベウスのケンカを眺めるうちに、女の一念を取り戻した。
こゆきはひ孫の結婚式を目前にして亡くなった女性だが、ソンショウの導きで一時地上に戻り、新たな旅立ちを見送ることができた。
さくらもこゆきも、ソンショウには敬愛と恋愛の感情を抱いているのだ。
そして、人界ではソンショウは大学の文化祭執行委員会会長、さくらは副会長、こゆきは書記だ。
また、ギテルベウスはハロウィンの女妖魔だが、ソンショウと出会って変わった。
「お、おう、頼むぜ! お前らも食えよ!」
「会長も食べてくださいよ、私がお金出しますから」
「あたしもバイト代持ってきたよ、好きなもの食べて!」
「あ、あんた達は何なのよ……」
化粧は濃いが美しいギテルベウスの額に、青筋が何本も浮かんできた。凄絶な美人だ。
ソンショウ、ギテルベウス、さくら、こゆき――
男一人と女三人が紡ぐ運命の綾は、奇縁と称して間違いない。
「うおおうー、守るんじゃなかったー!」
ゴヨウは血涙を流して後悔しながら、虚無の闇で叫んだ。
人類を守りたいわけではなかった。
だが、チョウガイとソンショウの未来を守るために戦った。
しかし、リア充は爆発してほしい……
天の機を知る宿星に生まれた、百八の魔星の一人――
天機星「知多星」ゴヨウの戦いはまだ続く。
「永遠の形」を守るために。
そして、ゴヨウがチョウガイやソンショウのために、命を投げ出して戦った「義」の思い――
それもまた永遠の形だ。




