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虚無戦線  作者: MIROKU
ラグナロク
98/99

永遠の形を守る!の巻!


   **


「――たとえ神にだって俺は従わない」


 ゴヨウは、そう言って虚無戦線へ出陣した。


「ようやくわらわに逆らったか…… 子は親に逆らってこそ一人前じゃ……」


 蛇遣い座の女神は寂しそうに微笑み、ゴヨウの出陣を見送った。






 ゴヨウはアーマー騎兵「猟犬デッドショルダーカスタム」を駆り、敵アーマー騎兵部隊と交戦する。


 混沌の闇から現れた敵アーマー騎兵は、未来から来た人間の悪意である。


「リア充、爆発しろおー!」


 コックピット内でゴヨウは叫ぶ。


 彼は人類を守りたいわけではないが、チョウガイやソンショウの未来を守りたかった。


 そのために彼は「蛇遣い座の女神」に初めて反抗した。


 だが、リア充には爆発してほしいのだ。


 チョウガイもソンショウもリア充である。


 なので、ゴヨウは血涙を流しながら、自身の矛盾した思いと葛藤しつつ、未来から来た「悪意」と戦うのだ。


 過去の自分を許せない者達が、未来から波動を送ってきている。


 いわば、死後の後悔の念が現代を襲っているのだ。


「うおおおー!」


 ゴヨウの猟犬デッドショルダーカスタムがマシンガンを連射し、ロケットランチャーで敵を撃破していく。


 だが多勢に無勢、やがて武装が尽きたゴヨウの猟犬デッドショルダーカスタムは、敵アーマー騎兵の一斉射撃で大破した。


 すでに脱出していたゴヨウは「ウィンドセイバー」に乗り換え、大空へと飛翔した。


 蛇遣い座の女神からゴヨウに贈られた黄巾力士ロボット)ウィンドセイバー。


 神秘の力を秘めたウィンドセイバーは、音速を越える速さで急停止、急旋回が可能だ。


 飛行形態のウィンドセイバーは、二門のオーラキャノンで敵アーマー騎兵部隊をあっという間に蹴散らした。


 更に、人型に変形したウィンドセイバーを駆り、ゴヨウは敵に突き進む。


 闇の彼方から飛来するのは、昆虫に似たフォルムを持つ黒い黄巾力士だ。


 それは「百八の魔星」最大の難敵シブンキョウの駆る黄巾力士であった。


「俺は人を殺さない! 人の怨念を殺す!」


 ゴヨウのウィンドセイバーが、オーラソードで斬りつけた。


 シブンキョウの昆虫型黄巾力士が、オーラキャノンを発射した。


 虚無の彼方で両者は相討ちとなって、虚無戦線に果てた……






「答えは人が出す」


 宇宙最古の生命体である開拓者の一人、カーレルは言った。


「未来を望む者が多かったからこそ災禍は払われ、人は命を未来へつないでいけるのだ」


 カーレルの言葉をゴヨウは聞いていた。


 彼はシブンキョウと相討ちになったはずだったが、まだ存在しているとはどういうことなのか。


 生かされているということなのか?


「まだ終わりではないのだよ、ゴヨウ」


 カーレルの言葉に優しさが混じっていた。






 七夕の夜、チョウガイとゾフィーは会っていた。


 たまにしか会えぬ二人は、共に夜空の天の川を見上げていた。


「ゾフィーさん……」


「チョウガイ様……」


 満足げに微笑して見つめ合う二人。それは「不滅の愛」の体現だ。






「回らない寿司がいいんだけど」


 ツンツンした様子のギテルベウス。彼女も彼氏のソンショウと会っていた。


「お、おう! かかってこいや!」


 闘志みなぎるソンショウ。彼とギテルベウスはケンカばかりしているが、だからこそ「男と女」の永遠の形の体現だ。


「だいじょうぶよ、会長!」


「あたし達がついてるからね!」


 ソンショウの側には、さくらとこゆきがいた。


 さくらは混沌に属する怨念の一体だったが、ソンショウとギテルベウスのケンカを眺めるうちに、女の一念を取り戻した。


 こゆきはひ孫の結婚式を目前にして亡くなった女性だが、ソンショウの導きで一時地上に戻り、新たな旅立ちを見送ることができた。


 さくらもこゆきも、ソンショウには敬愛と恋愛の感情を抱いているのだ。


 そして、人界ではソンショウは大学の文化祭執行委員会会長、さくらは副会長、こゆきは書記だ。


 また、ギテルベウスはハロウィンの女妖魔だが、ソンショウと出会って変わった。


「お、おう、頼むぜ! お前らも食えよ!」


「会長も食べてくださいよ、私がお金出しますから」


「あたしもバイト代持ってきたよ、好きなもの食べて!」


「あ、あんた達は何なのよ……」


 化粧は濃いが美しいギテルベウスの額に、青筋が何本も浮かんできた。凄絶な美人だ。


 ソンショウ、ギテルベウス、さくら、こゆき――


 男一人と女三人が紡ぐ運命の綾は、奇縁と称して間違いない。






「うおおうー、守るんじゃなかったー!」


 ゴヨウは血涙を流して後悔しながら、虚無の闇で叫んだ。


 人類を守りたいわけではなかった。


 だが、チョウガイとソンショウの未来を守るために戦った。


 しかし、リア充は爆発してほしい……


 天のはたらき)を知る宿星に生まれた、百八の魔星の一人――


 天機星「知多星」ゴヨウの戦いはまだ続く。


 「永遠の形」を守るために。


 そして、ゴヨウがチョウガイやソンショウのために、命を投げ出して戦った「義」の思い――


 それもまた永遠の形だ。

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