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虚無戦線  作者: MIROKU
ラグナロク
96/99

宇宙最古の生命体!の巻!


   **


 はるかなる虚無戦線でゴヨウはカーレルと再会していた。


「久しぶりだな知多星ゴヨウ」


 カーレルはゴヨウを見下ろし、ニヤリと笑ったようだ。


 宇宙最古の生命体「開拓者」たるカーレル。


 そのカーレルが、まさか笑うとは。


「どうして地球へ?」


「仕事だからな」


 カーレルは言った。開拓者の彼にとって、地球の動静を見守るのは使命であり仕事なのだ。


 天も地もない闇の世界、この虚無の中に屹立するカーレルは身長十メートルを越えている。


 その姿は武装した兵士のようであり、機械戦士のようであり、またウル◯ラマンにも似ている。


「……地球はどうなんですか」


「人間でいえば八十代だ」


 カーレルは答えた。ドキリとする答えだ。


「……大地母神様と海母神様は?」


「人間でいえばアラフォーだ」


 カーレルがまさかアラフォーという単語を使うとは。


 ゴヨウの精神に触れ、感化されているようだ。


「なぜカオスとメロリン…… いや、ハロウィンの恐怖の概念までもが女の顔を得たのですか」


「宇宙の意思だ」


 そうか、そうだったのか……とゴヨウは納得した。


「正義は?」


 ゴヨウが言うのは完璧商人始祖パーフェクトオリジンの正義マンのことだ。


 なんという偶然か、筋肉男内で彼が封印されたのを機に、世界から正義の概念が失われつつあった。


「狂気に封印されている」


 カーレルの厳かな回答。正にその通りだ。世界を覆うのは狂気に似た利己主義だ。


 だが、それは本来の命の理ではない。


 多くの人間は、目が覚めた瞬間に罪悪感と絶望に自らの手足を食いちぎりかねない。


「大いなる波が来る、それに備えることだ」


 カーレルの言う波とは物理的なものとは限らない。


 人類の精神を洗い流す波動かもしれない。


 もしくは更なる深い闇へ導く波か。


「ゴヨウ、進化の時だ」


「進化……」


 ゴヨウは知っている。


 神や魔と呼ばれる存在は、人間の思いが宇宙の力と結びついて誕生した。


 そして仏陀ブッダーとは、人間の精神が進化した存在だ。


 宇宙の彼方で光の存在として、人類を見守る仏陀ブッダーたち。


 その教えが人類を導く。


 如来、菩薩、明王、天……


 いや今はそれどころではない。


「何のために生き、何のために死ぬのですか?」


「それはお前の魂が知っている」


 カーレルの言葉にゴヨウは呆気に取られた。


 そうだ、答えは決まっていた。


「女の子のためですかー!」


 ゴヨウは震えながら叫んだ。彼の脳裏に無数の女性が思い浮かんだ。


 戦死したコーエン、リッキー。


 精神生命体になったハードゥ。


 蛇遣い座の女神。


 瞑想の女神カオス。


 AI女王メロリン。


 ハロウィンの守護者レディ・ハロウィン。


 バレンタインの守護者バレンタイン・エビル。


 地球意思、大地母神、海母神……


「十一人…… つまり十一の口で吉と読む…… 十一面観音様のお導き!」


「まあ落ち着け」


 泡を食ったゴヨウをなだめるカーレル。


 宇宙最古の生命体が、まさかツッコミ役に回るとは。


「うわあああ……」


 ゴヨウは身震いした。


 それは転生すら叶わぬ、加護を受ける身ということではないのか。


 命が終わっても、また再び使命のために新たに産まれる……


 百八の魔星の一人、入雲龍ソンショウもまた幾度も生まれ変わったという。


 その宿星に従って……


「異世界転生とかなしですか!? かわいい女の子と魔法と冒険とか!」


「ないな」


 カーレルはゴヨウを見下ろし、微笑した。楽しくて仕方ないらしい。

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